2023年7月24日月曜日

日常茶飯事の検察違法利益誘導(植草一秀氏)/警察・検察はこうやって「事件を捏造」する(元木昌彦氏)

 植草一秀氏が「日常茶飯事の検察違法利益誘導」という記事を出しました。

 同氏は日本の警察・検察・裁判所制度の前近代性を示す三つ要因として、「警察・検察に不正で巨大な裁量権が与えられていること刑事訴訟手続きにおいて基本的人権が無視されていること裁判所が法の番人ではなく、政治権力の番人として行動していること」を挙げています。
 せめて裁判所が法の番人としての機能を有していれば、裁判の過程で辛うじて検察側の不正は是正されるわけですが、現実は「政権寄り」乃至は「判検一体」であって、そうはなっていません。三審制度は殆ど機能せず、再審制度に至っては再審が認められるのは「ラクダが針の目を通るよりも難しい」とされています。
 かくして日本はこの分野でも言語道断の不正が日常茶飯事で繰り広げられている暗黒国家であるとして、植草氏はうした根深い不正を一掃する最重要の方策として、「全面可視化」を提案しています
 それは文字通り「全面」であって、被疑者の取調べ模様だけではなく、被害者、目撃者、その他すべての関係者と警察・検察との接触場面のすべてを録画・録音し、開示することが必要だと述べ、この「完全可視化」がない限り、警察・検察の不正はなくならないとしています(現行のような部分的な可視化では逆効果です)。
 要点を簡潔にまとめた迫力のある記事は、「このまま日本を暗黒国家のまま放置するのか。抜本的対応が求められている」と結ばれています。

 併せて元木昌彦氏の短い記事「横浜の中小企業を襲った冤罪の悲劇…警察・検察はこうやって『事件を捏造』する」を紹介します。
 これは「大阪地検で発覚した証拠改ざん事件でもその名前が取りざたされた問題検事が東京地検でこの事件を担当し、公安部の捜査員と共に暴走した」ケースであり、不当なデッチアゲ事件によって尊い人命が失われたと指摘されても全く悪びれることのない検事が登場します。検察にこうした問題検事の暴走を止める機能がないこと自体、異常で許されないことです。
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日常茶飯事の検察違法利益誘導
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年7月22日
国家の健全性は警察・検察・裁判所の健全性で測られる。
この基準に従えば日本は世界最悪の不健全国家のひとつと言える。警察・検察・裁判所に対する信頼を置くことができない。暗黒国家そのもの。
警察・検察・裁判所制度の前近代性を示す要因が三つある。
第一は警察・検察に不正で巨大な裁量権が与えられていること。
第二は刑事訴訟手続きにおいて基本的人権が無視されていること。
第三に裁判所が政治権力の支配下に置かれ、裁判所が法の番人ではなく、政治権力の番人として行動していること。
警察・検察の不正で巨大な裁量権とは、
犯罪が存在するのに犯罪者を無罪放免にする裁量権  
犯罪が存在しないのに無実の市民を犯罪者に仕立て上げる裁量権 のこと。
政治権力に近い、天下り利権のある事業者に関連する犯罪は重大犯罪であっても無罪放免にする。政治権力に目障りな者に対しては犯罪をねつ造して無実の市民を犯罪者に仕立て上げる。言語道断の不正が日常茶飯事で繰り広げられている

刑事訴訟手続きにおいては基本的人権が無視されている。
刑事訴訟手続きにおいては、罪刑法定主義、無罪推定原則、法の下の平等、適法手続きなどの諸原則が遵守されなければならない
しかし、現実には、これらの諸原則が完全に無視されている

裁判所は本来、法と正義に基づいて判断を示すことが求められる。
しかし、現実には裁判官の人事権が内閣に握られていることから、大半の裁判官が法と正義に基づく判断を示さず、政治権力の顔色を窺う判断を示す
かくして、日本の警察・検察・裁判所制度は完全に前近代に取り残されている

政治的敵対者に対する冤罪創作が後を絶たない。
政治権力の側の人物、天下り利権を提供する事業者側の人物の犯罪はもみ消される、あるいは、軽微な犯罪にすり替えられる
政治権力に刃向かう人物に対しては冤罪をねつ造する、あるいは、軽微な犯罪が重大犯罪にすり替えられる
鉄道会社傘下のプロ野球チームの野球選手、歌舞伎界関係者の犯罪、内閣総理大臣の犯罪、経済団体幹部の犯罪はもみ消されたり、軽微な犯罪にすり替えられる。
経済団体幹部の悪事を暴こうとしてきた元参議院議員などは軽微な犯罪を重大犯罪にすり替えられ、不当に長期勾留されている。
内閣官房副長官の親族の重大犯罪はもみ消されようとしていると伝えられている。

