日刊ゲンダイに「植田日銀4・28会見『異次元緩和の継続』強調は『出口なし』の裏返し… 金融政策の破たんは近い」とする記事が載りました。
それは28日に日銀は植田和男総裁就任後初の金融政策決定会合を開き、これまでの金融緩和について「多角的レビュー(検証)」をすると発表しましたが、植田氏が強調したのは、1年から1年半かけて検証はするが「異次元緩和の枠組みは維持する」ということで、検証=〝緩和の修正″よりも「緩和の継続」を何度も確認するという異様なものでした。
日銀は同日発表した展望リポートで、消費者物価のコア(天候に左右されやすい生鮮食品を除いて算出した消費者物価指数)は3カ月前の1・6%上昇予想から1・8%に、コアコア(天候や市況など外的要因に左右されやすい食料とエネルギーを除いて算出した消費者物価指数)は3カ月前の1・.8%の予想から一気に2・5%にとそれぞれ見通しを修正しました。
物価高は収まっていないどころかさらに急騰しているにもかかわらず、日銀としては何の対策も打てないということで、日刊ゲンダイは「ここにこそアベノミクスの大罪が隠されている」と述べています。
経済成長を伴う金融緩和であればデフレ脱却の目的を達し、2年ほどで異次元緩和は終了できた筈ですが、経済成長戦略がないなかで異次元金融緩和を10年も続け、その間株価の下支えに惜しみなく年金積立金や日銀の資金が投じられました。
インフレを抑制するためには利上げして金融を引き締めるしかないのですが、利上げをすれば中小企業はバタバタと倒産するし、住宅ローン地獄が始まるなど大不況が到来します。そのうえ国は国債利払い費急増で財政危機に陥るし、日銀も利息支払いが膨らみ財務が急速に悪化していずれ「債務超過」という最悪の事態になります。株価は暴落し、株価の下支えに大量に投じられた年金積立金は二束三文に変わります。
要するに植田日銀がアベノミクスを修正しようとしても、「動くに動けない状況」に陥っているということで、これは当初から指摘されていたことでした。
異次元緩和が終了することが明らかにされた瞬間に株価の大暴落が起きるので、何ごとも徐々にということしか対処法がない訳で、これが当初から「異次元から正次元に軟着陸する方法はない」と言われた所以です。
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植田日銀4.28会見「異次元緩和の継続」強調は「出口なし」の裏返し…金融政策の破たんは近い
日刊ゲンダイ 2023/05/04
4月28日、日銀は植田和男総裁就任後、初の金融政策決定会合を開き、これまでの金融緩和について「多角的レビュー(検証)」をすると発表した。ようやく、アベノミクスの本格的な検証が始まるようにも見えるが、この会見は異様だった。植田氏が強調したのは、検証はするが「異次元緩和の枠組みは維持する」ということだ。その検証も1年から1年半もかけて行い、緩和策の修正には直結しないという。つまり、検証=金融緩和の見直しと受け取られることを極度に恐れて、検証よりも緩和の継続を何度も確認するような会見だったのである。ここにこそ、アベノミクスの大罪が隠されている。
日銀は同日、発表した展望リポートで、消費者物価(CPI)の見通しを修正した。コアは3カ月前の1.6%上昇予想から1.8%に。コアコアは3カ月前の1.8%予想から一気に2.5%へ。日銀の見通しと相反して、物価高は全然、収まっていないどころか、さらに急騰していることがわかる。
さらに衝撃的だったのは、日銀レポートの前日に発表された東京都のCPIで、こちらはコアが3月は対前年比3.2%だったのに4月は3.5%へ。コアコアは3月の3.4%から3.8%に上昇した。物価は日銀が修正の基準としてきた2%をはるかに超えているのに、植田日銀は政策変更ができない。それどころか、市場にそう受け止められることを警戒し、会見では「緩和の継続」ばかりを強調する。この背景に一体、何があるのか。
映画「妖怪の孫」の原案となった古賀茂明氏の新著「分断と凋落の日本」(日刊現代発行/講談社発売)には衝撃的な解説が書かれている。
〈異次元緩和を徐々に止めようとした場合、ショックで金利が急騰すれば、住宅ローン地獄、ゾンビ企業破綻連鎖、さらには政府自身が国債利払い費急増で財政危機という事態も十分あり得る。世界はそんな日本を見限るから円安になるリスクがある。投資も入らず、不況なのに円安で物価が上がるスタグフレーションに陥るかもしれない。円安に歯止めがかからなければ、さらなる金利引き上げという悪循環になる可能性もある〉
つまり、「出口なし」ということだ。だから、緩和の継続を言い続けるしかない。しかし、そんなことを続けても、経済は回復せず、ヘタっていくだけだ。中央銀行の機能は失われ、財政規律も滅茶苦茶になっていく。
■日銀はどうにも動きようがない
「異次元緩和という禁じ手が百歩譲って許されるとすれば、3本目の矢である成長戦略までのつなぎだから、という理屈でしょうが、アベノミクスにはこれがなかった。2013年、安倍首相は“バイ・マイ・アベノミクス”というセールストークを海外で行い、株価を上げた。ところが、その年の夏、成長戦略の中身が発表されると株は下がった。それが象徴的でした。しかし、その後の安倍政権は成長戦略を本気で考えるのではなく、日銀やGPIFによる株の買い支えで株価を上げようとした。これも成長戦略がなかった裏返しです。映画『妖怪の孫』では政治ジャーナリストの野上忠興さんが驚くべき証言を行っています。安倍氏は成長戦略について“見せかけで十分だ”と語っていたというのです。しかも悪いことに、インフレを抑えるために金利を上げる局面では、日銀に預けた民間銀行の当座預金の金利も上がり、日銀の利息支払いが膨らんで日銀の財務が急速に悪化、数年で債務超過に陥る可能性すらあることが、最近、市場に強く意識されるようになりました。日銀はどうにも動きようがないのです」
もともと成長戦略はマヤカシだった。だからこそ、目くらましで官製相場による株買い支えが必要だったということだ。それによって、麻薬漬けになった日本経済。植田日銀がアベノミクスを修正しようとしても動くに動けない状況に陥ってしまった。この先、何が起きうるのか。国民は大型連休に浮かれているが、ハイパーインフレの恐怖が近づいている。