日刊ゲンダイが「いいように利用されている岸田外交 なぜ議論にすらならないのか? NATOの東京事務所開設」とする記事を出しました。
繰り返し述べてきたように、NATOは第二次大戦後に米国が「ソ連の拡張」を防止すべく「ソ連」を敵国として欧州を組織した軍事同盟であり、本来であれば1991年に「ソ連」が崩壊した時点で解消されるべきものでした。
位置的に無関係である上に憲法9条を持つ日本が関与していいようなものではありません。岸田首相にはそういう感覚は皆無で、事ごとに関与を強めたがっているのは本当に不思議なことです。なかでもNATOの東京事務所を開設するとは害悪の極みでしかなく、渦中の栗を拾うに等しい行為です。
⇒(5月11日)ウクライナでロシアに敗北した米国/NATOは主戦場を東アジアへ移動
岸田首相には思想も信条もないと言われていますが常識的な判断力もないようです。
NATOの拠点が日本に置かれるとはどういうことなのかが日本ではなぜ議論にすらならないのか、これまた大いに不思議なことで日刊ゲンダイの怒りは尤もなことです。それにしても日本のマスコミは、安倍政権によって「政権批判」自体を攻撃されて以来一体どうなったのでしょうか。
併せて日刊ゲンダイの「『タイム誌』が書いた通り 岸田首相の危険な正体 軍拡財源法もデタラメの極み」を紹介します。
ここでは御厨貴・東大名誉教授が岸田氏のことを「変化に応じて『状況追従主義』で対応する」「状況追従主義は、ものを深く考えないから早く結論が出せる」と評したことが紹介されています。そんな風に 功利的且つ脊椎反射的な判断で政治が進められては日本は滅亡の一途を辿ることになります。
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いいように利用されている岸田外交 なぜ議論にすらならないのか? NATOの東京事務所開設
日刊ゲンダイ 2023/05/12
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
日本の安全保障において、聞き捨てならない重大ニュースなのに、なぜか大メディアは小さな扱いでしか報じていない。
NATO(北大西洋条約機構)が東京に連絡事務所を開設する方向で検討しているというのだ。2024年中の設置に向け、日本政府と準備を進めていることを9日、駐米日本大使が米ワシントンでの講演で明らかにした。NATOにとってアジア初の事務所となる。
言うまでもなく、NATOはEUとは違う。軍事同盟である。加盟国が武力攻撃を受けた際、全加盟国に対する攻撃と見なし反撃する「集団安全保障」を条約に明記している。その拠点が日本に置かれるとはどういうことなのか? なぜ議論にすらならないのか? 日本は将来的にNATOに加盟するのか? いくつもの疑問と不安が湧いてくるのだ。
「NATO側の目的は、情報収集でしょう。NATO加盟国のうち米国とカナダ以外の29カ国は欧州です。台湾有事についての情報などを地理的に近い場所で、米国経由ではなく得たいと考えている。ただ懸念されるのは、NATOが事務所を構えることで、日本が加盟する布石と取られかねないこと。現実には、憲法9条があるので日本は集団安全保障の体制はとれません。安保法制の『密接な関係にある他国』にも当てはまらない。しかし、防衛費をNATO並みのGDP比2%にすると閣議決定した辺りから、日本は国内外で『NATOと一心同体』という見られ方をしている。政府は事務所開設が軍事力強化につながるものではないと丁寧に説明すべきですが、それをしないとすればなぜか……。NATOの事務所開設が軍事力強化に利用される恐れがあります」(防衛ジャーナリスト・半田滋氏)
〝準加盟国〟とみられ中ロを刺激
昨年6月に岸田首相は日本の総理大臣として初めてNATO首脳会議に出席した。その会議で、NATOは長期的な行動指針を示す「戦略概念」を12年ぶりに改定。ロシアを「脅威」と位置づけ、中国からの「挑戦」に言及したうえで、「欧州」と「アジア」という2つの地域の安全保障を結びつけて捉える考え方を打ち出した。
