2023年7月12日水曜日

なぜ、文春砲に沈黙なのか 改造でトンズラなんて国民は絶対許さない(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイに掲題の記事が載りました。
 週刊文春が4週に渡って木原誠二官房副長官の夫人に関する疑惑を報じたことに、木原氏は代理人を通じて司法記者クラブ宛てに「御通知(至急)」と題したA4判3枚の通知書を送付し、〈週刊文春の記事は、事実無根のもの〉〈捏造されたであろう風説〉〈マスコミ史上稀にみる深刻な人権侵害〉などと猛烈に批判し、記事の即刻削除を求めたことを明らかにしました。
 一方の週刊文春編集部は〈本件記事は、ご遺族、警視庁が事情聴取した重要参考人、捜査関係者などにじゅうぶん取材を尽くした上で、記事にしており、削除に応じることはできません〉とコメントし、一歩も引かない構えです。
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 「マスコミ史上稀にみる深刻な人権侵害」木原誠二官房副長官が「週刊文春」記事を巡り文藝春秋社を刑事告訴へ 文春オンライン 7月5日
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なぜ、文春砲に沈黙なのか 改造でトンズラなんて国民は絶対許さない
                      日刊ゲンダイ 2023年7月11日
                      (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
「影の総理」とも呼ばれる官邸の要が岸田政権のアキレス腱になりつつある。先週来、岸田首相を支える木原官房副長官の家族に関する超ド級の醜聞が駆けめぐっている。週刊文春(7月13日号)が報じた夫人をめぐる疑惑だ。〈岸田最側近木原副長官 衝撃音声「俺がいないと妻がすぐ連行される」〉と見出しを打った8ページにわたる記事で、夫人の衝撃的な過去を詳報している。
 文春によると、2006年に夫人の当時の夫が不審死した事案をめぐり、18年に警視庁捜査1課が未解決事件として再捜査。重要参考人として夫人を聴取し、14年に入籍した木原にも聞き取りを重ねたという。夫人の関係者から嫌疑を裏付ける供述を得られたものの、結果として捜査は縮小。立件には至らなかった。当時の捜査関係者10人以上に取材した文春は、尻すぼみになった背景として木原の存在を指摘。出世の階段を駆け上がる自民党議員を前に、捜査のハードルが上がったというのである。
 総裁派閥の宏池会に所属する木原は名門・武蔵中高から東大法学部に進み、旧大蔵省入り。次官候補と目されたエリートだ。05年の郵政選挙で代議士へと転身するも、政権交代につながった09年選挙で落選。3年間の浪人生活を経て12年に国政復帰後は、外務副大臣などを歴任。ポスト安倍をうかがう当時の岸田政調会長の下、政調副会長兼事務局長に就き、派閥領袖の右腕として政権構想を取りまとめるなど、存在感を高めた。そうして岸田政権が発足すると、官房副長官に就任。「異次元の少子化対策」を発案するなど、岸田最側近として権勢を振るっている。

下表は「くろねこの短語78日」「官房副長官の妻に殺人疑惑!?・・・」に掲載された写真より作成。事務局 (注 X子さんは木原氏の現夫人)

 木原夫妻と事件に関する年表

 2005年 9月    木原氏、衆院選で初当選
 2006年 4月10日 X子さんの夫(当時)安田種雄氏が不審死
 2008年 ころ  木原氏が銀座で働いていたX子さんと出会う
 2009年 8月    木原氏、衆院選で落選
 2012年 12月    木原氏、衆院選で2度目の当選を果たし政復帰
 2013年 9月    木原氏、外務大臣政務官に就任
 2014年 10月    X子さん木原氏の娘を出産 このころに結婚
 2015年 3月    木原氏の愛人A子さんが娘を出産
     10月    木原氏、外務大臣に就任
 2017年  8月    木原氏、自民党政調副会長兼事務局長に就任
 2018年 春ころ  警視庁が安田種雄氏不審死事件の再捜査を開始
      10月     X子さんの実家を警視庁が家宅捜索
      10月    木原氏、自民党情報調査局長に就任
 2021年 10月    岸田政権誕生木原氏内閣官房副長官に就任
      12月   「週刊新湯」が木原氏愛人問題を報じる


「政治家は言葉が命」はどこへ
 今回の文春砲に対する木原の反応は素早かった。文春発売前日の5日に電子版「文春オンライン」でその内容が報じられると、代理人を通じて司法記者クラブ宛てに「御通知(至急)」と題したA4判3枚の通知書を送付。〈週刊文春の記事は、事実無根のもの〉〈捏造されたであろう風説〉〈マスコミ史上稀にみる深刻な人権侵害〉などと猛烈に批判し、記事の即刻削除を求めた。木原自身も〈事実無根の内容であるばかりでなく、私と私の家族に対する想像を絶する著しい人権侵害〉などと心情を寄せ、〈文藝春秋社に対し刑事告訴を含め厳正に対応いたします〉と法的措置をチラつかせている。一方、3週連続で木原の愛人と隠し子に関する疑惑を報じ、4週目に超ド級の文春砲をぶっ放した編集部は〈本件記事は、ご遺族、警視庁が事情聴取した重要参考人、捜査関係者などにじゅうぶん取材を尽くした上で、記事にしており、削除に応じることはできません〉とコメント。一歩も引かない構えだ。

