2013年12月31日火曜日

靖国参拝で安倍政権は世界から孤立 

 しんぶん赤旗が、安倍首相の靖国参拝についての米・ロ・欧州・国連・中・韓の各国政府・機関や海外紙の厳しい批判を紹介しています。
 
 また30日の中国人民網は「私利のために国益を犠牲にした安倍首相」と題した評論記事で、要旨次のように批判しました。
 
「参拝で最も損なわれたのは表面的には中日関係、韓日関係だが、本質的には日本自身の国益で中韓としては対日政策の確定が一段と容易になったので、安倍氏は在任中、近隣国との関係で長期的孤立に直面する可能性が高い。
 歴史認識に関して、ワシントンは日本の共感者ではなく、参拝の結果日米関係は弱まった。
 国内でも政治・社会・世論の分裂を招き、経済成長と国際競争力の減退を招くことになる。」  
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靖国参拝 安倍政権 世界から孤立 
「平和主義から日本を遠ざけ、アジアの新たな問題国に」
しんぶん赤旗 2013年12月30日
 安倍晋三首相が26日に行った靖国神社参拝については、かつて日本が侵略・植民地化した国だけではなく、欧米諸国、国際機関、各国メディアからも批判が噴出しています。「戦後の平和主義から日本を遠ざけた」「日本と国際社会との関係の政治的基礎にかかわる重大問題」といった厳しい主張が出ているのが特徴です。「自らの国際的立場を弱化させる」との指摘もあり、安倍政権の孤立ぶりが鮮明になっています。
 
米・ロ・欧州・国連 「失望・遺憾」いっせいに
 安倍首相の参拝から数時間後に、在日米国大使館は「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動をとったことに、米国政府は失望している」との声明を発表しました。
 歴代首相の靖国参拝で目立った対応がなかった米国政府としては、異例ともいえる表明。米本国の国務省報道官もその後、同趣旨の談話を出しました。
 
 ロシア外務省のルカシェビッチ報道局長は26日、「第2次世界大戦の結果に関する世界一般の理解と異なる流れを日本社会に押し付けようとする一部勢力の試みの強まりを背景とした今回の行動は、遺憾の意を呼び起こさざるをえない」と批判しました。
 
 国連の潘基文(パンギムン)事務総長の報道官は27日、声明を発表。日本の過去の侵略戦争を前提としながら、「潘氏は、この地域の国々(日中韓)が共有する歴史について共通の認識と理解に至るよう、一貫して主張してきた」とし、「他者の感情、とりわけ犠牲者の記憶に敏感である必要性」を潘氏が強調していることをあげました。
 
 EU(欧州連合)のアシュトン外交安全保障上級代表(外相)の報道官は26日に発表した声明で、「地域の緊張緩和や、日本の近隣諸国、とりわけ中国、韓国との関係改善に貢献しない」と指摘。「慎重な外交による紛争の処理や、緊張を高める行為の自粛」を要望しました。
 
中国・韓国 「正義に挑戦・時代錯誤」
 中国の楊潔箎(ようけつち)国務委員(副首相級、外交担当)は28日、安倍首相の靖国神社参拝を批判する談話を発表しました。
 このなかで、「日本の指導者が、国連憲章の趣旨と原則を守り、平和発展の道を進むかどうかという根本的な方向性の問題であり、日本と国際社会との関係の政治的基礎にかかわる重大な原則的問題だ」と指摘しました。
 中国政府は首相の参拝直後、26日に王毅外相が「国際正義への公然たる挑戦であり、人類の良知をみだりに踏みにじるもの」と批判していました。
 
 韓国政府は26日の政府声明で、首相に靖国参拝に対し、「誤った歴史認識をそのまま表したものであり、韓日関係はもちろん、北東アジアの安定と協力を根本から損なう時代錯誤の行為だ」と非難。「植民地支配と侵略戦争を美化し、戦犯を合祀(ごうし)している靖国神社に参拝したことに対して、わが政府は慨嘆と憤怒を禁じ得ない」と強い調子で表明しました。
 さらに日本が国際平和に寄与しようとするなら、「歴史を直視し、日本軍国主義の侵略と植民地支配の苦痛を経験した近隣国とその国民に対して、徹底した反省と謝罪を通じて信頼を構築していくべきだ」と求めました。
 
「大戦の犯罪清算されず」改憲に警戒感 海外メディア
 仏紙ルモンド26日付(電子版)は、靖国神社について「近代日本のさまざまなたたかいで亡くなった240万人の日本人をまつっているが、とりわけ第2次世界大戦後、戦犯として認定された日本の指導者たちもまつっている」と記述。安倍首相が「平和憲法の修正を願っている」として、警戒感を示しています。
 
