2023年5月27日土曜日

入管法改悪の根拠疑問/「逃亡」の背景に貧困/仮放免者 就労不可の苦悩

 出入国在留管理庁は25日、参院法務委員会理事会に、難民審査参与員の柳瀬房子氏が審査に関与した事件数を示す資料を提出しました。
 その概要は下記の通りで、111人いる難民審査関与員の年間の審査件数は平均40件前後であるのに対して、柳瀬房子氏だけは21年 年間1378件、22年 年間1231件と突出していて、75歳の柳瀬氏がたった1人で111人いる全体の20%~25%の件数をこなしているという異常な事態であることが分かりました。
        柳瀬房子氏の審査数と他の参与員の審査数(いずれも年間

 

柳 瀬 房 子 氏

他の参与員の経験

 

 

 2021年 1378件(全体6741件の20%)

   日弁連推薦の参与員の平均 36件

 

 

 2022年 1231件(全体4740件の25%)

 元参与員阿部浩己明学大教授の例 約50件

 

 因みに柳瀬氏の22年の勤務日数は32日、21年は34日で、単純計算で日あたり約40件の審査を行っていたことになります。兎に角、何もかもが「怪しい」の一言に尽きています。
 法務委員の石川大我議員(立民)が柳瀬氏の委員会への参考人召喚を求めましたが、入管庁は柳瀬氏は庁を代表する人物ではないと頑なに拒否しました(理由になっていません)。
 ⇒関連動画「哲学入門チャンネルhttps://youtu.be/LAgEPWdZXeI (27分47秒)
 彼女が21年の参考人質疑で「申請者の中に難民はほとんどいない」などと発言したことが立法事実(法令を立案した根拠になる事実)の1つになっているのに、その入管庁が当人を「信用できない」かのように言うのはまさに自家撞着です。
 誤った立法事実に基づいた法案であれば廃案にするしかありません。
 本件は一度取り上げていますが、入管庁の対応があまりにも酷いので改めて取り上げます。
 ⇒5月17日)「申請者の中に難民はほとんどいない」と柳瀬房子・難民審査参与員が虚偽答弁
 しんぶん赤旗と東京新聞の記事を紹介します。
 併せてしんぶん赤旗の記事「『逃亡』の背景に貧困 参院委 仁比氏“法改悪理由に根拠なし”」と、同紙の記事「就労不可の苦悩 切々 入管法改悪案参考人質疑 『仮放免』経験者訴え」を紹介します。
 前者は仮放免中の逃亡事例が多いことが入管法改悪案の立法事実の1つになっていることに対して、それが不当であることを主張するものです。
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柳瀬氏一人で難民審査1日40件 入管法改悪の根拠疑問
                       しんぶん赤旗 2023年5月26日
 出入国在留管理庁は25日、参院法務委員会理事会に、難民審査参与員の柳瀬房子氏が審査に関与した事件数を示す資料を提出しました。それによると柳瀬氏の処理件数は2021年、22年に年1000件超に上ります。勤務日数に照らすと1日あたり約40件の審査を行っていたことになります。
 参与員は、入管庁の難民審査申請で不認定とされ、異議申し立てをした外国人を再度審査します。元外交官や研究者、司法関係者などを法相が任命しています。
 柳瀬氏は21年の衆院法務委員会の参考人質疑で「申請者の中に難民はほとんどいない」などと発言。入管庁の「現行入管法の課題」に引用され、発言は、入管法改悪が必要な根拠のつとされていましたが、柳瀬氏の審査数や審査が適正に行われていたかについて疑問の声が上がっていました。
 今回、入管庁が明らかにした、柳瀬氏が関与した審査件数は、22年で全体の処理数4740件のうち1231件、21年は同6741件中1378件。参与員は16日現在111人いますが、柳瀬氏―人で2割を超す件数を処理していたことになります。全国難民弁護連絡会議(金連)の調査で、参与員10人が今年3月までの年間処理数を17~50件(平均36・3件)と回答したことと比べても、異様な処理数です。
 柳瀬氏の22年の勤務日数は32日、21年は34日だったことも明らかになり、単純計算で日あたり約40件の審査を行っていたことになります。
 入管庁が柳瀬氏の関与した事件数を明らかにしたことで、柳瀬氏の発言の信ぴょう性への疑問がさらに深まりました。


審査役111人いるのに1人に集中、全体の25%を担当 難民審査で入管庁公表 柳瀬房子参与員が昨年1231件
                         東京新聞 2023年5月25日
 入管難民法改正案について、政府が法改正が必要な根拠として引用する「難民をほとんどみつけることができない」との発言をした柳瀬房子・難民審査参与員の年間審査件数が2022年で全体の4分の1を占めていたことが分かった。25日、参院法務委員会で出入国在留管理庁(入管庁)が資料を提出した。参与員が111人いる中、1人に審査が集中する格好で、同発言を法改正の根拠とすることに一部野党や難民支援者から疑問の声が強まっている。

◆政府が利用「難民みつけることができない」発言の信ぴょう性は
        柳瀬房子氏の審査数と他の参与員の審査数(いずれも年間)

 

