政府は財界の要求・財界の利益を至上の命題にして、本来任意であるマイナカードの取得を強制するために従来の健康保険証を24年秋に廃止する方針に固執しています。そうしないとマイナカードへの切り替えが進まなくなり財界の要求に応えられなくなるからです。
国民の権利・利益を奪ってまで財界の利益を優先させるというこの姿勢こそは、財界の横暴を抑制するという政治に要求される本来の使命を投げ捨てて、政治が財界の要求実現に加担する「新自由主義」を象徴するものです。
しんぶん赤旗が掲題の記事を出しました。保険証は廃止すべきではありません。
マイナンバー制度推進派の読売新聞さえも6月7日付で「身近な健康保険証を廃止し、トラブルが読出しているマイナンバーカードに一本化するのは無理があろう。廃止方針をいったん凍結し、国民の不安を払拭するのが筋だ」とする社説を掲げました。
「朝日」「毎日」「東京」など全国紙・地方紙も「読売」と同様の主張を展開しています。
岸田政権はこうした国民の声を「聞き流そう」としていますが、これだけマイナカードへの紐づけなどのデタラメさが明らかになっている中で許されないことです。
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保険証の「廃止」は国民の支持失った 「存続を」 これだけの理由
しんぶん赤旗 2023年7月19日
岸田政権は、従来の健康保険証をマイナンバーカードに置き換え、来年秋に廃止する方針に固執しています。カードを持たない人は新しくつくる「資格確認書」で代替できるとか、オンライン資格確認でトラブルが起きるかもしれないから念のため元の保険証も持参してほしいといった政府の説明に、「それなら今の保険証を残せばいいだけだ」という批判が巻き起こっています。 (森糸信)
全国紙・地方紙も
読売新聞は6月7日付で「保険証の廃止見直しは今からでも遅くない」と題した社説を掲載しました。「身近な健康保険証を廃止し、トラブルが読出しているマイナンバーカードに一本化するのは無理があろう。廃止方針をいったん凍結し、国民の不安を払拭するのが筋だ」。マイナンバー制度推進派の「読売」が「見直し」を要求したことは衝撃でした。
「朝日」「毎日」「東京」など全国紙・地方紙も「読売」と同様の主張を展開しています。
意見書可決相次ぐ
地方議会でも保険証の廃止に懸念を示す意見書の可決が相次いでいます。岩手県議会は7日、健康保険証廃止の中止等を求める意見書を可決。長野県松本市や埼玉県三芳町、同鳩山町も保険証の継続を求める意見書を可決しています。
共同通信社が14~16日に実施した世論調査でも、現在の保険証を来年秋に廃止しマイナンバーカードに一本化する政府方針の「延期」「撤回」を合わせて76・6%が求めており、前回から4・5ポイントも増えています。しかも、返納したり、更新しないなども含めて力ードの将来的な保有を否定する回答が60歳以上では38・8%に上ったことも衝撃を広げています。岸田内閣の支持率も下がり読けています。国民の支持を失った保険証廃止は中止すべきです。
利用登録は半分程度/膨大な手間の押しつけ/命関わるトラブルも
保険証存続これだけの理由
デジタル庁が公式サイトに公開している「政策データダッシュボード(ペータ版)」には、マイナンバーカードの申請件数・率、健康保険証としての利用登録数・率などがグラフとともに示されています。
ぱらまき不発
マイナンパーカードの累計申請件数は9日現在で約9747万件で、人口比では77・4%と大きめの文字やグラフで掲載されています。一方、交付枚数は約9350万枚とそれより約397万枚少ないことも付記。14日には総務省が、死亡・自主返納などによる廃止枚数を引いた「保有枚数」は、交付枚数より先月末時点で約490万枚も少ない約8816万枚(人口比では約70%)だったことを発表しており、これまでの説明がカードの普及状況を過大に見せていたことも明らかになっています。
しかも、肝心の健康保険証としての利用登録をした人は累計約6494万件で、人口比で半分程度にしかなりません。
政府は、伸び悩むマイナンバーカードの取得数を増やすために、カードの取得者に2万円分のマイナポイントをぱらまきました。このうち健康保険証としての利用登録では7500ポイントが付与されます。