 ドイツの週刊紙ツァイト26日付は、参拝に対する中国、韓国の激しい抗議の理由は、「この神社の祭殿には、1853年以降の日本のすべての戦争の戦没者だけでなく、(東京裁判によって)断罪された戦争犯罪者がまつられているからだ」と指摘。さらに日本の戦後史を次のように特徴付けています。
 「日本の戦後史は、重大なことをささいなことのようにみせることを特徴としている。ドイツでは第2次世界大戦の犯罪は清算されてきたが、日本では今日に至るまで多くが成されないままになっている」
 
 インドのヒンドゥスタン・タイムズ紙27日付は、「靖国・戦争神社」と題する解説記事を掲載。同神社が「多くの人にとって受け入れがたい歴史解釈を広めようとしている」「併設されている博物館は日本を第2次大戦の被害者として描いており、アジア各国を侵略した日本軍の残虐行為について十分な言及がない」と紹介しています。
 
 米紙ニューヨーク・タイムズ27日付は、安倍首相の靖国参拝を論評した記事で、「日本は安定した同盟国になるどころか、中国との論争が原因で、米国高官にとってアジアの新たな問題国になってしまった」と指摘。さらに秘密保護法の強行などをあげ、「安倍首相は、戦後の平和主義から日本を遠ざけるという大きな政治リスクを自ら進んで冒す意思を示してきた」と警戒感を表しています。
 ワシントン・ポスト紙同日付も、「自らの国際的立場と日本の安全保障を弱化させる恐れが強い挑発的行為」と厳しい調子で批判しています。
 
 
私利のために国益を犠牲にした安倍首相
 「人民網日本語版」2013年12月30日
 日本の安倍晋三首相は先日、靖国神社を「電撃参拝」した。中韓両政府は直ちに極めて強く反応し、米国など他の国々も次々に驚きと不満を表明した。これによって最も損なわれたのは表面的には中日関係、韓日関係だが、本質的には日本自身の国益である。(文:張雲・新潟大学准教授。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
 
 第1に、中韓両国を見てみる。中日関係、韓日関係は過去1年間非常に緊張し、歴史問題や安全保障政策における安倍内閣の言動に中韓は強く警戒してきた。3カ国の最高指導部が同時に交代するという黄金の時期にあって、日本と中韓の首脳会談はまだ行われていない。安倍氏は対話のドアはオープンだと主張し続けているが、参拝の伝えたメッセージは、日本が外交的配慮において中韓をほぼ完全に無視しているということだ。中韓としては、日本側が自国を無視するとの最後の一線をすでに示した以上、対日政策の確定がかえって一段と容易になった。安倍氏は在任中、近隣国との関係で長期的孤立に直面する可能性が高い。この孤立が日本経済に影響を与えるのは必至だ。
 
 第2に、米国を見てみる。日本の首相による靖国参拝の問題において、米国は通常と異なり明確な姿勢を初めて表明し、周辺国との関係の扱いに日本が失敗したことに失望をあらわにした。米国は、日本は戦略的対話を行えるパートナーではないと考えるにいたった。「米国は自らの力が相対的に下降する中、東アジアの安全保障において日本のプレゼンスの強化を求めており、日本が安全保障政策を『積極的』に調整すれば、歴史問題では沈黙を保つ」と安倍氏は考えているのかもしれない。だが日米同盟は安保同盟であって、歴史問題同盟ではない。歴史認識に関して、ワシントンは日本の共感者ではない。米国外交において理想主義という道義的一面は虚偽性を備えるが、基本的な道義原則を放棄することはない。その上、靖国参拝による北東アジア情勢の一層の緊張は、米国の安全保障上の利益そのものにとって現実的脅威となる。安倍氏は就任以来日米同盟の強化を仰々しく宣伝しているが、参拝の結果、反対に日米関係は弱まっている。
 
 第3に、日本国内を見てみる。靖国参拝によって、ようやく得られた国内政治の相対的な安定に分裂が生じ、貴重な政治資源・力が分散し、最重要の政治目標である景気回復の実現もぐらつく。安倍氏の首相再登板を可能にした国民の支持は、主に経済立て直しへの期待と、政治の安定への切望の2点によるものだ。自民党は衆参両院選挙で多数議席を獲得し、長年失われていた政治的安定を実現した。これは大胆な経済改革に貴重な政治資源を提供した。だが靖国問題において、日本国内の考え方には以前から重大な対立が存在する。「アベノミクス」実施の正念場において、靖国参拝は政治・社会・世論の分裂を招き、日本が発展のチャンス期を逃すことにもなる。経済成長と国際競争力が確保されなければ、日本の国益は語りようがない。
 
 安倍氏は靖国参拝について日本の長期的国益を考えてのものだと弁解するかもしれないが、周辺外交を見ても、日米同盟を見ても、さらには国内政治を見ても、この行動のもたらす客観的結果は、その主観的願望とは正反対のものだ。安倍氏は自分だけの利益のために日本の国益を犠牲にしたのである。(編集NA)