櫻井ジャーナルは掲題の記事の冒頭で、「NATO(北大西洋条約機構)は2024年中に連絡事務所を東京に設置する」ことを紹介しました。
NATOは中立的な組織などではなく、第二次世界大戦後に米国が、「ソ連」を敵国として組織した軍事同盟なので日本が安易に加担していいような対象ではありません。岸田首相はあたかもNATOと一体になりたいかのように振る舞っていますが、それは日本が世界第3位の軍時国家を目指そうとしていることと同様に異常なことです。
連絡事務所を東京に開設するという構想は、NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグが1月末に官邸を訪問した際に、岸田首相との間で最初に議論されたということです。
その後日本とNATOは11月12日から始まるNATO首脳会議までに、パートナーシッププログラム(ITPP)に署名することを目指して協力を強化することを確認しています。
要するに昨年6月末、岸田首相がNATO首脳会議にオブザーバー参加したときのはしゃぎぶりが、その後も継続し拡大しているということです。
⇒(22.7.3)岸田首相が軍拡公約 NATO会議 力対力 世界を分断(しんぶん赤旗)
米国迎合であれば何でもありの岸田首相とはいえロシアも中国も隣国です。一体何を考えているのでしょうか。
記事では、米国が中国・ロシアに対する包囲網を如何に構築しようとしているかに関わる近代史についての豊富な知識が述べられています。一部を割愛しましたので、全文は下記の原文でお読みください。
⇒ ウクライナでロシアに敗北したアメリカ/NATOは主戦場を東アジアへ移動
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ウクライナでロシアに敗北したアメリカ/NATOは主戦場を東アジアへ移動
櫻井ジャーナル 2023.05.09
NATO(北大西洋条約機構)は2024年中に連絡事務所を東京に設置する という。アメリカは2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ編成替えしているが、この海域における協力関係を強化することが目的のようだ。仮想敵国は中国とロシア、NATOの同盟国として想定されている国はアングロ・サクソン系で米英の支配下にあるオーストラリアとニュージーランド、そして日本と韓国だ。
イギリスやアメリカは19世紀から東アジアを侵略し、略奪しようと目論んできた。当時、経済力で中国(清)に太刀打ちできないイギリスはインドで生産したアヘンを売りつけようとする。麻薬取引への批判を回避するため、イギリス王室は「民間企業」の東インド会社が中国へ売るという形式を作った。
麻薬の流入を嫌った中国は取り締まりを強化、それに対抗してイギリスは1839年から42年にかけての「アヘン戦争」、そして1856年から60年にかけての「第2次アヘン戦争(アロー戦争)」を仕掛けた。この戦争でイギリスが手に入れた香港はその後、秘密工作や麻薬取引の拠点になる。
イギリスがアヘンを生産させていたインドでは1857年から58年にかけてインド人傭兵(いわゆるセポイ)が反乱を起こした。「インド大反乱」と呼ばれているが、その責任を問われて東インド会社は1858年に解散した。
2度のアヘン戦争でイギリスは勝利、同国とアメリカの貿易商は大儲けしたものの、征服はできなかった。戦力が足りなかったからだ。そこで目をつけたのが侵略拠点としての日本列島であり、傭兵としての日本人だ。イギリスは長州と薩摩を利用して徳川体制を倒す。これが明治維新であり、天皇制官僚体制の始まりだ。
(中 略)
イギリスは19世紀に植民地を拡大させていた。1866年にアフリカの南部地域でダイヤモンドが発見され、86年にはトランスバール(南アフリカ北東部)で大量の金が発見されると、セシル・ローズは南アフリカへ移住、ダイヤモンド取引で財をなし、デ・ビアスを創設した。ローズに融資していた金融機関はNMロスチャイルド&サンである。
(中 略)
一連の動きで重要な役割を果たしたローズは優生学を信奉していた。彼は1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に書いた『信仰告白』の中でアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877)
そのアングロ・サクソンはアメリカやオーストラリアで先住民を虐殺しているが、東アジアでは中国に照準を定め、最終的にはスラブ民族が支配するロシアを征服しようと計画する。ウクライナへの工作もその一環だ。
オーストラリアは2021年9月、イギリスやアメリカとAUKUSなる軍事同盟を創設したと発表、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っている。
その潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。
アングロ・サクソン系のアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、その戦闘奴隷とみなされている日本という構図は19世紀と基本的に同じだ。当時、朝鮮は侵略の手先になることを拒否、日本に併合された。韓国の現政権は侵略の手先になる道を進もうとしているが、国内の反発は小さくないだろう。