2014年11月3日月曜日

年金積立金を株式に投資する身勝手さと危険性 ほか

 31日、年金積立金運用機構(年金積立金管理運用独立行政法人GPIFは積立資金の25%(最大34%)を株式投資に運用することを決定しました。これはGPIFの独自判断ではなく勿論安倍政権の要請に基くものです。安倍首相は1月のダボス会議で、年金積立金の投資先変更を成長戦略にすると言明して、国内株式への海外の参入(の大規模化)を求めていました。
 
 年金積立額は127兆円ですが、公務員の共済年金や独立行政法人の資産も連動するのでその額は200兆円になるということです。そうなれば最大で68兆円もの巨額を市場に投入することができることになり、これだけ巨額な資金を持つ投資機関が登場すれば株価は簡単に操作できます。
 これが消費税を10%に上げるために政府が仕組んだ株価操作の仕掛けです。
 
 しかし、いま株価は経済活動の指標などではなく、巨額な資金を持つ機関投資家たちが簡単に操作できる性質のものです。そもそも株価の上下は投資家=富裕層や投資機関にとっては重要ですが、一般庶民にとっては何の関係もないことで、景気の指標でもありません。
 株価が上がったから国民が豊かになったと考えるのは安倍首相くらいのもので、官邸に株価を電子表示させてそれを眺めては悦に入っているということですが、あまりにも単純で幼稚な感覚というべきです。
 
 物価が2%程度上昇すれば消費税を10%にアップできるとして、経済活動の活性化に起因する上昇ではなくて円安に起因する物価上昇を目指しているというのも、勿論倒錯した考えかたです。
 
 首相が国会の答弁において、聞かれたことには全く答えない、野党の幹事長を情報機関からの資料を用いて攻撃する、朝日新聞を捏造新聞だと言い立てる、閣僚の任命責任を問われると、そこに挙げられた一人ひとりの閣僚の弁護を始めて時間を浪費するなど、異常な対応が目立ち始めました。本当に異様な国会答弁の風景です。
 
 そうした政治的な狂いぶりに連動するかのようにして、アベノミクスの失敗を隠しながら無理やり増税をして、日本経済を破綻させようとしています。
 
 琉球新報が、年金積立金運用機構が巨額の資金を持って株式投資に参入すると、「いつまで経ってもそこから抜け出せるタイミングが来なくなる」とする説得力のある社説を載せました。
 天木直人氏も安倍首相の異様な言動を批判するブログを載せました。
 二つの記事を紹介します。 
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社説年金積立金 「山椒魚」にならないか
琉球新報 2014年11月2日  
 老後の生活を支える年金は国民にとって「虎の子」だ。掛け替えのない資産であり、成長戦略として「賭け」に投じるのは危険だ。
 厚生年金と国民年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人GPIF)は年金積立金の投資先を見直すと発表した。国債を大幅に減らして国内株式を大幅に増やすという。
 株にリスクはつきもので、運用に失敗すれば「虎の子」の年金が失われる。その場合、誰がどう責任を取るのか。GPIFのトップが引責辞任したり減給になったりしても、消えた年金が戻ってくるわけではない。つまり責任は取りようがないのだ。
 
 そもそも年金積立金は政府のものでなく国民のものだ。リスクをどの程度引き受けるのかは所有者たる国民が決めるのが筋だ。厚労省とGPIFは方針を撤回し、国会の内外で広く議論すべきだ。
 発端は安倍晋三首相のダボス会議での宣言だった。「GPIFの資産構成割合を見直し、成長への投資に貢献する」と述べたのだ。年金積立金の投資先変更を成長戦略にすると率直に表明した形だ。
 「年金積立金の政治利用だ」との批判が上がると、今度は「年金財政の安定が目的だ」と述べた。
 アベノミクスで作為的なインフレが生じているが、インフレだと長期金利が上昇し国債価格は下落するから、GPIFが持つ国債も目減りする。目減りは困るから国債を放出し、日銀が引き受ける。GPIFはその分、株を買う。「安定」とはそういう意味だ。
 すると、アベノミクスの失敗を年金積立金で取り繕うことになる。それならまさに政治利用だ。
 
