沖縄県の仲井真知事は、アメリカ軍普天間基地の移設問題を巡って、政府が示した基地負担の軽減策は高く評価できるとして、名護市辺野古の埋め立て申請を承認する意向を固め、27日に正式に表明することにしています。
政府は法外な沖縄振興策を提示した模様で、知事は「今年は良い正月になりそうだ」と述べました。
一方地元では25日、小雨が降る中県民たち約1500人が沖縄県庁前に集まって、辺野古移設に反対する集会を開きました。
2010年11月の知事選では、前宜野湾市長の伊波洋一氏を相手にして同じように普天間飛行場の県外移設を公約に掲げて闘ったのですから、ここに来て急転直下容認するという展開に対しては、沖縄県民が反対するのは当然のことです。県民は、振興策が実施されるなら基地建設を認めるという考え方ではない筈ですから。
これについて植草一秀氏は「仲井真知事が辺野古埋立申請を一蹴できない理由」と題する極めて興味深いブログを公開しました。
同氏は、昨年12月の総選挙における徳洲会による選挙違反事案がこの時期に表面化した最大の狙いは、仲井真弘多氏に対する揺さぶりにあるという見方をしています。
いつもながらのことですが、事実に基づいた深い洞察をしていますので、是非ご一読ください。
植草氏の洞察の鋭さは、かつて「りそな銀行」株価操作問題でも発揮されました。
はじめに優良企業であった「りそな銀行」が倒産するという観測が流され、株価が紙くず同然に大暴落したときに外資や一部の人たちが大量に株を買いました。ところがその後に一転して政府が「りそな銀行を国民の税金で救済する」と宣言すると、今度は株価が大暴騰したため、当然のことながら外資をはじめ一部の人たちは濡れ手で粟の莫大な利益を手中にしました。
植草氏は、それを竹中金融相(当時)が外資と結託して引き起こしたものであるという見立てをしたために、官憲から冤罪事件をでっちあげられて社会的に抹殺されることになりました。
(「りそな銀行 植草」で検索すれば1万件以上がヒットします)
仲井間知事の記事と併せて、植草氏のブログを紹介します。
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沖縄県の仲井真知事 埋め立て申請を承認へ
NHK NEWS WEB 2013年12月26日
沖縄県の仲井真知事は、アメリカ軍普天間基地の移設問題を巡って、政府が示した基地負担の軽減策は高く評価できるとして、名護市辺野古の埋め立て申請を承認する意向を固め、27日に正式に表明することにしています。
沖縄県は、アメリカ軍普天間基地の移設問題を巡って、政府が日米合意に基づいて申請している名護市辺野古沿岸部の埋め立てについて、これまでに「法律に適合しないとは言えない」とする審査結果をまとめました。
こうしたなか、仲井真知事は25日、総理大臣官邸を訪れ、安倍総理大臣から基地負担の軽減策などに最大限取り組む政府の方針を伝えられました。
これについて仲井真知事は、「沖縄県が要望した基地負担の軽減が前に進み始め、いい正月になるなという実感がある」と述べるなど、普天間基地の危険性除去に向けた取り組みや、在日アメリカ軍施設の返還計画の前倒しなど、政府が示した基地負担の軽減策は高く評価できるとして、埋め立て申請を承認する意向を固めました。
仲井真知事の意向はすでに県幹部に伝えられており、26日、改めて県幹部を集めて承認する方針を確認するとともに、みずからのこれまでの発言との関係などを整理することにしています。
そして仲井真知事は、27日に埋め立て申請を承認することを正式に表明し、決断した理由などを県民に説明することにしています。
沖縄県内移設反対派が怒りの声 「県民の心踏みにじる」
東京新聞 2013年12月25日
「県民の心を踏みにじるものだ」。沖縄県の仲井真弘多知事が25日、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の県内移設へ向けた名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認する方向で最終調整に入ったことに対し、県内移設に反対する県民からは怒りの声が相次いだ。
