シンガポールで開かれていたTPPの閣僚会合は、最終日の10日、目標としていた年内妥結は実現できず、年明けに交渉を持ち越すことになりました。
NHKのアナウンサーは何か価値のある重要な決定が遅れてしまったかのような言い方をしていましたが、勿論そんなことはなく、まだ煮詰まってもいない交渉を年内に妥結させるということにもともと無理がありました。
今回体調を崩した甘利担当大臣の代役を勤めた内閣府の西村副大臣が、交渉でアメリカの農産品の関税ゼロ化の強引な要求に抵抗して譲らなかったのは、当然とはいえ非常に珍しいことに見えました。しかし農産品の関税を仮に守り切ったからといっても、別に妥結しても良いという問題ではありません。日本は短時間の間にあまりにも多くのものをアメリカに対して譲りました。それに参加する前に決定したことは無条件で従わされます。そのうえどういう内容で妥結したのかは数年間国民に公表されないという恐るべき協定です。
識者が交渉から脱退すべきであるとする所以です。
アメリカのフロマン通商代表は、「会合の結果に非常に満足している」として、年内妥結ができなかったことに落胆していないことも、やや意外でした。
これは考えてみれば年内妥結に何か特別の意味があったわけでないからで、要するに農産品の関税以外では最重要の対象国である日本から最大限の譲歩を引き出してきたので、全体としてアメリカは所期の目的達成に向けて進んでいるということです。
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TPP交渉 年内妥結は実現できず
NHK NEWS WEB 2013年12月10日
シンガポールで開かれていたTPP=環太平洋パートナーシップ協定の閣僚会合は、最終日の10日、交渉に進展はあったとしながらも、「残された課題に柔軟性を持って作業を続け、来月、再び閣僚会合を開く」とする共同声明を発表しました。
「関税撤廃」など複数の分野の交渉は、年明けに持ち越すことになり、目標としていた年内妥結は実現できませんでした。
今月7日から開かれていたTPP閣僚会合は、最終日の10日、日本時間の午後4時半ごろ4日間の会合の成果をまとめた共同声明を発表しました。
声明では「交渉妥結に向けて大きな進展があった。各国は交渉における未解決の課題について合意可能な着地点を確認した。関税撤廃を含め、残された課題について柔軟性を持って作業を続ける」としています。
そのうえで「参加各国にとって、TPPが目指す野心的で高いレベルの合意は、雇用の創出や経済成長を促す意味で重要だ。このため、今後、数週間にわたって交渉官による集中的な協議を行い、来月、再び閣僚会合を開く」としていて、交渉は年明けに持ち越されることになりました。
これは▽農産物などの関税撤廃や▽知的財産の保護▽国有企業と民間企業の競争条件などで各国の意見の隔たりが埋まらなかったためで、10月のTPP首脳会合で合意した年内妥結という目標は実現できませんでした。
各国の交渉官らは、1月の閣僚会合に向けて交渉を継続することにしていますが、関税撤廃など各国間の対立点は依然として多く、厳しい交渉が続くことになりそうです。
西村副大臣「勢い失うことなく」
内閣府の西村副大臣は、共同記者会見で、「合意に至るまでには、まだ作業が必要だが、課題が明確になり、多くの分野で進展があった。もう一度、来年1月に顔を合わせて協議しようということなので、この勢いを失うことなく、さらに議論を深めていく。参加12か国の意思や気持ちは統一しているし、熱意も共有しているので、引き続き、高いレベルの協定に向けて、日本としても全力で努力したい」と述べました。
米通商代表「目標に一歩近づく」
共同記者会見で、アメリカのフロマン通商代表は、「会合の結果に非常に満足している。自由化の水準の高い野心的で包括的な協定を達成するため照準を定めることができ、目標に向けてさらに一歩近づくことができた」と述べ、会合には成果があったと強調しました。
一方、マレーシアのジャヤシリ首席交渉官は、難航している「国有企業と民間企業の競争条件」を巡る議論について、「交渉はまだ続いている。私たちの抱く懸念に対処するため、適切な柔軟性が得られるよう引き続き協議を続ける」と述べ、今後も慎重に交渉に臨む考えを示しました。
また、オーストラリアのロブ貿易・投資相は、「交渉参加国が12か国にも上れば、交渉全体は困難さを増すものだ。4日間の協議では正しい姿勢が示された。まだ道半ばではあるが、この姿勢を維持することができれば、すばらしい協定となるだろう」と述べました。
さらに、ニュージーランドのグローサー貿易相も、「交渉の勢いは加速している」と述べるなど、各国は、交渉が来年にずれこんでも早期の妥結に向けて努力を続ける姿勢を強調しました。