柳 瀬 房 子 氏

他の参与員の経験

 

 

 2021年 1378件(全体6741件の20%)

   日弁連推薦の参与員の平均 36件

 

 

 2022年 1231件(全体4740件の25%)

 元参与員阿部浩己明学大教授の例 約50件

 

 難民審査参与員は、入管庁が難民ではないと認定した外国人が不服を申し立てた際、3人1組で審査する役割。法務省から委託された識者らが務め、NPO出身の柳瀬氏は05年の制度発足時から務めている。
 入管庁の公表資料によると、柳瀬氏の審査件数は21年が件数全体の約20%に相当する1378件、22年が25%の1231件だった。
 全国難民弁護団連絡会議(全難連)が、参与員を務める弁護士10人に調査したところ審査件数は年平均36件だった。元参与員の阿部浩己明治学院大教授も23日の参考人招致で「年50件」としており、柳瀬氏の数と開きがある。
 柳瀬氏の21年の勤務日数は34日で、一日あたり平均40件を審査した計算になる。22年は32日で、1日に同38件を審査したことになる。
 立憲民主党の石川大我議員は委員会で「特殊例の人の発言を改正の根拠とするのはおかしい」と述べた。
 入管庁の西山卓爾次長は「長年、難民支援に取り組んできた方で発言は重く受け止めている」として、柳瀬氏の発言を改正の根拠とする立場を崩さなかった。

◆「一部の参与員に異常なまでに大量に処理させている」
 難民問題に詳しい高橋済弁護士は「一部の参与員に異常なまでに大量に処理させているのが問題。保護されるべき人が保護されるような審査がなされておらず、法改正の根拠が崩れている」と話す。
 柳瀬氏は21年の衆院参考人招致で「難民を認定したいと思っているのにほとんどみつけることができない」と発言。入管庁は発言を難民申請が乱用されていることの根拠として法改正の必要性を説明している
 審査件数などについて柳瀬氏に取材を申し入れたが関係者を通じ「回答を差し控えたい」とした。(池尾伸一、望月衣塑子)


「逃亡」の背景に貧困 参院委 仁比氏“法改悪理由に根拠なし”
                       しんぶん赤旗 2023年5月26日
 日本共産党の仁比聡平議員は25日の参院法務委員会で、入管法改悪案にかかわって、政府が増加したと主張する一時的に収容が解かれた外国人(仮放免者)の「逃亡」の背景に、仮放免者の地位の不安定さや貧困があると指摘し、同改悪案の立法事実には根拠がないと主張しました
 入管庁は、仮放免許可後の逃亡が増加し、2022年末時点で約1400人に上るとして、法改定の必要性を主張しています。
 仁比氏は、入管が逃亡と判断するのは、電話がつながらなかったり、出頭日に出頭しなかったりした場合かと質問しました。入管庁の西山卓爾次長は「ご指摘のような事情をふまえて判断している」と述べました。
 仁比氏は、仮放免者は働くことができず、保険もなく、家賃を払うことも厳しい状況に置かれていると指摘。家賃を払えなくなり、友人の家を転々としたり、路頭に迷ってホームレスとなったりした人も逃亡者に含まれているのではとただしました
 西山次長は、「一般論としてそういう状態の方もいる」と認めました。
 仁比氏は、逃亡したとされる人たちの背景には、地位の不安定さや貧困があるとして、「政府が立法事実として『逃亡が1400人』と繰り返す数字の中身もそういうものだ」と主張。帰国を拒む外国人を「送還忌避者」とひとくくりにして問題視する政府の姿勢を批判しました。


就労不可の苦悩 切々 入管法改悪案参考人質疑 「仮放免」経験者訴え
                       しんぶん赤旗 2023年5月26日
参院委
 政府提出の入管法改悪案と野党の対案に関する参考人質疑が25日、参院法務委員会で行われ、日本共産党の仁比聡平議員が当事者や支援者に質問しました。

 9歳で家族と来日し、入管施設への収容を一時的に解かれる「仮放免」の立場に置かれてきたトルコ国籍クルド人のラマザンさんは、在留資格を得るまで就労が認められなかった苦しみを仁比氏に語りました
 ラマザンさんは、高校卒業後の進路選択に際し、通訳の仕事がしたいと入学を希望した学校から「卒業しても働けないよね」「学んでいる意味はあるの」などと言われた経験が、働くことへの「一番大きい壁」だったと発言。「日本人からしたらごく普通の夢を持っている。でも、私たちからしたら夢のまた夢」と訴えました。
 全国難民弁護団連絡会議の渡邉彰悟代表は、難民認定申請者が本国でいつどのように迫害を受けるかは誰にもわからず、「その人の置かれている状況を(難民調査官が)客観的に判断するために、出身国情報が必要」だと強調。それがいまの日本で十分に評価されていないことに「最大の問題を感じる」と述べました
 また、難民不認定とされていたウガンダ出身の同性愛の人が裁判で難民認定されたことに触れ、「(調査官が)ウガンダの同性愛者がかかえている困難を理解した上でインタビューに臨まなければいけない」「それがなければその人の難民性を浮き彫りにできない」と主張しました。