沖縄県庁前では辺野古移設に反対する集会が開かれ、小雨が降る中、県民ら約1500人(主催者発表)が集結。県庁を「人間の鎖」で取り囲んだ参加者は「不承認!」「屈しない」と書かれたプラカードを頭上に掲げ「知事は埋め立てを認めるな」とシュプレヒコールを上げた。(共同)
仲井真知事が辺野古埋立申請を一蹴できない理由
植草一秀の『知られざる真実』 2013年12月25日
仲井真弘多沖縄県知事が2006年12月の知事選で辛勝した決め手になったのは、徳洲会の全面的な選挙支援であったと伝えられている。
徳田毅議員は自由連合に所属し、2006年の沖縄知事選に立候補した糸数慶子候補の支持陣営にいた。
その徳田毅氏が知事選直前に自由連合を離脱し、仲井真弘多候補支持に回った。
徳洲会は組織的な選挙を展開したと伝えられている。
徳洲会は沖縄にも病院を保有し、これらの病院が基軸となって大規模な選挙応援が繰り広げられた。
選挙は糸数候補優位に進展したが、最後の局面で徳洲会による選挙支援が功を奏して仲井真氏が当選したと伝えられている。
この時期に世間を賑わした大きなニュースがあった。
徳洲会病院による生体腎移植の問題である。
刑事事件に発展する様相を示していたが、沖縄知事選が終了するのと同時に、潮が引くようにこの問題も報じられなくなった。
徳洲会に大きな力が加えられ、そのなかで、徳田毅氏が自由連合を離脱して仲井真氏支持に回ったと見られる。
このときの首相が安倍晋三氏である。
徳田毅氏は沖縄知事選が終了すると、直ちに自民党に入党した。
この「工作」を担当したのは自民党幹事長の中川秀直氏であったと伝えられている。
徳洲会と日本医師会は犬猿の関係にある。
徳洲会の徳田毅氏の自民党入党を医師会は嫌ったが、安倍政権がこれを押し切った。
2012年12月総選挙における徳洲会による選挙違反事案がこの時期に表面化した最大の狙いは、仲井真弘多氏に対する揺さぶりにあるというのが私の見立てである。
その見解をかねてより提示してきた。
仲井真弘多氏は2010年11月の知事選で再選を果たしたが、2006年同様、徳洲会が選挙を全面支援したと見られる。
選挙違反事案が仲井真氏に飛び火してもおかしくはない状況にあると考えられる。
2006年の安倍政権にとって、沖縄県知事選は負けることのできない選挙であった。
そこで、かなり強引な方法で仲井真氏を勝たせる手を打ったのだと思われる。
2010年の知事選では前宜野湾市長の伊波洋一氏が立候補して、辺野古移設反対を主張した。
仲井真氏を再選させるために、基地反対票を分断する候補者が擁立されたが、米国は仲井真知事の再選を最優先事項に位置付けたと思われる。
1月19日には沖縄県名護市で市長選が実施される。
辺野古基地建設反対を主張する稲嶺進氏が再選されれば、辺野古基地建設はより困難になる。
米国の指令を受けている安倍政権は、何とか、名護市長選の前に仲井真弘多氏に辺野古埋め立て許可を出させようとしている。
仲井真弘多氏は普天間飛行場の県外移設を公約に掲げて知事選に臨んでいる。
辺野古埋め立て許可を出すことは県民への裏切り行為である。
しかも、1月19日には、名護市長選が行なわれる。
地方自治の基本は地域住民の意思の尊重である。
地域のことは地域が決める。
当然のことだ。
名護市長選があるのだから、埋め立て許可の判断は名護市長選の結果を踏まえるべきことは当然だ。
ところが、仲井真氏の挙動が不審である。
仲井真氏は12月25日に安倍首相と会談し、同日にも、辺野古埋め立て許可を出す可能性がある。
これを実行したら、仲井真氏はおしまいである。
晩節を汚すとはこのことを言う。
安倍政権は米国から尻を叩かれている。
名護市長選の前に、知事から埋め立て許可を引き出せと命令されているのであると思われる。
仲井真弘多氏は徳洲会問題で揺さぶられているのだろう。
しかし、だからと言って県民に対する裏切り行為が正当化されるわけではない。
最後のカギを握るのは、沖縄県民の行動である。
政府は法外な沖縄振興策を提示しているが、振興策が実施されるなら、基地建設を認めるというのが沖縄県民の考え方であるのか。
沖縄県民の判断が問われることになる。