それに呼応するように、日本は昨年末、防衛3文書を改定。防衛費を5年間で43兆円へと倍増し、NATO基準のGDP比2%を目指すという歴史的大転換を図った。文書ではNATOとの協力を強めるとも記された。
今年1月にはNATOのストルテンベルグ事務総長が来日して岸田と会談。協力関係の拡充などが確認された。事務総長が日本の防衛費増額を歓迎して「世界で最も資金が潤沢な軍隊の1つになるだろう」と持ち上げると、岸田は満足げだった。
4月には林外相が昨年に続き、NATO外相会合出席。日本はすっかりNATOの一員になったかのごとくだ。そんな中で進められている東京事務所の開設。アジア地域でNATOのプレゼンスが高まるのは確実である。
安倍政権時代のロシアとの北方領土交渉で、プーチン大統領が最後まで難色を示したのが、返還後の北方領土に米軍基地が置かれる可能性があることだった。口実だったとしても、それで交渉は暗礁に乗り上げた。
ロシアはNATOの東方拡大を嫌った。東京事務所開設なら東方どころか「極東拡大」だ。早速、ロシアは「アジア地域の対立を高め、軍拡を助長することになる」と反発している。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏が言う。
「東京事務所開設がロシアと中国を刺激するのは間違いありません。日本がNATOの“準加盟国”と見られ、ロシアと中国を敵視する国という位置づけが極めて鮮明になる。そしてもうひとつ重要なのは、台湾有事で日米が軍事行動を取る事態について、NATOの存在が『これは日米だけでなく、世界的に正しいことだ』というプロパガンダの役割を果たすことです。日本の軍事力を強化する国内世論づくりの後押しにもなるでしょう」
平和主義を捨て、軍事大国を望む
つまり、岸田外交はいいように利用されているのだ。NATOは日本のほか、韓国や豪州をインド太平洋地域のパートナーと位置づけるとしているが、NATOの“アジア拡大”には台湾有事を見据えた米国の思惑がある。
NATOは欧州防衛が本来の目的だ。ロシアによるウクライナ侵攻により、米国は対ロシアでウクライナ支援を続けなければならない。「二正面作戦」は取れない米国が、対中国はアジアの同盟国に関与を強めてもらいたい、ということなのだ。バイデン大統領が韓国の尹大統領を「国賓」としてもてなしたり、米国主導で日韓関係の融和が進められたのもその一環である。
そんな米国の狙いが分かっているのか、いないのか、主体的にNATOに接近していく岸田は、「なぜ遠く離れたヨーロッパの戦争に、前のめりで首を突っ込んでいくのか」の疑問に、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と繰り返す。
だが、台湾有事を煽っているのはむしろ米国ではないのか。NATOとの協力強化は、東アジアの安全保障に利するというが、米国からは遠く離れていても、中ロは日本の隣国。米軍との一体化やNATOとの一体化で、むしろ日本が危なくなるのではないのか。ええかっこしいの亡国外交ほど恐ろしいものはない。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
「米国がやっているのは自国は無傷のままで、中ロとの対立に日本を引きずり込もうということ。戦場になるのはアジアであり、日本ですよ。NATOは軍事同盟です。NATOの一員のようになることは、『武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』とした憲法9条に違反します。戦争に向けて旗を振るトップリーダーでいいのでしょうか」
勘違いの自画自賛
こうした不安や懸念は「聞く耳」自慢の首相にまったく届いていないようだ。
岸田が米誌「タイム」の次号(12日発売)の表紙を飾る。「日本の選択」と題した特集の一部が電子版で先行公開され、10日から大きな話題になっているが、その中身に多くがア然だったのではないか。岸田が「長年の平和主義を捨て去り、自国を軍事大国にすることを望んでいる」と紹介されているのだ。