 永田町も騒然とする中、7日の官房長官会見で文春の記者から質問が上がった。
「週刊文春では木原官房副長官の夫人が5年前に殺人事件の重要参考人として警視庁から聴取されていたこと、木原氏の自宅が家宅捜索されていたことを報じました。これらの事実関係について官房長官は把握しているのでしょうか?」
 こう問われた松野官房長官は、小首をかしげて「ハイ?」。質問を繰り返されると、「詳細は存じ上げておりませんし、一般、民間人に関することでございますので、わたくしからここでお話しする立場にはございません」とすっとぼけた。
 にわかには信じられないような過去と疑惑を報じられながら、渦中の木原は何一つ説明しないまま。「言葉が命」の政治家であり、政府の要職に就く公人中の公人のくせに、あろうことか刑事告訴を“宣言”して、他のメディアを黙らせ、時間稼ぎをもくろんでいるように見える。8月にも内閣改造・党役員人事を実施するとの観測が浮上している。「改造まであと少し」などと考えているのか。

厄介者は一掃、ウヤムヤにしてリセット
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「自民党は木原問題を政権から切り離し、個人の問題に矮小化させて収拾を図りたいところでしょう。夏の通常人事で政府から外し、党執行部にでもスライドさせれば、身内も同然の番記者らが相手。厳しい質問にさらされることもない。人事で厄介者を一掃、問題ウヤムヤでリセットという手口は定番です」
 改造でだれもかれもトンズラなんて、国民は絶対に許さない。こんな内閣は前代未聞だ。

 安倍元首相の一周忌が過ぎても、銃撃事件の端緒となった統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との癒着の実態解明は全くなされていない。祖父の岸信介元首相と文鮮明教祖が手を握って以来、自民党は半世紀超も濃密な関係を続け、安倍は国政選挙で教団票を差配していたとされる。岸田は「本人が亡くなられた今、本人が何も釈明できないなど、十分な調査ができない」とゴマカしているが、それを言うなら、教団とズブズブの萩生田政調会長は存命中だ。党最大派閥の清和会(安倍派)の会長の座を狙って権謀術数をめぐらすほど元気ハツラツなのは、岸田が不問に付しているからだろう。
 政権浮揚のたくらみで岸田は昨年10月、教団に対して宗教法人法に基づく「報告徴収・質問権」の行使を永岡文科相に指示。解散命令を裁判所に請求するカウントダウンが始まったかのように見えたが、その実は棚ざらし。文化庁による質問権の行使は6回目に及んでいる
「韓鶴子総裁が韓国の集会で『岸田をここに呼びつけて教育を受けさせなさい』と暴言を吐いても、保守系の人々は一様にダンマリ。皮肉のひとつも返せないのですから、その関係性は推して知るべしです」(角谷浩一氏=前出)

歪んだ「権力行使」「政治主導」
 放送法の解釈ねじ曲げ問題をめぐり、総務省の行政文書を「捏造」と断言し、もしそうでなければ大臣も議員も辞職するとタンカを切った高市経済安保相にしたって、言いっぱなしのまま消えかねない
 官房長官時代から公文書管理法の制定に汗をかき、その道筋をつけた福田元首相が「文藝春秋」(8月号)の「公文書を守れ!」と題した座談会で、こう発言している。
〈まず最初に強調しておきたいのは、公文書は「国家の証し」そのものである、ということです。わが日本国がどのように成り立ち、国家の仕組みや制度がどんなふうに出来上がってきたのかを証明する大切な証拠なのです〉
〈ところが近年、公文書を政治家が「捏造」と決めつけるとか、官僚が改ざんするといった、とんでもない事件が立て続けに起きた。のちほど詳しくお話ししますが、これは「権力の行使」に大きな問題があると考えられます。さらには「政治主導」に起因する問題もあります〉

 痛烈な嫌みが高市、あるいは岸田に響くかどうか。政治評論家の野上忠興氏はこう言った。
「岸田首相は総理大臣になりたかっただけの人。いかに政権を維持していくかしか頭にない。しくじりは他人のせい、手柄は総取りタイプですから、足を引っ張る人間を切ることに躊躇はなくても、内閣支持率の下落傾向に歯止めがかからない政権の体力がどこまでもつか。NHKの世論調査(7~9日実施)でも支持率は6月と比べ5ポイント減の38%に落ち込み、41%に上昇した不支持率と逆転した。解散・総選挙を今秋打つなんて、とてもできない打てないでしょう

 マイナンバーカードで火ダルマになっている河野デジタル相もクビ濃厚だ。総点検の中間報告の取りまとめを受けてチョン、というシナリオ。権力の座にあぐらをかき、国民をトコトン愚弄する岸田の無責任政治を糾弾しなければ、同じことが延々繰り返される。