広島県で実行された公職選挙法違反事件に関連して検察の違法な捜査が明るみに出された。
しかし、内容はまったく目新しいものではない。
検察が取り調べに際して、違法な利益誘導を行うことは日常茶飯事。
ジャニーズ事務所の重大犯罪と同じ程度に誰もが知る公然の秘密。
警察や検察はさまざまな違法な利益誘導、脅迫を行って虚偽の供述を取り出す。
かつては拷問によって虚偽の自白を獲得したが、現在は利益誘導と脅迫による虚偽の自白取得が主流である。

法廷における証言も人為的に創作される。
検察は公判廷に招致する証人に対して、事前に繰り返しリハーサルを行う。
このリハーサルによって細部まで検察が証言内容を創作する。
証人は法廷で暗記した台本通りに証言しているだけだ。

このような不正を一掃するにはどうしたらよいのか。
最重要の方策は「全面可視化」である。すべての場面を可視化すること
被疑者の取調べ模様だけではない。被害者、目撃者、その他すべての関係者と警察・検察との接触場面のすべてを録画・録音し、開示すること。
この「完全可視化」がない限り、警察・検察の不正はなくならない。
警察・検察の不正=重大犯罪が何度も明るみに出ているにもかかわらず、警察・検察の重大犯罪を一掃するための方策が何一つ決まらない。
このまま日本を暗黒国家のまま放置するのか。抜本的対応が求められている。

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週刊誌からみた「ニッポンの後退」
横浜の中小企業を襲った冤罪の悲劇…警察・検察はこうやって「事件を捏造」する
                     元木昌彦 日刊ゲンダイ 2023/07/23
 国家の暴力装置である警察と検察が事件を捏造して、無辜(むこ)の人たちを犯罪者に仕立て上げる。そんな例は枚挙にいとまがないが、大川原化工機の例は、この国がすでに“新しい戦前化”していることをわれわれに教えてくれる

 横浜市に本社を置く同社に、外為法違反容疑で警視庁公安部の捜査が入ったのは2020年3月。従業員90人程度の中小企業だが噴霧乾燥機分野のシェアは7割ある。容疑は「経産相の認可を得ないで生物兵器製造に転用可能な機材を輸出した」というもの。
 サンデー毎日(7月23.30日号)でジャーナリストの青木理が怒りのリポートをしている。おどろおどろしい容疑がかけられ、逮捕されたのは社長、役員、顧問職に就いていた3人。身に全く覚えのない3人は、容疑を懸命に否認した。だが取り調べは苛烈を極めた。任意の聴取に約40回も応じた女性社員は疲れ果て、地下鉄のホームに身を投げようとしたと週刊新潮(7月20日号)で語っている。

 罪を認めない限り保釈を認めない「人質司法」はここでも貫かれ、ようやく保釈が認められたのは逮捕から330日以上経ってからだった。だが、顧問職は勾留中に体調を崩し、悪性の胃がんだと診断された。弁護団は緊急保釈を請求したが、東京地検はそれを却下してしまった。ようやく緊急保釈が認められたが、手術どころか抗がん剤治療にさえ耐えられないほど衰弱していて3カ月後には息を引き取った。これは国家による「人殺し」である

 しかも驚くことに公安のでっち上げ調書をもとに起訴した東京地検が、初公判のわずか4日前に起訴を取り消し強引に事件の幕を下ろしてしまったのだ。
 青木は「これまで公安警察の捜査や数々の冤罪事件を取材してきた私自身、これほどのデタラメと刑事司法の悪弊が濃縮された事件をにわかに思い出すことができない」と書いている。社長と役員、顧問職の遺族の怒りはすさまじく、国と東京都を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした。その法廷で公安部の現職捜査員が驚愕の発言をしたのである。
 原告側の弁護士が「公安部が事件をでっちあげたのではないか」と聞くと、「まあ、捏造ですね」と認めたのである。さらに、「捜査幹部の欲でこうなった」。だが「捏造しても、その上の検察が責任を自覚していれば防げた」とも証言したのである。

 青木は今回、歯止めが利かなかったのは、「大阪地検で発覚した証拠改ざん事件(2010年=筆者注)でもその名前が取りざたされた問題検事が東京地検でこの事件を担当し、公安部と共に暴走してムチャな起訴に踏み切ったのが原因」だと見る。くだんの女性検事も証人として出廷した。
 原告側の弁護士が「誤った判断で長期勾留を強いられ、1人は命まで失った。謝罪するつもりはないか」と問うた。女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を間違っているとは思っていない。謝罪する気持ちなどない」と答えたのである。

 無罪がほぼ確定している袴田巌(87)の再審公判で、静岡地検は有罪を立証してみせるとバカなことを言い出した。袴田の姉・ひで子(90)は「検察だから、とんでもないことをすると思っていた」と痛烈批判。文春が連続追及している木原誠二官房副長官の“本妻”の「夫殺し疑惑」を再捜査していた刑事たちは、突然、上から捜査を事実上ストップされてしまった。暴力装置が暴走を始めている。 (文中敬称略)
          (「週刊現代」「フライデー」元編集長・元木昌彦)