4月26日、尹錫悦韓国大統領とジョー・バイデン米国大統領が共同記者会見し、アメリカの核兵器を搭載した潜水艦を韓国が受け入れることを決めました。米国が中国やロシアのような国を相手にした場合、海上艦船はミサイルで短時間のうちに撃沈されるため、海における戦闘では実は原子力潜水艦が死活的に重要な戦力となります。
櫻井ジャーナルは、これは米国が核兵器を展開する過程において韓国が参加することを保証する仕組みが出来たことを意味すると述べています(言うまでもなく日本は当初から米原潜の寄港を受け入れています)。
自衛隊は16年には与那国島に、19年には宮古島と奄美大島に、今年3月には石垣島に「中国を標的とするミサイル」発射基地の建設を進めてきました。すべては米軍の対中戦略に基づくものです。AUKUSは米英豪3カ国が中国を敵国として結んだ軍事同盟ですが、日本の参加が打診されています(22年4月12日、産経新聞)。
要するに米国の対中戦争において日本は「必要不可欠」とされているのですが、櫻井ジャーナルはそこには日本の主体性は無く単に米軍に従属するだけの戦闘奴隷に過ぎないと述べています(岸田政権が目指す統合防空ミサイル防衛(IAMD)に関する議論でもそのことは明らかです)。
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米国の戦略に従うだけの日本は「軍事大国」でなく戦闘奴隷にすぎない
櫻井ジャーナル 2023.05.12
日本が中国やロシアと戦争する準備を進めていることは事実だが、だからといって日本が「軍事大国」になるという見方は正しくない。日本には軍事戦略がないからだ。軍事戦略を決めているのは、言うまでもなく、アメリカの支配者たちである。
国際的には「日本軍」と認識されている自衛隊はアメリカの戦略に基づいて南西諸島でミサイル発射基地を建設してきた。2016年には与那国島、19年には宮古島と奄美大島、今年3月には石垣島で駐屯地が建設されている。
昨年、アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書には、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画が記載されている。RANDによると、そうしたミサイルを配備できそうな国は日本だけだ。
しかし、その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力するという形にした。ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたのだ。
アメリカの世界戦略はイギリスが19世紀に始めたものを踏襲しているが、1991年12月のソ連消滅は大きな節目になっている。ライバルの消滅でアメリカは唯一の超大国になったとネオコンは認識、1992年2月にDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成している。
その時の国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツで、ふたりともネオコン。ウォルフォウィッツが中心になって作成されたことから、そのDPGは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
この戦略を日本に強制するため、国連中心主義を打ち出していた細川護煕内閣を1994年4月に倒し、国防次官補だったジョセイフ・ナイが95年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表、日本をアメリカの戦争マシーンへ引き込むための道を作った。
1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、その10日後に警察庁の國松孝次長官が狙撃され、そして8月には日本航空123便の墜落に自衛隊が関与していることを示唆する大きな記事がアメリカ軍の準機関紙とみなされているスターズ・アンド・ストライプ紙に掲載されるという出来事を経て日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。
2001年の「9/11」をはさみ、2002年に小泉純一郎政権は「武力攻撃事態法案」を国会に提出、03年にはイラク特別措置法案が国会に提出され、04年にアーミテージは自民党の中川秀直らに対して「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と言明する。
2005年には「日米同盟:未来のための変革と再編」が署名されて対象は世界へ拡大、安保条約で言及されていた「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念」は放棄された。そして2012年にアーミテージとナイが「日米同盟:アジア安定の定着」を発表した。
安倍晋三は総理大臣時代の2015年6月、赤坂にある赤坂飯店で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたというが、これはアメリカの戦略を明確に示しているとも言える。
西太平洋からインド洋にかけての海域をアメリカ軍は一体のものとして扱うことにしたようで、2018年5月にアメリカ軍は「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ作り替え、日本を太平洋側の拠点、インドを太平洋側の拠点、そしてインドネシアを両海域をつなぐ場所だとした。
東アジアにおける軍事作戦の中核としてアメリカ、イギリス、オーストラリアは2021年9月にAUKUSなる軍事同盟を創設、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供すると伝えられた。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っている。
中国やロシアのような国を相手にした場合、海上艦船はミサイルで短時間のうちに撃沈される可能性が高い。海における戦闘の主体は潜水艦になる。
その潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。
尹錫悦韓国大統領とジョー・バイデン米国大統領が4月26日に行なった共同記者会見 の内容を批判する声明を朝鮮労働党の金與正中央委員会副部長は28日に発表、「政権の終焉」という表現が問題になった。
米韓首脳会談でアメリカの核兵器を搭載した潜水艦を韓国が受け入れることが決まったが、これは「NCG(核協議グループ)」の創設とリンクしている。アメリカが核兵器を展開する過程において韓国が参加することを保証する仕組みで、アメリカや「オーストラリア」の原子力潜水艦のほか、日本に配備されるミサイルとも無関係ではないだろう。全てアメリカの戦略に基づいている。
日本も韓国もアメリカの戦闘奴隷になる道を歩き始めた。その日本を「軍事大国」と呼ぶことはできないだろう。日本は「首無し鶏」状態なのである。