2013年12月28日土曜日

靖国参拝に批判の嵐 +

 安倍首相のフェイスブックに、首相が靖国神社を参拝したことを称賛するメッセージが並んでいると、TVが報じていました。
 念願の在任中の参拝を果たした首相は、「日本会議」派系と思われる人たちからの賞賛のメッセージに、「ついにやった」とばかりに大いなる自己満足に浸ったのでしょうか。
 
 はやくそんな妙な感慨から脱して、現実を直視し、自分が一体何をやったのかを気づいて欲しいものです。
 
 参拝を先送りすれば、自分を支えてくれる保守層が失望するので、参拝に踏み切ったとも言われています。そんな短慮に発したものであるならば、なおさらその結果がどうなっているのかについて、よく思いをいたす必要があります。
 
 27日の社説は当然のように批判の嵐でした。
 
 「暴走」 「偏狭」 「国際不信」 「火に油」 「挑発」 「独りよがり」 「不毛」 「外交孤立」「無用なあつれき」 「明らかな誤り」 「愚かな選択」 「真の慰霊になったのか」・・・
 
 多くを語る必要もありません。
 以下に各紙の社説や一般記事のタイトルを紹介します。
 
【社説 論説関係】
首相靖国参拝 政権の暴走を危ぶむ 偏狭な歴史観、共有できず 琉球新報  
首相靖国参拝 また一つ封印を解いた            南日本新聞  
首相靖国参拝 国際社会に不信生む誤りだ       宮崎日日新聞  
首相靖国参拝 自信深める時こそ慎重に         熊本日日新聞  
首相靖国参拝 平和の歩みを軽んじるな         西日本新聞  
首相の靖国参拝 火に油を注いでどうする        高知新聞  
安倍政権1年で靖国参拝 強権的な姿勢に危機感が募る  愛媛新聞  
安倍首相靖国参拝 挑発して国益損なうのか       徳島新聞  
首相靖国参拝 遠のく中韓との関係改善          山陽新聞  
首相靖国参拝 国益より持論を優先させるとは      神戸新聞  
首相の靖国参拝 大局を見据えた自制心持て       京都新聞  
首相靖国参拝 きしむ外交、戦略を示すべき        福井新聞 
首相靖国参拝 外交的影響を考えたのか          岐阜新聞  
首相の靖国参拝 戦犯の罪深さ自覚せよ          神奈川新聞  
首相と靖国神社 独りよがりの不毛な参拝          朝日新聞  
首相靖国参拝 外交立て直しに全力を挙げよ       読売新聞  
安倍首相が靖国参拝 外交孤立招く誤った道       毎日新聞  
安倍首相靖国参拝 真の慰霊になったのか         東京新聞  
靖国参拝がもたらす無用なあつれき               日経新聞  
首相靖国参拝 国益忘れ信条優先とは            信濃毎日新聞  
首相靖国参拝 隣国との関係どう保つか            新潟日報  
首相靖国参拝 明らかな誤りだ                  茨城新聞 
首相の靖国参拝 憂慮すべき「信念」の突出だ         河北新報  
首相が靖国参拝 自ら 「扉」 を閉ざすのか          岩手日報 
安倍首相靖国参拝 孤立化懸念、外交戦略欠く       東奥日報  
安倍首相靖国参拝 国益を損なう愚かな選択        北海道新聞  
 
