ウォールストリートジャーナルが、9日付で首相夫人の安倍昭恵さんのインタビュー記事を載せました。
勿論、夫と妻は別人格なので政治に関係するものではなく、コーヒータイムにでも読むべき記事なのですが、昭恵さんが、原発の再稼動問題やTPP問題については正常な感覚をもっていることが感じられます。
以下に紹介します。
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総理の最大目標は憲法改正―首相夫人の安倍昭恵さんインタビュー
ウォールストリートジャーナル
ジャパンリアルタイム 2013年12月9日
安倍晋三首相と夫人(11月30日)首相の座に返り咲いてから約1年がたち、安倍晋三首相は勢いに乗っている。「アベノミクス」として知られる安倍氏の経済政策は投資家や各国の政策立案者から称賛された。外交にも積極的に乗り出し、有権者に好印象を与えた。安倍首相の支持率は高水準で推移している。日本では短命内閣が続いていたが、安倍氏が今後数年にわたって政権を担当する可能性はますます高くなっている。
この強力な指導者を理解するため、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はおそらく安倍氏を最もよく知っていると思われる人物に話を聞いた。夫人の昭恵さんだ。
東京の神田で自身が経営する居酒屋で、昭恵さんは就任から1年で首相を辞任した2007年以降の安倍氏の変化について話した。憲法改正が安倍氏の最大の目標と述べるなど、安倍氏の政治的な野心についても驚くほどはっきりと語った。
さらに、原子力発電、貿易自由化、職場での女性の役割など重要な政治テーマや、夫との意見の違いについて慎重に言葉を選びながらも原稿なしで率直に自らの考えを明らかにした。
■安倍首相の政治目標について
──今回の安倍首相は1期目(2006年から2007年)とどう違うか。
1期目のときは、世論のものすごい大きな後押しがあった。本人も大臣をやったこともなく、まだ若かった(安倍氏は当時52歳で、戦後最年少の首相だった)。自信がそんなにあったわけでもなかったような気がする。1年やって、残念ながら病気で辞めてしまった。いくつも実績もあったが、やり残したことがたくさんあった。できることならもう1回(首相を)やってやり残したことをやり遂げたいという思いがあったと思う。
だから今回は自分でつかみに行った。権力が欲しいとかそういうことではなく、この日本の国のためにやっぱり自分がこれをやらなきゃいけないんだ、そのためには総理大臣にならなきゃいけないんだ、という強い思いのなかで準備をしていたようだ。私は気づかないというか、知らないふりをしていた。自分がこれをやりたいと思って(首相に)なったというところで、次々と政策を作っているのだと思う。
──昭恵さんから見て、首相が政治家としてやりたいことは何だと思うか。
一番大きいのが憲法改正なんだと思う。それが国会議員になって最もやりたいことだったんだろうと思う。ほかにもいろいろある。教育(改革)も途中だった。やはりこの国をもう一回取り戻すと言っているので。よく主人が、「この国に生まれて本当によかったと、子どもたちがこの国に生まれことを誇りにできる、そんな国を作っていきたい」と言っているが、たぶんそんなところなのではないかなと思う。
──憲法改正は非常に大きな仕事だ。首相は実現できると思うか。
私はよく分からないが、そこに向かっているのだと思う。
──首相を歴史的な政策に駆り立てているものは何か?
