2023年7月5日水曜日

学術会議法改悪に反対 署名5万人超提出 内閣府に

 岸田政権がまとめた日本学術会議法の改悪法案は、同会議の自律性・独立性を制度的(恒常的)に損なわせるもので、菅前首相が「会員候補6人の任命を拒否」した対応とは次元の異なるものでした。それに対して学術会議が全会一致で法案に反対を決議し、同時に多数の各学会が反対声明を出すなどして世論の反発が予想されたため政府は4月20日、提出見送りを決定しました
 しかしこれは決して一件落着などではありません。発起人の一人で日本大学教授の古川隆久氏政府は制度の『改悪を断念していないと訴え、法案提出断念後の約2カ月で5万2393人の賛同を得3日、「学術会議法改悪に反対」の署名を内閣府に提出しました。
 しんぶん赤旗の記事とネット署名システム:Change.orgの記事を紹介します。
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学術会議法改悪に反対 署名5万人超提出 内閣府に発起人
                        しんぶん赤旗 2023年7月4日
 政府が狙う日本学術会議法「改悪」に反対するオンライン署名が5万人に達し、発起人の一人で日本大学教授の古川隆久氏は3日、集まった署名と約500人分の賛同コメントを内閣府へ提出しました。
 古川氏らは、政府が日本学術会議法改悪案の通常国会への提出見送りを決めた4月20日に署名を開始。政府は制度「改悪」を断念していないと訴え、約2カ月で5万2393人の賛同を得ました。
 署名は、政府が準備していた法改悪案は同会議の独立性を保つのに必要な会員選考の自律性を侵害すると指摘。学問的立場から社会や政府に助言する学術会議が政府に服従すれば、社会にとって貴重な「セカンドオピニオン」を発する重要な仕組みが失われると述べ、同会議が「独立性を保ったまま税金によって運営」される意義を強調しています。

 署名提出後に会見した古川氏は、政府の法案提出見送り後、報道が少ない中で研究者を中心に5万人を超える署名が集まり、「政府の動きに危機感を抱いている人がかなりいることが浮き彫りになった」と述べました。
 政府は近く、民間法人化も含め学術会議の組織のあり方を検討する有識者懇談会を設置する方針。古川氏は、寄せられたコメントには民営化に賛成する意見はなかったと述べ、学術会議が民営化されれば、経済的利害や特定の業種の意向に左右され「組織の趣旨が違ってくる」と危惧しました。


この署名で変えたいこと
                古川 隆久 Change.org 2023年4月20日
 日本学術会議の自律性・独立性を損なう制度「改悪」は、日本という国に、そしてみなさんおひとりおひとりに長期的に悪い影響を与えつづけることになります。私たちの力で、この国の未来を大きく損なうことになりかねない日本学術会議法の改悪を防ぎませんか? 

 政府が国会に提出予定だった「日本学術会議法改正案」には「選考諮問委員会」の設置が盛り込まれています。これは日本学術会議の独立性を保つのに必要な会員選考の自律性を侵害するものにほかなりません()。
 本署名活動が始まった4月20日、政府は提出見送りを決定しました(署名活動開始の前に決っていたようです)。報道によれば、学術会議が全会一致で反対を決議し、世論の反発が予想されたことが原因です。学術会議の毅然とした対応に敬意を表します。
 しかし、政府は制度「改悪」を「断念」したわけではありません。
 1か月程度署名を集め、政府への提出をめざしたいと思います。ぜひお一人でも多くの
ご賛同をお願いします。

 この問題の背景には、学術会議が軍事研究に距離をおくことへの自民党内の反発があると報じられています。このことについて、「国の税金で賄われている組織が政府に反対するなんておかしい!」というご意見が出るかもしれません。
 では、税金で運営されている裁判所はどうでしょうか。判決の中で政府の政策や決定を批判したり、国会で成立した法律を違憲なので無効だという判決を出したりするのは「おかしい」ことでしょうか?
 そうではないですよね。政治や行政も生身の人間が運営しているのですから間違うことはあります(間違いだらけだと考える人もいます)。それに対し、独立した立場から判断できる仕組みがあることは、結局は皆の利益にかないます。ですから、税金でそうした仕組みが国の組織として運営されているのです。

 学術会議は、これまでの人類の叡智をふまえた学問的な立場から社会や政府に助言をする組織です。その学術会議までも政府に服従すれば、社会にとって貴重な(時には耳が痛い)「セカンドオピニオン」を発し得る重要な仕組みがなくなってしまいます。そうなれば、私たちは、混迷を深める社会の中で間違った選択肢をとってしまうことが増えるでしょう。つまり、日本学術会議を、裁判所のように自律性や独立性を保ったまま税金によって運営することは必要なのです。
 しかも、2020年秋に発生した、政府による6名の研究者の会員任命拒否問題はいまだ全く解決しておりません。もちろん、会員の学問分野も政治的立場も多様です。その中で共有されているのは、広大で豊かな学問の世界の中で自分たちの存在の小ささを自覚し、それゆえに国内外の研究者たちと切磋琢磨して議論を続け、新しい学問を次世代に手渡したいという信念です。

 研究者は、真実を追求する裁判官と同じく、時の政権の意向とは無関係に、独立した立場で真理を探求しなければ存在意義がありません。政権の意向に沿った学問だけが残れば、世界から孤立し、学問が停滞し、結果として人々が不利益を被る事例は、日本や世界の歴史で繰り返されてきたことです。学術研究の自律性・独立性をも脅かしかねない日本学術会議法の「改悪」を防ぐために、「改悪」反対の声をあげましょう!

詳しくは、大学の危機をのりこえ、明日を拓くフォーラム・学問と表現の自由を守る会「【声明】日本学術会議の独立性を否定する法改正の試みをただちに中止することを重ねて求める」(2023 年4月9日)をご覧ください。
http://univforum.sakura.ne.jp/wordpress/aboutus/statements/statement_scj20230107/ 

発起人
古川隆久(日本大学文理学部)
佐藤学(東京大学名誉教授)
鈴木淳(東京大学人文社会系研究科)
藤原辰史(京都大学人文科学研究所)

賛同人(五十音順)

後略