国連の人権高等弁務官が2日、ジュネーブで記者会見し、日本の特定秘密保護法案について「何が秘密を構成するのかなど、いくつかの懸念が十分明確になっていない」、「国内外で懸念があるなかで、成立を急ぐべきではない」と深刻な懸念を表明しました。
日本はこの5月にも、国連の人権委員会で警察・司法制度の非人道性が指摘され、それに激高した上田人権大使(最近更迭)が、「シャラップ」を連発して世界の顰蹙を買いました※。
※ 2013年6月20日「世界が驚く日本の人質司法の後進性 」
この委員会では、これまでもたびたび日本の警察・司法制度の後進性が指摘されましたが、日本は全く改めることをしませんでした。
そうしたことに加えて、いま政府が目の色を変えて成立を目指している特定秘密保護法案についても、人権等の観点からの大いに問題のある欠陥法案であると指摘されるなどは、国として実に恥ずかしいことです。
政権が常識と正常な感覚を持ち、法治国家を自認し、人権後進国と呼ばれるのを潔しとしないのであるならば、これを恥として改めるべきです。
3日の参院特別委員会での特定秘密保護法案に関する参考人質疑でも、参考人の三人全員が、廃案乃至は慎重審議を求めました。
その記事も併せて紹介します。
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国連人権高等弁務官「急ぐべきでない」 秘密保護法案
朝日新聞 2013年12月3日
【ジュネーブ=野島淳】国連の人権保護機関のトップ、ピレイ人権高等弁務官が2日、ジュネーブで記者会見し、安倍政権が進める特定秘密保護法案について「何が秘密を構成するのかなど、いくつかの懸念が十分明確になっていない」と指摘。「国内外で懸念があるなかで、成立を急ぐべきではない」と政府や国会に慎重な審議を促した。
ピレイ氏は同法案が「政府が不都合な情報を秘密として認定するものだ」としたうえで「日本国憲法や国際人権法で保障されている表現の自由や情報アクセス権への適切な保護措置」が必要だとの認識を示した。
同法案を巡っては、国連人権理事会が任命する人権に関する専門家も「秘密を特定する根拠が極めて広範囲であいまいだ」として深刻な懸念を示している。
参考人全員が懸念 秘密法案「弾圧利用も」 参院特別委
東京新聞 2013年12月3日
参院国家安全保障特別委員会は三日午前、国民の知る権利を侵害する恐れがある特定秘密保護法案に関する参考人質疑を行い、三人全員が、廃案か慎重審議を求めた。
日弁連で法案を検証する江藤洋一秘密保全法制対策本部長代行は、「知る権利と秘密の指定のバランスからみると、秘密の必要性が過剰に強調されている」と指摘。市民デモを「テロ」になぞらえた自民党の石破茂幹事長の発言を批判し、「法案が言論弾圧や、政治弾圧に利用される恐れがある」として廃案を求めた。
日比野敏陽(としあき)新聞労連中央執行委員長は、法案で処罰の対象となる「著しく不当な取材」の定義について、「極めてあいまいで、政府側が判断する」と強調。捜索や捜査を受けただけで記者や公務員を萎縮させる悪影響が生まれ、国民の「知る権利」も侵害されると訴え、廃案を求めた。
江藤、日比野の両氏は野党が推薦した。
一方、与党が推薦した瀬谷俊雄元全国地方銀行協会会長は、「行政が独走するのではないかとの懸念はあり得る。恣意(しい)的運用の弊害はあるかもしれない」との懸念を示した。法整備には理解を示したものの、「慎重審議は必要だ。顕在化する懸念があるなら、それを防ぐ手だてを講じるべきだ」と述べ、修正などの対応を求めた。