政治家のもとで育ち、やはり子どものときからずっと祖父や父の姿を見て、国のために自分が何ができるのかということを常に考えてきた。これをやらなきゃいけないという強い思いがあると思う(首相の祖父は岸信介元首相、父は安倍晋太郎元外相)。
■原子力発電について
──昭恵さんは原発反対と表明した。今はどう考えているか。
(原発に)代わるものがあればやめたほうがいい。新しい技術はすぐそこまで来ていると思う。それまでの間、再稼動するかどうかについてはいろいろな意見があると思うが、再び事故が起こらないとも限らない。原発の安全性や福島の放射能レベルについてそれが危険かどうかは私には分からないが、危険だと思ってすごくおびえている人たちがいたり、住めないところがたくさん出てきたりしている。一回事故が起きるとダメージがものすごく大きい。いまだに風評被害に苦しんでいる人がたくさんいるし、子どもたちをどうしてくれるんだというお母さんたちが大勢いるなかで、やっぱり原発賛成というふうに私は言えない。
──原発はなくなったほうがいいと思うようになったきっかけは。
それはやはり、3月11日のあの事故だ。私は最初、そんなに大変なことが起こっていると認識していなかったが、どんどん、どんどんいろんなものが明るみに出てくると、やはり隠されていたものがあったんだなと思った。みんな不信感のかたまりになっていると思う。いろんなものを全部出してもらいたいと思っている。
■女性の労働力参加について
──首相の成長戦略の中で女性の社会参加が大きな柱になっている。今の日本の女性が置かれている状況をどう思うか。
私自身は若いころからバリバリ働くという意識があった人間ではない。結婚して会社を辞めることを当たり前のように思っていた。今の状況を見ていると、政治家や管理職という決定するところに女性がいないのが1つの大きな問題だと思う。もう少し会社の中でも有能な女性は起用してもらいたいと思うが、やはり男性と一緒に仕事をしようと思うと、結婚や出産をあきらめるなど無理をしなくては出世できないという現状もある。このあたりをこれからどのようにしていくのか。女性のリーダーシップと男性のリーダーシップは違うのではないかという話をこの間、ここで女性たちと話をした。男性社会においては、そもそも女性は働きにくいのかもしれない。私はむしろ、女性ならではのリーダーシップを推進して、男性をそこに巻き込んで行くほうがよいのかなという感じがする。
──女性がリーダーシップをとっていくために、政府は何ができるか。
主人は女性が輝ける社会を実現するためにいろいろな政策を作っている。1つには、女性が出産しても働き続けられるように保育所などを作るという取り組みがある。政府の中でも、(自民)党の中でも、女性に活躍してもらえるように人事の面で大臣や党の3役にも女性を登用しているのだと思う。ただ、やはり男性的な考え方のなかでの女性の活躍でもあり、女性の輝きでもあるのかなとも思えなくもない(笑)。
──昭恵さんは若いころはキャリア志向ではなかったということだが、その後ディスクジョッキー(DJ)をしたり、学生に戻って修士号を取ったり、この店を開いたりと大きな決断をしている。どのような気持ちでそのような決定をしたのか。
2007年の参議院選挙で自民党が大敗してから(安倍氏が首相を)辞めるまで、また辞めてからの数カ月は私たちの人生において挫折というか、とてもつらい時期だった。主人はそのあと、もう一回、国会議員としてやっていこうと決断をしたけれど、私はそこから私の人生を歩みたいという気持ちだった。でも、何をしようと決めていたわけでもなく、たまたまマラソンであったり、たまたま良い先生に出会ったりと、そんな感じだ。農業もそう。その時その時で自分が与えられた仕事であったりとか、何かそういうものが来る。不思議と。
■日本の農業、貿易自由化、居酒屋の経営について
──農業と経営する居酒屋UZUについて聞かせてください。
自分で田植えをして、草取りもして、稲刈りもする。そんなにベッタリとやるわけではないが。手で全部やって育てていると、普通に食べる米より愛着がわき、すごくおいしいかった。これはぜひみなさんに食べてもらいたいな、ということが店を始めた理由の一つだ。
それが私が店にだんだん出られなくなって、今は全然関われなくなった。それで料理研究家の人に料理は任せた。無農薬とか無添加とか非常にこだわっている私の先生でもあるが、そうしているうちに、それがいかに大事なのかということが分かってきた。
──田んぼに入って草を抜いたりした感想は。
大変ではあるが、実際に田んぼにはだしで入って、植えるというようなことをやると、お米の大切さも分かる。人間も自然の一部なんだなあと感じられて、何か天と地を結ぶ役割みたいな、そんな感じがしてくる
──現在、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉が行われており、日本の農業は今、大きな変わり目を迎えている。農業の市場開放についてはどのように考えているか。
TPPは政府の政策。私は本音を言えば反対だが、そういう方向で進むのであれば、それに対抗できるような農業を日本人が作っていかなくてはいけないと思う。今、いろいろな農家を見ていると、もっと農家は農家で頑張れるところはあると思う。
だから自発的にもっとみんながアイデアを出していかなければならない。(日本の)農業は強いと思う。良いものをたくさん作っている。米国みたいに農業が大型化して大きい会社が全部管理するようにはなってもらいたくない。ここ(店)でも本当にいいものを使うように、一生懸命頑張って作っている生産者の方にできるかぎり光が当たるように、という思いがある。工業製品みたいに農業をしないでもらいたいなと思う。
──TPPには反対ということだが、首相とそういうことを家で話すことはあるか。
たまに話はするが、結局私はそこまでよく分かっていないのでちょっと話すとだいたい論破されてしまう(笑)。
──UZUは10 月に開店1周年を迎えた。(昭恵さんが最近出版した「安倍昭恵の日本のおいしいものを届けたい!私がUZUを始めた理由」によると、)安倍首相とは1年で黒字にならなければやめるという約束だったそうだが、目標は達成できたか。
はい。取りあえず。ぎりぎりで。
記者:YUKA HAYASHI