 GPIFの運用額は127兆円だが、公務員の共済年金や独立行政法人の資産も連動する。すると200兆円だ。見直しにより株式の比率は最小6%から最大で34%となる。最大で68兆円もの巨額を市場に投入できるから、政府のさじ加減でいくらでも株価上昇を演出できる。政権の人気取りに利用されかねない。
 GPIFは日本の株式市場に比して巨大過ぎる。買う時はいいが、売るときには巨大過ぎて暴落の危険を伴う。すると売るに売れない状態になる。井伏鱒二の小説の山椒魚(さんしょううお)は川の中の穴にいたが、大きくなって穴の出口に頭がつかえ、抜け出せなくなる。GPIFも株式市場に深入りすると、抜け出せない「山椒魚」にならないか。
 
 
「捏造」で批判さるべきは安倍首相のほうだ! 
天木直人のブログ 2014年11月02日
 政治資金問題をめぐる民主党の追及に対し、安倍首相が枝野議員の政治資金報告疑惑がメディアに流されたのを見て、「これで撃ち方止めになればいい」などとほくそ笑んだという。それを10月30日の各紙が一斉に報じた。 それを読んだ時、私は苦笑を禁じ得なかった。
 
 私は小渕議員の政治とカネの問題に端を発した今回の安倍内閣の閣僚への追及では、民主党は安倍政権を追い込む事は出来ないと言い続けて来た。
 なぜならば、今の安倍首相にとって、国家権力を使って民主党議員の政治とカネの問題を暴き立てることは朝飯前であり、がたがた言えばそれを流せばいいからである。
 案の定、読売という安倍政権の公認広報誌を使って枝野議員のスキャンダルを流した。
 そしてこの安倍首相の「撃ち方やめ」発言だ。出来過ぎたシナリオだったから苦笑を禁じ得なかったのだ。
 ところが、驚いたことに安倍首相はその「撃ち方やめ」の発言について、それが報道された同じ日の10月30日に、「朝日のねつ造記事だ」と朝日批判を行った。
 しかも衆院予算委員会という最も公的な場で言ったのである。国会議事録に末永く残る発言としてである。
 各紙が一斉に書いたこの「撃ち方やめ」の首相発言を、朝日だけ名指しで安倍首相は批判したのである。
 これこそが捏造発言だ。それに対して朝日は10月31日の紙面で釈明した。捏造ではなく取材に基づいたものだ、と。朝日には安倍政権を倒すという社是はない、と。
 なんという腰抜けな釈明であることよ。いまこそ朝日は安倍首相と刺し違える覚悟で激怒して抗議しなければいけない。
 
 ここで朝日が「捏造は安倍首相のほうだ」と国民の目の前で叫ばないなら、朝日は永久に安倍首相に叩かれ続け、たとえ存続しても、安倍批判などとてもできないだろう、メディアとしての存在価値を失うことになるだろう。
 そう私は思っていた。しかも安倍首相は10月31日の衆院地方創生特別委員会でも言い続けていたらしい。
 「私は言っていない。火がないところに火をおこすのは捏造だ」と(11月1日毎日)
 こんな安倍首相の「捏造」暴言をこのまま許していいのか。
 
 そう思っていたら11月1日の朝日新聞が社説で書いた。安倍首相の「捏造」発言は看過できないと。各紙の報道は首相の側近議員の記者団への説明に基づいて書いたものだ。この側近議員が間違った説明を記者団に行ったのならそう訂正すべきだ。情報操作をしているのはどちらだと。
 私の思いが伝わったわけではないだろうが、さすがの朝日も最後のところで反撃精神を失わなかったということだ。よくぞ社説で安倍首相に戦いを挑んだものだ、徳俵に足をかけて踏ん張った、と感心した。
 そうしたらきょう11月2日の毎日新聞がその社説で朝日の援護射撃をした。撃ち方やめ発言は首相側近が報道陣に語った言葉だ。首相がそう言っていないというなら、報道各社に修正を求めれば済む話だと。
 慰安婦問題や吉田調書報道問題で揺れる朝日を「捏造」という言葉で批判すれば拍手してくれる人が多いと考えているのだろうか、と。
 そのとおりだ。毎日だけではない。これがメディアの当たり前の対応なのだ。
 同様の記事を流した読売などもまた、安倍首相の捏造発言を批判しなければならない。さもなくば安倍首相の捏造発言の共謀者となる。
 繰り返して言う。
 この安倍首相の朝日捏造暴言はこのまま看過するには重大過ぎる暴言である。調子に乗り過ぎた安倍首相の致命的発言となる。いやそうしなければいけない。
 それほど異常な安倍首相のメディアに対する干渉であり恫喝である。
 これで安倍首相の首を取ることが出来なければ、この国のメディアは死んでいるも同然だ(了)