何もこれは同誌の勝手な臆測ではない。岸田が4月28日に首相公邸で同誌のインタビューを受けた結果だ。
外務省が異議を申し立てたらしく、きのう午後になって「軍事大国」の見出しが修正されたが、それで日本に対する見方が変わったわけではない。平和主義を捨て去り、軍事大国を望む--。これが今の日本に対する世界の捉え方だ。この国はいつから平和を捨てたのか? 憲法9条はどうなったのか? そもそも岸田は海外メディアに伝える前に、自国民に伝えたのか? フザケルな、である。
軍事力を肩代わりしてくれるのだから、米国にとってはありがたい首相だろう。表紙になった自分を眺め、「安倍元首相にもできなかったことをやった!」と、また舞い上がる姿が目に浮かぶ。
「評価されていると勘違いして、自画自賛するのでしょうね。岸田首相というのは、流れに任せて状況に対応するだけの人。将来的なNATOのリスクを自覚していない。ウクライナ戦争を契機に軍拡を望む世論の高まりがありますが、それが、いつか来た道へ踏み出すことにつながることを、国民はきちんとわかっているのでしょうか」(五十嵐仁氏=前出)
「抑止力強化」「防衛力強化」のはずが世界も認める「軍事大国」。米国に乗せられ、“汚れた称号”をもらおうとしているのが、この国の現実だ。これでいいのか。
「タイム誌」が書いた通り 岸田首相の危険な正体 軍拡財源法もデタラメの極み
日刊ゲンダイ 2023/05/13
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
岡目八目ということか。米誌「タイム」(電子版)のタイトル変更が物議をかもしている。
岸田首相の写真を表紙に使ったタイム誌は、当初、<岸田首相は長年の平和主義を捨て去り、自国を真の軍事大国にすることを望んでいる>との表題をつけ、記事の冒頭に<岸田首相が平和主義だった日本を軍事大国に変える>とのタイトルをつけていた。「表題」も「タイトル」も正鵠を射たものだった。
ところが、海外メディアに痛いところを突かれたからか、外務省が「見出しと中身が異なっている」と抗議すると、タイトルが<平和主義だった日本に、国際舞台でより積極的な役割を与えようとしている>に差し替えられてしまったのだ。
しかし、誰がどうみたって、当初のタイトルの方が、岸田の本質を正確に表していたのではないか。さすがに表題は変えなかったが、なぜ「タイム」は、タイトルを変えてしまったのか。よほど外務省は強硬に抗議したのだろう。
タイム誌の記事は、実に詳細なものだ。岸田のことを的確に分析している。4月28日、首相公邸で行った単独インタビューを基にしている。
岸田を、アメリカに後押しされ「世界第3位の経済大国を、それに見合うだけの軍事的影響力のある大国に戻そうとしている」と分析。さらに、日本の軍事力増強が、地域の安全保障状況を悪化させかねないとの見方があることや、「核兵器のない世界」を目指す岸田の理念と軍事力強化は、矛盾するとの意見があると指摘している。
まさに、その通りだろう。きっとタイム誌は、岸田がホワイトハウスに追従していることも、「核兵器禁止条約」に見向きもしないことも、すべて知っているのだろう。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「海外メディアなのに、タイム誌は岸田首相の本質をよく分かっていると思う。岸田首相が『平和主義を捨て去り、日本の軍事大国化を望んでいる』のは、もはや隠しようのない事実です。決定的だったのは、昨年末に『安保関連3文書』を改定したことです。戦後の日本が守ってきた“専守防衛”を捨てることになる敵基地攻撃能力の保有を決め、さらに防衛費をGDP比2%まで増額する方針を打ち出した。日本のメディアは深刻に受け止めていませんが、“防衛費拡大”と“敵基地攻撃”は、戦後日本の安全保障政策を大転換させるもの。海外から見たら、日本は姿を変えようとしているように映るはずです」
増税までして「軍拡」の狂気
なりふり構わず軍事大国化を進める岸田政権の乱暴さを象徴しているのが、防衛費確保のための「財源確保特別措置法案」だ。
