17年の「Me Too」運動の発端となった、米映画界の大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン被告(70)の女性2人に対する性的暴行事件では、20年に禁錮23年の刑が言い渡されて服役中です。さらに今年2月23日、女優でモデルの女性が13年に性的暴行を受けた3件でもワインスタインに禁固16年の刑が言い渡されたので、2つの陪審員裁判で合計で禁固40年という事実上の終身刑が下されました。
米国における冤罪の歴史などを読むと米国の司法が優れているなどとは決して言えませんが、「Me Too」運動などから社会的正義感が健在であることは読み取れます。
日本ではどうでしょうか。最高裁は04年、週刊文春がジャニー・喜多川の性加害について1999年に14週にわたって報じたことを当人が名誉棄損であると告訴したことに対して却下する判決を出しました。
それは加罰の告訴ではなかったので「名誉棄損に当たるかどうか」を判断しただけで、喜多川に刑罰を科すというものではありませんでした。事実、それ以降も喜多川による少年たちへの性加害は続いていたことを多数の元ジャニーズ・ジュニアたちが証言しています。そんな中で喜多川は19年に87歳の生涯を閉じました。
約20年も日本のメディアが放置してきた「ジャニーズ被害」の問題がここにきて突然浮上してきました。この件について田中龍作氏は、
「最高裁判決から約20年間、マスコミは問題を放置し続けた。その間、被害者は続出した。
一石を投じたのはBBCが今年3月に報道したドキュメンタリー番組だった。ジャニーズ事務所に所属していた少年たちが、顔出し実名で喜多川氏による性的加害を赤裸に語ったのである。それでも日本の新聞テレビは沈黙を続けた。
だが、4月にカウアン・オカモト氏が日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見し、被害の実態を明らかにした。ネットで拡散され問題は社会に広く共有されるようになった。常識レベルにまで高まったのである」と述べています。
田中龍作氏の、メディアの無責任さを指弾する記事「ジャニーズ被害者 『海外メディアの報道がなかったら何も変わらなかった』を紹介します。
併せてしんぶん赤旗の記事「今日の潮流」を紹介します。
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ジャニーズ被害者 「海外メディアの報道がなかったら何も変わらなかった」
田中龍作ジャーナル 2023年5月16日
元ジャニーズ事務所所属タレントのカウアン・オカモト氏と橋田康氏が、きょう(17日)、立憲民主党のヒアリングに応じた。
カウアン氏は2012年2月、中学3年生の時、ジャニーズ事務所に入所、2016年に辞めるまで15~20回、喜多川氏から性的被害を受けた。
橋田康氏は1998年に13歳の頃、喜多川氏からの性的被害を受けた。回数は2回だったが「大きな大きな出来事となった」と重い口調で明かした。
喜多川氏をめぐっては、2004年に最高裁が、週刊文春が報じた性的行為の真実性を認める判決を言い渡している。
にもかかわらず日本の新聞テレビは頬被りをしたままジャニーズ事務所を祀り上げ続けてきた。ジャニーズ問題はタブーだったのである。
最高裁判決から約20年間、マスコミは問題を放置し続けた。その間、被害者は続出した。
一石を投じたのはBBCが今年3月に報道したドキュメンタリー番組だった。ジャニーズ事務所に所属していた少年たちが、顔出し実名で喜多川氏による性的加害を赤裸に語ったのである。
それでも日本の新聞テレビは沈黙を続けた。
だが、4月にカウアン・オカモト氏が日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見し、被害の実態を明らかにした。ネットで拡散され問題は社会に広く共有されるようになった。常識レベルにまで高まったのである。
カウアン氏はきょうのヒアリングで次のように語った―
「今回は自分の名前を出してジャニーズ事務所で起きたことを発表した。それにより僕以外の被害者も声をあげたことで、社会が僕たちの意見を聞いてくれるような状況になった。僕たちのような被害者を出さないようにするため法律の整備がされることを強く願っています」。
「未成年者が絶対的に立場が上の人から何かを要求された時、拒むのは難しい」。カウアン氏は怒りを湛えた表情で語った。=16日、衆院第4控室 撮影:田中龍作=
ヒアリングの後、2人はメディアの囲み会見を持った。
田中は「ネットメディアや海外メディアがなかったら、この問題は闇に葬られていたと思うか?」と質問した。
カウアン・オカモト氏は「以前と同じで何も変わらなかった」。表沙汰にはなっていなかった、ということである。
橋田康氏は「海外メディアや諸々メディアがなかったらここまで発展はなかったと思う」と答えた。
日本の新聞テレビに権力監視を期待するのは無駄である。統一教会問題もBBCに報道してもらったらどうだろう。 ~終わり~
きょうの潮流
しんぶん赤旗 2023年5月16日
グループサウンズが全盛だった60年代。ひとりの人物が日本の芸能界に新風を吹き込みました。歌って踊れる少年グループの誕生。それが多くのファンを巻き込みながら成長してきたジャニーズです。
創業者は米国のショービジネスを学んだジャニー喜多川氏。4年前に亡くなるまでタレントの発掘や育成の全権をにぎり、事務所を運営してきた姉のメリー喜多川氏とともに一大勢力を築き上げました。
長年ジャニーズを取材してきた作家によると、ジャニー氏には口癖がありました。「ぼくはどんな少年でもスターにできる。ただし、ぼくが好きになった子でなければダメ」。所属の少年たちを「うちの子」と呼んではばからない関係は「性的な好き嫌い」とも結びついていたと(『異能の男 ジャニー喜多川』)。
絶対的な権限をもつ創業者から所属タレントが性被害を受けたとされる問題で、ジャニーズの現社長がおわびを表明しました。事実と認めることは容易ではないとしながらも。
ジャニー氏による性加害は、これまでも一部メディアや海外の放送局で取り上げられてきました。週刊誌との裁判でもセクハラ行為はあったと認定されています。しかしジャニーズ事務所は顔を背けてきました。
性加害の検証と謝罪を求める署名を集めたファン有志の団体は、どのような方法で被害者と向き合っていくのか続報を待ちたいといいます。重い口を開いた性被害者の告発。華々しさの裏で少年たちの夢を食い物にしてきた罪は決して消えません。