2014年11月20日木曜日

アベノミクスは失敗 ただし富裕層は増大

 浜矩子・同志社大教授は19日の毎日新聞で、景気悲惨な状況は、「市場をあおり株価を上げれば、皆が元気になると考え「円安が進めば日本経済は成長する」という時代錯誤の考えで政策を進めたアベノミクスの失敗によるものであるとして、今やるべきことは富者をますます富ませる株高・円安推進策ではなく、弱者救済の観点を前面に出した、貧困世帯や低所得者の生活支援だと述べています
 そして高額商品に「加重税率」をかけるなど金持ちから税金をとれるようにする努力も忘れてはならないとしています
 
 そうしない限りはいつまで経っても税の再分配の成果は上がりようがありません。
 安倍首相は国会で堂々と「トリクルダウン(=富者から社会へと富がしたたり落ちる)の理論」を口にしていますが、それでは投資資産100万ドル(約1・2億円)以上を有する富者が300万人以上もいるアメリカで、何故貧困化が進んでいるのでしょうか。富者はひたすら投資などの金儲けに明け暮れているだけだからです。
 
 18日、野村総合研究所が発表したところによると、日本での純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」および同5億円以上の「超富裕層」の世帯数は計
100・7万世帯となり、2000年以降のピークである2007年を10・4万世帯上回ったということです
 これらの富者はこの2年間で24・3%(ポイント)えたということで、これは純金融資産が5,000万円以上1億円未満「準富裕層」多くがこの間に資産を増やして富裕層になったためです。
 アベノミクスはGDPの落ち込み、悲惨な景気の落ち込みを生みましたが、富者の金融資産増加には顕著な効果があったというわけです。
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安倍首相:衆院解散表明 メッキはがれたアベノミクス
浜矩子 毎日新聞2014年11月19日
                                   (同志社大教授)
 景気は悲惨な状況だ。消費や設備投資といった内需が低調なうえ、円安効果は輸出額よりも輸入額を増やす方向に働いて外需も伸び悩んでいるからだ。消費税増税だけのせいだろうか。アベノミクスのメッキがはがれ、本当の実態が見えてきたのではないか。
 アベノミクスの問題点は、ご祝儀相場のように市場をあおり、株価を上げれば、皆が元気になると考えたこと、そして「円安が進めば日本経済は成長する」という時代錯誤の考えで政策を進めたことにある。
 これらの問題点の結果が今の景気だ。実体経済がここまで追い込まれる中、消費税を再増税してはつじつまが合わない。財政再建の観点からは禍根を残すが、増税の延期はアベノミクスの当然の帰結と言える。
 
 でも、アベノミクスの失敗と衆院解散・総選挙との間に脈絡はない。将棋で負けそうになったからといって、将棋盤をひっくり返すようなものだ。
 「野党の準備の整っていない今なら選挙に勝てる」との安倍晋三首相の思いしか見えない。本来であれば国会で説明をし、論戦を経て仕切り直しの方向を示すべきなのに、衆院選で目くらましをしようとしている。
 国会論戦という民主主義のプロセスを無視し、国民を愚弄(ぐろう)する行為だと思う。
 
 日本経済が抱えている一番大きな問題は、豊かさの中の貧困問題だろう。富が偏在しているから中低所得者の財布のひもが締まり、消費が盛り上がらない。
 今やるべきことは、富者をますます富ませる株高・円安推進策ではない。弱者救済の観点を前面に出した、貧困世帯や低所得者の生活支援だ。
 
 消費税増税も安易に先送りするだけでなく、その間、軽減税率導入といった有効な低所得者対策を考えてほしい。同時に、高額商品に「加重税率」をかけるなど、お金持ちから税金をとれるようにする努力も忘れてはならない。
 
 
アベノミクスで恩恵を受けたのは…"富裕層"と"超富裕層"が100万世帯超える
   御木本千春  [2014/11/18]
 野村総合研究所は18日、2013年の純金融資産保有額別世帯数と資産規模の推計結果を発表した。それによると、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」および同5億円以上の「超富裕層」の世帯数は計100・7万世帯となり、2000年以降のピークである2007年を10・4万世帯上回った
 
 
 内訳は、富裕層が95・3万世帯、超富裕層が5・4万世帯。前回調査の2011年と比べると、富裕層は25・4%増、超富裕層は8・0%増、合計では24・3%となった。増加した理由としては、2011年時点では純金融資産が5,000万円以上1億円未満だった「準富裕層」268・7万世帯のうち、多くがこの2年間に資産を増やして富裕層になったためと推測している。
 
 富裕層・超富裕層の保有する純金融資産総額は前回比28・2%増の241兆円。内訳は、富裕層が同16・7%増の168兆円、超富裕層が同65.9%増の73兆円となった。2007年の254兆円には届かなったものの、2009年(195兆円)、2011年(188兆円)の推計結果を大きく上回った。
 同調査は、富裕層・超富裕層の純金融資産総額に関しては、リーマン・ショックや東日本大震災の影響から、ほぼ回復したと判断。純金融資産額の増加が著しい理由については、保有する金融資産に占める株式や投信の比率が高いことが考えられるほか、富裕層・超富裕層には、上場企業等のオーナー経営者や上場・非上場企業の株主が多く含まれるため、アベノミクスによる株価上昇がもたらした金融資産増加の影響が大きかったと分析している。