日本遺族会福岡支部が27日、靖国神社に合祀されている戦時指導者、A級戦犯14名の分祀を求める決議を行ったことを、28日付のニューヨークタイムズが報じました。
ニューヨークタイムズはアメリカ人にも靖国問題が分かるように、靖国神社へのA級戦犯合祀問題について詳しく報じています。
4日付の「星の金貨プロジェクト」(ブログ)がその記事を翻訳して掲示しましたので紹介します。
靖国神社へのA級戦犯合祀問題は、一部の人たちが画策して靖国神社の宮司に、靖国神社に祀られている英霊簿の中に14人のA級戦犯を密かに書き加えさせた(1978年)ことが全ての発端でした。
その後、合祀が国際問題に発展すると、当時の自民党の野中広務幹事長がA級戦犯の分祀を神社側と掛け合いましたが、神社側は一度英霊簿に加えられた魂を再び取り除くことは不可能であるとしたうえ、政界が分祀を行うように圧力をかけることは政教分離に違反し不当であるとして、分祀には強硬に反対して現在に至っています。
記事は、日本で最も保守的な団体のひとつである日本遺族会が分祀を支持したのは初めてのことで、今後この動きが他の遺族会支部に波及するのか注目されるとしています。
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遺族会支部、靖国神社に戦争犯罪人14名の分祀を要請
星の金貨プロジェクト(翻訳掲示) 2014年11月4日
(元記事) マーティン・ファクラー 2014年10月28日
(ニューヨークタイムズ)
靖国神社に対し大きな影響力を持っている第二次世界大戦で戦死した日本兵の遺族の会が、現在これら一般将兵と合祀されている戦争犯罪人14名を分祀するよう神社側に申し入れました。
これは戦争犯罪人を合祀してしまったために、靖国神社が長年国際的な政争の場と化してきたことを憂うあまりの措置です。
日本遺族会福岡支部は10月27日月曜日、靖国神社に合祀されている東条英機首相を含む戦時指導者、A級戦犯14名の分祀を求める決議を行いました。
A級戦犯を靖国神社とは別の場所に埋葬すべきであるという考え方、いわゆる『分祀』の構想はこの何年かの間に広く検討されるようになりましたが、日本で最も保守的な利益団体(共通の利益を求め活動を行う団体)のひとつである日本遺族会がこうした考え方を支持したのは初めての事です。
靖国神社は日本の近代戦、20世紀前半の軍国主義日本の二度の大戦で犠牲になった約250万人の戦没者を祀っていますが、政府要人の参拝などによりこれまで何度も外交上の摩擦の原因となってきました。
昨年末に国家主義の推進を声高に唱える安倍首相が行った靖国神社への参拝は、中国、韓国の両国の怒りを買い、両国との外交関係は他の要因も絡んで史上最悪とも言える状況に陥っています。
安倍首相は常々第二死世界大戦中に戦地で命を落とした兵士たちを称える言葉を口にし、靖国神社への参拝や献納に熱心であり、それらはすべて自分自身の政治基盤である遺族会も含めた右派の人々の歓心を得るための行動であるとする見方が一般的です。
こうした理由からひとつの支部とはいえ、27日に遺族会の中から地域紛争のこれ以上の拡大を防ぐための柔軟な対応を求める提案が実際に行われたことは、人々を驚かせることになりました。
そして今、福岡支部に続く支部が現れるかどうかに注目が集まっています。
今回の決議は靖国神社にまつわる論争の根本的原因のひとつを取り除くためのものです。
靖国神社には日本に太平洋戦争(第二次世界大戦太平洋戦線)の開戦を強い、後の東京裁判において人道に対する罪によって有罪判決を受けたA級戦犯の魂が祀られています。
有罪判決を受けたうち、7名が絞首刑に処せられました。
罪状言い渡しの前に自殺した人間もおり、他は収監されました。
戦場においていかなる栄誉を与えられた軍人であっても、遺体そのものが靖国神社に埋葬されることはありません。
靖国神社は日本独自の宗教である神道の考え方に基づき、死者の魂を祀る施設です。
14人のA級戦犯は1978年、靖国神社の神職により祀られている英霊簿の中に密かに加えられました。
これは当時の日本国内の国家主義者の一部が、A級戦犯は戦勝国となった連合国側に一方的に犯罪者とされたのであり、本来ならば愛国者として扱われるべきだと主張したことを受けての行為でした。
1年後この合祀が明らかになると昭和天皇は靖国神社への親拝(天皇陛下の参拝)を取りやめ、合祀に対する不快感を示されました。
以降、現在の明仁天皇も靖国神社への親拝は行っていません。
14人のA級戦犯を合祀したことは、1980年代に入り日本の政治家要人が靖国神社を参拝する度、中国、韓国が抗議を繰りかえす主な原因を作りだしました。
両国はA級戦犯を合祀したことは、第二次世界大戦中に軍国主義が行った悪行に対する日本の反省が不足していることを象徴するものであると主張しています。
60年間戦後日本の与党として君臨した自由民主党を代表する立場の政治家が、A級戦犯の分祀を主張したことがありました。
分祀をすれば、政治家が靖国神社を参拝しても、第二次世界大戦中の日本の戦時指導者と開戦への道を進ませたその政策を支持しているのではないかという疑いをもたれることなく、戦没者に対し弔意を示すことが可能になります。
しかし現在は民間の宗教施設となっている靖国神社の神職は、一度英霊簿に加えられた魂を再び取り除くことは不可能であるとして、分祀にはこれまで徹底して反対してきました。
そして政界が分祀を行うように圧力をかけることは、日本国憲法が定める政教分離に違反するものであると批判してきました。
遺族会はこれまで靖国神社を支える団体の中でも、筆頭にある存在と見られてきました。
しかし遺族中には、家族を戦場に送り自殺的な死を強要した戦争指導者と大切な肉親が合祀されることに、一貫して反対してきた人々もいます。
福岡支部の決議文は、次のように訴えています。
14名の戦争犯罪人の分祀が実現した上で、
「日本国首相だけでなく、天皇陛下も皇后陛下も、そして一般国民すべてが、誰に遠慮することなく戦争の犠牲になった人々に哀悼の祈りを捧げることができるようになることを願っています。」
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欧米のメディアは安倍政権について『保守政権』(Conservative)という書き方をしますが、本当の保守とは何でしょうか?
従来の価値観を出来るだけ変ずに生きたい = したがって変革による環境の変化を望まない = 静かな暮らしを続けたい
というのが、『保守』の本態だと私は考えています。
その象徴が神道であり、日本の古式神道とは自然の中で清浄な場所を見つけ、そこを人々のよりどころとして掃き清め、静謐さを守るというものであったはずです。
例えば自分たちが大切に守ってきた神域を外国系の企業が買収し、そこにパチンコ店を建設するようなことになれば大いに憤ってよいと思いますが、神域でも何でもない無人島を巡って争いの種を大きくしたり、国内で暮らす他国籍の人々を脅迫したりするのは本来の保守とは全く別物だと思います。
この記事中の遺族会の方々も、大切な家族の霊を静かに祀りたいだけなのではないでしょうか?