【一般記事】
首相靖国参拝:米 「失望」 に政府危機感 防衛相協議延期    毎日新聞 
首相、米の参拝自制要請を無視 靖国、国際社会で批判拡大   東京新聞 
歴史逆行の本性あらわ 安倍首相の靖国参拝 志位委員長が談話  赤旗 
靖国参拝 米が 「失望」 安倍首相に異例の声明          東京新聞 
抑制メッセージ無視 日米関係にも悪影響               東京新聞 
靖国参拝 「緊張緩和に貢献せず」=EU報道官            時事通信 
靖国参拝は遺憾=ロシア外務省                      時事通信 
参拝、制止退け強行 党幹部 「もう誰も止められない」        朝日新聞 
「誤った歴史観」 「右傾化」=靖国参拝、共産党機関紙が論評-中国 時事通信 
「戦争する国」へ 暴走に次ぐ暴走 靖国神社参拝 安倍首相 言い分成り立たず 赤旗 
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(社説) 安倍首相靖国参拝 国益を損なう愚かな選択
北海道新聞 2013年12月27日
 国際社会における日本の信頼を一気に失いかねない行動だ。
 安倍晋三首相がきのう、政権発足1年に合わせて靖国神社を参拝した。第1次内閣時代を通じ、首相在任中の参拝は初めてで、2006年の小泉純一郎首相以来7年ぶりだ。
 中国や韓国は強く反発しており、日本との一層の関係悪化は必至だ。
 首相は中韓との「対話のドアは常に開いている」と述べてきた。それなのに、あえて両国の反発を買う参拝に踏み切り自ら対話を遠ざけた。
 靖国神社は先の戦争を美化する歴史観を持ち、A級戦犯を合祀(ごうし)している。首相の参拝は憲法の政教分離原則にも抵触しかねず、国内でも強い批判がある。与党内や、同盟国である米国からも懸念が示されていた。
 こうした声に一切、耳を貸さず、内向きの理屈で参拝に踏み切ったことは極めて憂慮すべき事態だ。
    ◆独善的な姿勢を象徴
 首相は第1次内閣で参拝しなかったことを「痛恨の極みだ」としていたが、尖閣諸島問題や歴史認識をめぐり悪化した中国や韓国との関係を考慮し、参拝は見送ってきた。
 首相は参拝後、「日本のために尊い命を犠牲にされたご英霊に対し、尊崇の念を表し、手を合わせた」と述べた。この時期を選んだ理由については「政権1年の歩みを報告」するためと説明した。
 尊崇の念を表す場として靖国神社にこだわるのは、首相が神社の歴史観に共鳴しているからではないか。
 首相は「靖国参拝を政治、外交問題化すべきでない」と中韓両国をけん制してきた。関係悪化の責任を相手側に押しつけ、自らの意向を押し通すのはあまりに身勝手だ。
 安倍内閣の支持率は特定秘密保護法を乱暴な手法で制定したことで急落した。これ以上、参拝を先送りすれば自身の支えとなっている保守層の失望を招き、政権基盤に影響しかねないとの考えも働いたのだろう。
 仮に参拝を見送っても中韓両国との早期の関係改善は現状では難しいとみて、それなら参拝するのが得策と判断したのなら開き直りだ。
 独善的な考えで強引に政策を推し進めたこの1年の首相の政権運営を象徴するような行動だ。
    ◆関係悪化に追い打ち
 首相の参拝に対し、中国外務省は「人類の良識に対する挑戦に、強烈な憤慨を表明する」と批判し、韓国政府は「嘆かわしく怒りを禁じ得ない」とする声明を発表した。
 在日米大使館も声明で「近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに失望している」と異例の強い調子で非難した。首相が常々「日本外交の基軸」と強調する日米同盟をも揺るがしかねない。
 中韓両国と関係修復が進まないのは、中国の尖閣諸島周辺での挑発行為や、韓国・朴槿恵(パククネ)政権のかたくなな姿勢も影響しているのは確かだ。
 だが、原因の多くは首相の歴史認識や安全保障政策などにある。
 首相は村山談話や河野談話の見直しに言及し、8月の全国戦没者追悼式では1994年の村山富市首相以降、歴代首相が触れてきたアジア諸国への加害と反省に触れなかった。
 国家安全保障戦略では「積極的平和主義」の名の下、防衛力強化で中国に対抗する姿勢を鮮明にし、「愛国心」を養うことまで盛り込んだ。
 中韓との首脳会談は民主党政権下の昨年5月以降、途絶えている。
 北朝鮮の核・ミサイル開発や拉致問題など3国の連携が必要な課題を抱えながら、首脳会談がこれだけ長期間、開かれないのは異常事態だ。
 にもかかわらず、首相は外交関係の悪化に追い打ちをかけた。中韓との関係をどう立て直すつもりなのか。厳しく責任が問われる。
    ◆追悼のあり方検討を
 靖国神社は、先の戦争を「自存自衛の戦い」と肯定する歴史観を持つ。78年には東条英機元首相ら東京裁判のA級戦犯14人が合祀された。彼らが主導した戦争によって蹂躙(じゅうりん)された国が、首相の靖国参拝を批判するのは当然だ。
 首相は、吉田茂氏ら靖国神社を参拝した歴代首相の名前を挙げて自身の参拝を正当化しようとしたが、A級戦犯合祀前と後では参拝の意味合いは異なる。A級戦犯合祀問題を軽視している表れではないのか。
 政教分離上の問題も大きい。菅義偉官房長官は首相が私人の立場で参拝したと説明したが、公用車で神社に行き「内閣総理大臣」と記帳している。私的参拝とはみなしがたい。
 首相は参拝によって「中国や韓国の人々を傷つけるつもりは毛頭ない」と述べた。ならば新たな追悼のあり方の検討を急ぐ必要がある。
 その際、土台となるのは02年、当時の福田康夫官房長官の私的懇談会がまとめた、「国立」「無宗教」の施設が必要だとする提言だ。
 日本遺族会や自民党が反発し、提言はその後たなざらしになっている。首相も新追悼施設には否定的だが、それなら代案を示すべきだろう。
 戦没者追悼は本来、大切な行為だ。それが政治的、法的に問題になるような状況を放置してはならない。
 

「米の失望」首相の誤算 靖国参拝、国際社会で孤立感
朝日新聞 2013年12月28日
  安倍晋三首相の突然の靖国神社参拝から一夜明け、批判や懸念の声が世界に広がった。「失望」を表明した米国、「遺憾の念」を示したロシア、「慎重な外交」を求めた欧州連合(EU)――。日本への逆風は中国、韓国にとどまらず、国際社会で孤立感が深まっている。
 「日本包囲網」が瞬く間に形成された背景には、首相が靖国参拝をごく限られた側近だけと決めたことがある。「参拝を歓迎する人たちの旭日(きょくじつ)旗に囲まれるわけにはいかない」(政権幹部)と事前の情報漏れを防ぐことを優先させたため、外交当局を交えて関係国の反応を十分吟味しなかった。首相秘書官の一人は26日の参拝直前、「官邸で首相がモーニングを着ていたので驚いた」と明かした。
■日米防衛相の電話協議中止
 安倍政権が外交の柱に掲げた日米同盟の強化は参拝を境に暗雲が立ちこめた。27日、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古埋め立ての知事承認に絡み、小野寺五典防衛相と米国のヘーゲル国防長官が電話協議をする方向で調整が進んでいたが、都合が合わないとして急きょ中止になった。
 関係者は「靖国参拝が影響したかわからない」と歯切れが悪い。
 首相の参拝を機に対応に追われる外務、防衛両省内に無力感が広がっている。