2014年11月15日土曜日

議論の作法としても安倍首相はおかしい

 河北新報が「議論の作法/冷静さを欠いては深まらぬ」と題した14日の社説で、安倍首相の「捏造発言」などの「暴言」を取り上げ、「過激な言い回しで鬱憤を晴らすかのような振る舞いは、議論の場にそぐわない。熟議を遠ざけるばかりか、思慮を欠く発言は著しく品位を損ね、国民の嫌悪感を呼ぶ」と批判しました。
 また、「政治家のあぜんとする言動は首相に限らない」として、橋下大阪市長ヘイトスピーチのことで在特会会長と面談した際に、激しくののしり合った」ことで「後味の悪さだけが残った」ことにも触れました。
 これらはインターネット上で論じつくされている感じもありますが、改めて品格のあるタイトルをつけた社説の中で論じています。
 
 また天木直人氏も14日のブログで、週刊フライデーが「安倍首相が解散に踏み切った本当の理由」として、「一言でいえば、今度の解散・総選挙は、政治とカネを追及した枝野幹事長に激怒し、電撃的に解散・総選挙を実施して民主党を『殲滅』させようと、菅官房長官の言うことも聞かず、安倍首相の強い決断で行われたものであ」るとしていることを取り上げました。
 いくらなんでもそれほど低次元な動機で解散に踏み切るのだろうかを思ってしまいますが、安倍氏のこれまでの国会の場で繰り返し激高する異常さを見ていると「あるいはそうなのか?」と思わせるものもなくはありません。
 偶然ですが天木氏もまた橋下氏の言動を併せて論じています。
 
 二つの記事を紹介します。(後者は抜粋文です)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(社説)議論の作法/冷静さを欠いては深まらぬ
河北新報 2014年11月4日
 こんな物言いでは議論が深まるわけがないではないか。
 政治の場で最近、政治家による発言の荒れが目立っている。
 少し前の話になるが、安倍晋三首相の「捏造(ねつぞう)発言」には耳を疑った。政治資金収支報告書問題をめぐり「『撃ち方やめ』になれば良い」と発言したとする報道を否定。国会答弁で「私は言っていない。火のないところに火をおこすのは捏造だ」と、報道した朝日新聞社の名を挙げて批判した。
 首相が出席した昼食会で同席者が自身の「撃ち方やめ」発言に対し首相が同意したことを、首相が述べた形で記者団に紹介してしまったようだ。そうならそうと説明すればいい。「捏造」とは穏やかでない。
 元をたどれば、同席者の稚拙な対応が発端だ。首相に発言内容を確かめなかったにしても、各紙が一斉に報じており、名指しした朝日新聞の萎縮を狙うとともに、メディア全体へのけん制を狙ったようにさえ映る。
 確認を取ることもなく、安倍政権を倒すことが社是」と発言するに及んでは、もはや暴言と言わざるを得ない。
 
 「政治とカネ」をめぐって野党の集中砲火を浴びていたことからすれば、火に油を注ぎかねない報道だけに、いら立つ気持ちは分からないではない。
 ただ、過激な言い回しで鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような振る舞いは、議論の場にそぐわない。熟議を遠ざけるばかりか、思慮を欠く発言は著しく品位を損ね、国民の嫌悪感を呼ぶに違いない。
 同席者の説明のまずさをこそ指導すべきだろうに、「首相1強」の自民党内に首相の対応をいさめるふうもなかった。危うさを禁じ得ない。
 冷静さを失い、慎重さをかなぐり捨てる発言を繰り返すようでは、首相が求める建設的な政策論議も期待できまい。
 
 政治家のあぜんとする言動は首相に限らない。
 大阪市の橋下徹市長はヘイトスピーチ(憎悪表現)で「在日特権を許さない市民の会」(在特会)会長と面談した際に、「あんた」「うるせえ、おまえ」などと激しくののしり合った。後味の悪さだけが残った。
 市長の対応に批判が殺到したのは当然だ。とても市民を代表する政治家の受け答えとは思えず、威圧的な構えでは議論がかみ合うはずもなかった。
 政策をめぐって議論を重ね、練れた結論に導くのが民主政治の基本中の基本だ。最後は多数で決するにしても、時間をかけて理解を得る手続きが要る。
 利益の分配から負担・不利益の分かち合いへ、政治の差配は難しさを増すばかりだ。立場によって見解は大きく分かれ、調整の手間もかかる。
 相手を敬い、議論を深める姿勢がなければ、説得できるわけがない。けんか腰では論戦の質が高まりようもない。
 解散・総選挙ともなれば今後、攻撃的な発言があちこちで繰り返されることになろう。ここは議論の作法、発言の巧拙をじっくり問い直してみるべきだ。
 
 
いまごろマニフェストづくりを始める民主党のピント外れ
天木直人 2014年11月14日
   (前  略
 きょう発売の週刊フライデーに、「安倍首相が解散に踏み切った本当の理由」と題して興味深い記事が掲載されている。
 それは、一言でいえば、今度の解散・総選挙は、政治とカネを追及した枝野幹事長に激怒し、電撃的に解散・総選挙を実施して民主党を「殲滅」させようと、菅官房長官の言うことも聞かず、安倍首相の強い決断で行われたものであった、という記事だ。
   (中  略
 いまの安倍首相にはもはやいかなるマニフェストも通じない。
 何しろ、政策そっちのけで解散・総選挙を行うのだ。
 法案成立や予算編成などをそっちのけで解散する。
 メディアがそれを援護し、国民を煙に巻き、安倍自民党を勝たせて、安倍政治のさらなる強行を進める。
 それが今度の解散・総選挙の正体である。
 そんな安倍首相の暴挙を迎え撃つ唯一の対抗策は、安倍政治に断固として反対する政治勢力の結集しかない。
 国民が求めているのは、実現できそうもないマニフェストではない。
 ここまで生活を苦しめ、ここまで税金を私物化し、ここまで対米従属に堕し、あげくの果てに日本を国際的に孤立させた安倍首相に対する国民の怒りの受皿をつくることだ。
 海江田執行部の民主党にはまるでそれができない。
 
 おりから橋下大阪市長が今度の解散・総選挙で出馬することをにおわせた。
 自分が代表でいる限り辻元の民主党とは絶対に組めないと言い出した。
 安倍首相はほくそ笑んでいることだろう。
 こんな政治は行き着くところまで行けばいいのだ。
 国民が悲鳴を上げるような悲惨な政治状況になってはじめて、本物の政治が生まれてくる。
 安倍首相のような暴政を絶対に許さない国民政党が生まれてくる。
 それは既存の政治や選挙制度の枠組みの中では考えられないように思えるが、その考えられないことを起こさないといけない時が来ているのである(了)