岸田政権は、2027年までの5年間で防衛費を約17兆円増やし、総額43兆円とする方針。「財源確保特別措置法案」は、岸田政権の防衛費増額の方針決定を受けて2月に閣議決定されている。
「防衛力強化資金」を新設し、国有財産売却など、税外収入を財源の一部として活用することが柱だ。
だが、ただでさえ借金漬けの日本には、絞り出したカネを軍拡に投入する余裕などないはずだ。「少子化対策」に回す方が有効なのは間違いないだろう。
国会審議の進め方も最悪だ。岸田政権は、東日本大震災の復興費に充てる「復興特別所得税」の半分を防衛費に使う方針を掲げているが、これに被災地からは「NO」の声が上がっている。昨年12月の福島民報などによる世論調査では62%が「納得できない」と回答した。そのため、立憲民主党と共産党が被災地での地方公聴会の開催を要求。しかし、岸田自民は開催を拒否し、法案を強行採決しようとしている。
さすがに、立憲と共産は、審議が行われている衆院財務金融委員会の塚田一郎委員長(自民党)の解任決議案を提出。
ところが、12日の衆院本会議で解任決議案は与党などの反対で否決され、麻生副総裁に至っては「“立憲共産党”による演出。単なる時間稼ぎだ」と野党をあざ笑う始末だ。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「国有財産を売り払い、さらに増税してまで、日本は軍拡しないといけないのでしょうか。岸田政権は自衛隊の艦船の建造費まで建設国債を発行してまかなうことを決めてしまった。しかも、『防衛力強化は待ったなしの課題だ』と訴えるだけで、なぜ、防衛費を倍増させなければならないのか、国民に説明しようともしない。これでは、タイム誌が〈岸田首相は、長年の平和主義を捨て、自国を真の軍事大国にすることを望んでいる〉と分析するのも当然でしょう。いまだって日本の防衛費は世界9位ですよ。防衛費をGDP比2%にすると世界3位の軍事大国になってしまう。本当に国民は、そこまでの軍拡を望んでいるのでしょうか」
安保政策の大転換に高揚の不気味
それにしても、情けないのは日本の大マスコミだ。「財源確保特別措置法案」はデタラメだらけなのに、安倍政権以降の10年間ですっかり牙を抜かれてしまったのか、問題を詳細に報じているメディアはほとんど見当たらない。それこそ、タイム誌を見習った方がいいだろう。
タイム誌は岸田を「タカ派的だった安倍元首相が国論を二分した一方、岸田首相が持つハト派の顔が大きな抵抗なしに安保改革を可能にした」と評していた。このまま、ハト派の仮面をかぶった岸田に任せていたら日本は本当に軍事大国にまっしぐらである。
恐ろしいのは、戦後日本の安全保障政策を大転換させていることに、胸を高鳴らせているフシがあることだ。5月4日付の朝日新聞によると、昨年末、安保関連3文書を改定し、敵基地攻撃能力の保有を決めた際、「俺は安倍さんもやれなかったことをやったんだ」と、高揚感を隠し切れない様子で周囲に語ったという。
それでいて、「(出身派閥・宏池会の)平和主義は変わらないが、状況が変わったからしょうがない」と無責任なことも口にしている。
東大名誉教授の御厨貴氏は、岸田のことを〈変化に応じて「状況追従主義」で対応する〉〈状況追従主義は、ものを深く考えないから早く結論が出せる〉と評していた。こういう「状況追従主義者」ほど怖いものはないのではないか。
「以前、岸田首相は総理大臣になった理由を子どもに質問された際、『一番権限が大きい人だから』と答えていました。首相として特にやりたいことがあるわけではないのでしょう。空っぽの岸田首相は、周囲に影響され、さらなる軍拡を進めてもおかしくありません。宏池会出身ながら、ハト派の仮面をかぶった岸田首相にだまされてはいけない。野党やメディアはもっと危機感を持って対峙すべきでしょう」(本澤二郎氏=前出)
月刊誌「選択」(3月号)は、〈岸田の本性は「タカ派の軍事好き」〉と報じていた。岸田にやらせていると、日本の軍事大国化は止まらない。気づけば「新しい戦前」になっていてもおかしくない。