2023年7月22日土曜日

目も当てられぬNHK報道の劣化(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事の中で、放送法第4条で「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を放送事業者に義務付けているのに対して、NHKの報道は日本政府の意向に沿うのみで、法の趣旨に沿わない報道を繰り返していることを例示しました。

 日本のマスコミの「政権からの独立度合」の順位は世界で70位ほどの位置に定着しています。
 安倍政権下で報道機関に対する干渉が繰り返されたことで一気に順位を下げました。そうした中でNHKが公共放送の役割を果たしていないのは残念なことです。
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目も当てられぬNHK報道の劣化
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年7月20日
NHKは公共放送でなく国営放送。根本背景はNHKの人事と予算を政府が握っているため。
NHKの最高意思決定機関は経営委員会。経営委員会がNHK会長を任命し、理事会を構成する副会長、理事は経営委員会の同意により会長が任命する。
最高意思決定機関である経営委員会を構成する経営委員は内閣総理大臣が任命する。
要するに内閣総理大臣は経営委員会人事を通じて人事面でNHKを支配し得る。
NHKを支配するかどうかは内閣総理大臣の意思によって変わる。

放送法第三十一条は経営委員会委員について、
「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから」
選ぶとしているが、内閣総理大臣が内閣に服従する者を経営委員に選出すればNHKは内閣の支配下に置かれることになる
他方、NHK予算案は総務大臣を通じて国会に提出され、国会の承認を受ける。
NHKは人事も予算も政治権力の支配下に置かれる。したがって、NHKは政治権力に屈服する存在になる。
例外として、内閣総理大臣がNHKの自主性、独立性を尊重する場合だけ、NHKは自主性、独立性を確保できる。
安倍内閣以降、NHKは完全に政治権力の支配下に置かれている。

NHKの劣化が著しい。直近の報道から三つの事例を挙げる。
第一は、ロシアがウクライナの穀物輸出を抑止する行動を強めていることについてロシアを非難する報道。
第二は、中国が日本からの海産物輸入に対する規制を厳格化していることについて中国を非難する報道。
第三は、国内での重大な水害災害に対する報道をおろそかにしたこと。

ウクライナで戦乱が続いている。戦乱が発生した背景がある。
ロシアが領土的野心で一方的に軍事侵攻したものではない。
2014年にウクライナで暴力による政権転覆があり、樹立された非合法政府がロシア系住民居住地域に対して重大な人権侵害と武力攻撃を展開した。
これを契機にウクライナで内戦が勃発。その内戦を収束するためのミンスク合意が成立した
ミンスク合意は国連安保理で決議され、国際法の地位を獲得した。ところが、ミンスク合意をウクライナ政府が一方的に破棄。
その延長線上でロシアとウクライナによる軍事衝突が激化した。このような経緯がある。

ウクライナはクリミアを孤立させるためにウクライナ大橋を軍事攻撃した。戦争犯罪行為である。
これに対抗してロシアがウクライナの穀物輸出拠点のオデッサに対する軍事攻撃を強めた。
一方が正義で一方が悪魔ではない。双方にそれぞれの主張が存在する。
放送法第4条は
「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を放送事業者に義務付けている。
しかし、NHKはウクライナ=正義、ロシア=悪の図式でしか報道しない。これは放送法違反である

日本は広島サミットで中国に対して敵意に満ちた首脳宣言をまとめた。
首脳宣言では
「東シナ海や南シナ海の状況に深刻な懸念を表明し、力や威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する」と表現した。
日本は意図的に中国の反発を煽った。その日本政府がトリチウム等を除去できていない処理後の放射能汚染水を海洋放出しようとしている。
中国や韓国が警戒するのは当然のこと。輸入に際しての検査を厳格化するのは当然の対応。
中国側の立場を踏まえた報道が必要だ。

7月12日、九州北部が重大な水害に見舞われた。
通常であればNHKは特別放送体制を敷くところだったが通常放送を維持した。
岸田首相の外遊が予定されていたためと推察される。NHKが御用放送であることを全国民が踏まえておく必要がある。

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