さらに、政府は財界からの猛プッシュもあり、2022年10月に健康保険証の24年秋廃止を発表しました。
それでもなお、マイナンバーカードに保険証を利用登録している人は、人口の半分程度なのですから、マイナンバー制度に対する不信や保険証廃止に対する抵抗がいかに強いかがうかがえます。
「政策データダッシュボード」では毎日の申請・登録件数もカウントされていますが、ひも付けの誤りが判明してからは減少傾向が強まっています。
5年ごと更新
国会論戦では、現行の保険証の廃止後、マイナンバーカードを持っていない人は医療を受診できるのかとの質問が相次ぎました。
政府の答弁は「資格確認書を発行する」でした。現行の保険証は健康保険組合や自治体に申請しなくても、加入すれば保険者が発行し、本人に送ってくれます。更新時にも申請は必要ありません。
ところが、マイナンバーカードを持たない人は毎年、「資格確認書」を申請しなければなりません。しかも、健康保険証を登録したマイナンバーカードは5年ごとの更新となります。これは本人の手間になることはもちろんですが、保険組合などが毎年資格確認書」を申請に基づいて発行しなければならず、多大な業務を押し付けることになります。
こうした声を受けて、政府は申請しなくてもマイナンパーカードを持っていない人に「資格確認書」を送付することも検討すると言い出しました。
「それならいまの保険証を存続させれぱいいだけではないのか」。これが多くの国民の率直な気持ちです。
すでに不具合
政府はマイナンバーカードと保険証の一本化のメリットについて、▽顔認証で医療機関の窓口受け付けが自動化 ▽特定健診や薬の情報を、政府運営の「マイナポータル」で閲覧できる ▽将来的には電子カルテ情報を医療機関や患者がどこでも閲覧できるーなどを挙げています。
しかし、開業医らでつくる全国保険医団体連合会の調査では「顔認証付きカードリーダーまたはパソコンの不具合によりマイナ保険証の読み取りができなかった」「マイナ保険証の不具合(ICチップの破損等)で読み取りができなかった」などのトラブルが発生しています。
誤登録で別人の医療情報が表示されれば、国民の命と健康が脅かされることになります。
また、「資格確認書」の申請や、マイナンバーカードの更新を忘れたり、できなかったりしたら、保険料を払っていても一時的な「無保険」状態となり、保険医療が受けられなくなってしまう恐れもあります
こうしたトラブルを避けるには、現行の保険証を存続するのが一番簡単です。
新カード検討
政府は6月6日、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を改定しました。同計画では、券面の刷新などを合む次期マイナンバーカードの検討を開始し、26年中の実現を目指すとしています。
16年1月のマイナンバーカードの発行開始から10年を迎えるタイミングをめどに、券面の掲載事項の見直しなどデデザインを変更。現行カードの更新に合わせて新カードヘと切り替えを進めます。
河野氏は「仕様によっては新しい読み取り機が必要になる可能性」も指摘しており、膨大な申請、更新、ミス、点検作業の繰り返しで、果たして政府による「デジタル化」の恩恵を国民が感じることができるのか、甚だ疑問です。
そもそもマイナンバーカードの取得は国民の「申請」に基づくもので、任意です。マイナンバー法に明記した国民との約束をほごにしてカードの取得を強制し、簡単にいつでも医療を受けられる社会を壊すことなど、国民は誰も望んでいません。
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日本共産党は11日、「健康保険証の存続、マイナンパーカードヘの一本化の中止を〝マイナンバーカード暴走″を止めよう」と題するアピールを発表しました。マイナンバーをめぐるトラブルで国民の不安・不信は頂点に達しています。こうした国民の不安を解消するには、マイナンバーカードの運用をいったん停止し、完全・確実な総点検を行うことが必要です。命にかかわる健康保険証の廃止をやめ、存続すべきです。