久しぶりに人民日報の記事を紹介します。
28日の日本語版に、「国際秩序の変遷で悪化した米国の偏執性」と題する国際戦略研究所長の評論記事が掲載されました。タイトルからも分かるようにアメリカを手厳しく批判しています。
勿論中国政府の意見とイコールというわけではありませんが、国立機関の責任者が人民網に発表するのですから、実質的には「国家的」な見解と見ても良いと思われます。
11月に行われた中国でのAPEC首脳会議、それに引き続いたG20首脳会合の様子を見ても、米中の親密さは際立っていて安倍首相の存在などは見る影もありませんでした。
これまで安倍首相は同じ価値観を共有している日米関係が、価値観の異なる米中関係よりも必ず上位にあると常に説明して来ましたが、それはもはや空言というべきです。
重要な点は、少なくとも経済面をベースにそれだけ太い絆で結びついていながらも、ウクライナ危機を勃発させたのは米国の大きな戦略ミスであり、米国は戦略面の偏執性がひどくなっているとキチンと批判していることです。
そして、米国がロシアと中国の国際的な行動を批判し、中露の協力関係を非難の目で見ている上に、中国を排除するTPP交渉も強力に推し進めていると指摘しつつも、そうではあっても「力強い中米関係はアジア太平洋リバランス」の核心だと強調し、両国は「ウィンウィン」の関係のなかで新型の中米関係を積極的に推し進めることが出来るとしています。
批判をする一方で協調もする、あるいは協調する一方で批判もする、これが健全な関係というものです。
まことに大国であるにふさわしい堂々たる論文であって、米国への媚びへつらいを旨とする安倍氏などのとても思い及ばないものです。
いまではヨーロッパ諸国でさえも米国には何もいえないというのが実情のようなので、この論文はひときわ光彩を放っています。
いまや米国に意見を言うことが出来るのはロシアと中国だけです。
「中国は遠くなりにけり」です。
「中国は遠くなりにけり」です。
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国際秩序の変遷で悪化した米国の偏執性
人民網日本語版 2014年11月28日
時の経過に伴い世界も変わる。経済のグローバル化、世界の多極化、文化の多様化、国際関係の民主化という「5つの変化」による駆動、および現実世界とバーチャル世界の相互交錯、伝統的安全保障上の脅威と非伝統的安全保障上の脅威の相互交錯という「2つの交錯」による影響の下、21世紀の国際秩序は未曾有の深い変化を生じている。(文:陳須隆・中国国際問題研究院国際戦略研究所所長。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
新興エコノミーと発展途上国の集団的台頭が世界の経済・政治勢力図を塗り替え、「南の上昇と北の下落」が不可逆的大勢となっている。世界経済と戦略の重心はアジアにシフトし、国際戦略構造の「東の上昇と西の下落」が次第に明らかとなってきている。国際秩序空間は奥深く拡大し、国際的角逐は伝統的な陸海空から極地、深海、宇宙、サイバー空間にまで延伸し、発展および道義上の要衝、規則制定権をめぐる争奪が激化している。国際構造・秩序は変遷の過程、国際体制は再編の過程にあり、世界は変革の大きな潮の中にある。
世界唯一の超大国は複雑な心境を見せている。冷戦終結後、米国は「勝者」を自任し、EUとNATOの「2つの東方拡大」を推し進め、ロシアの苦境につけ込んで追い打ちをかけ、その地政学的戦略空間を圧迫し続け、ついにウクライナ危機を勃発させた。これは米国の犯した大きな戦略ミスと考えられている。
米国は中国の台頭に対しても複雑な心境でいる。米国は「アジア太平洋リバランス」を推し進めることで、地域秩序の主導権を強奪し、中国に対する防備、牽制を強化し、中国周辺を「樹静かならんと欲すれども風止まず」「海静かならんと欲すれども波逆巻く」の状況にしている。その一方で、「米国は繁栄する、平和で安定した中国の台頭を歓迎する」と公言し、力強い中米関係は「アジア太平洋リバランス」の核心だと強調し、中国との「協力・ウィンウィン」へのニーズを高めている。
近年、米国は戦略面の偏執性がひどくなっている。ウクライナ事件についてはロシアが西側の衰えに乗じて現行の国際秩序に挑戦したものだと位置づけると同時に、中国についても「国際秩序を蚕食している」と喧伝している。米側は、南中国海問題で国際法とアジア太平洋の安全保障秩序を破壊していると中国を非難し、東西両ラインで西側主導の国際秩序に連携して挑戦するものと中露協力を見ている。対抗的戦略角逐思考・行動を強化し、軍事力配備以外に、中国を排除するTPP交渉も強力に推し進めている。
中国は分不相応な願望は抱いていないが、公正・包容の心を持っている。中国は米国の「唯一の超大国」の地位に挑戦する意図を有しておらず、太平洋には中米両大国を受け入れる十分な広さがあると考え、中米の新型の大国関係を積極的に推し進め、アジア太平洋での両国の良好な相互作用を追求している。中国は人類運命共同体意識を提唱し、共通の安全保障と共同発展を核心とするアジアの夢、アジア太平洋の夢、世界の夢を打ち出し、中国と外国の夢の一致、発展の連結、コネクティビティ、助け合い、共同繁栄に努力している。中国は自らを現行の国際体制の参加者、受益者、建設者、改革者と位置づけ、開放・融合政策をとっている。例えば中国はWTOに加盟したうえ、その「優等生」となり、自らの改革、開放、発展を力強く促進し、世界の成長と開放的経済体制の重要な推進力ともなった。
国際秩序の変革を前に、中国は責任ある穏健な姿勢をとり、その公正で合理的な方向への発展を促すべく尽力している。
米国にとっては「単独覇権」心理の克服、「ゼロサム思考」の放棄こそが真の試練だ。公正、包容、協力、ウィンウィンの心をしっかりと持つこと以上に取るべき姿勢はない。(編集NA)