2023年5月27日土曜日

敵基地攻撃 始めたら止められない/米要求で米兵器購入青天井

 しんぶん赤旗日曜版編集部情報公開請求に対して、内閣法制局「反撃能力について」と題する防衛省の内部文書昨年12作成)を開示しました。これは防衛省敵基地攻撃能力保有を盛り込む安保3文書の閣議決定(昨年12月16日)に先立って、内閣法制局に法的に問題ないか照会した際の文書です。
 安保3文書では敵基地攻撃について「日米が協力して対処していく」としていますが、
 「自衛隊には、海外のどの敵基地を反撃したらいいか、反撃した結果どういう戦乗が出たのか把握する能力はない」ので「そこは米軍に頼ることになる。米軍の判断に引きずられ、反撃に際限がなくなる(元空自第7航空団司令林吉永さん)」ことになります。敵基地攻撃米国次第で際限なく拡大するということです。
 岸田首相は「攻撃は必要最小限度に留める」を口癖にしていますが、そこには何の歯止めもないので、武力行使は無制限にな集団的自衛権の行使として敵基地攻撃に踏み込めば、「アメリカが戦争に勝つまで緒にたたかうことになります(志位委員長)。
 日本側は独自に海外の攻撃目標や戦果を確認できない以上、結局は米側の判断に引きずられ攻撃サイクルが際限なく続くことになって、全面戦争になります。
 防衛ジャーナリストの半田滋さんは、政府が「敵基地攻撃能力の行使必要最小限度の実力行使にとどまるから合憲だと説明するが、米軍の指揮統制を受けた自衛隊が敵基地攻撃を始めれば、「必要最小限度の実力行使」で済むはずはなく、「日米が際限なき敵基地攻撃に踏み込めば相手は反撃し日本は壊滅的被害を受ける」と述べています。

 それとは別に、共産党の井上哲士議員は25日の参院財政金融委員会で米国が価格や納期を方的に決定できるFMSによる武器購入について、20年の参院本会議で調達・維持費の高騰や未納、未精算など「改善すべき課題が山積している」などとする警告決議が上がったにもかかわらず、未納・未精算は改善しておらず、「FSMそのものの不公平な枠組みにも手を付けてない」と強調しました。
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スクープ防衛省内部文書で見えた 敵基地攻撃「際限なくなる」元空自司令
                    しんぶん赤旗日曜版 2023年5月28日
決めるのは米軍
 攻撃目標の分担から再攻撃まで米軍と自衛隊が共同で行う-。岸田政権が保有を決めた敵基地攻撃能力を用いた日米共同作戦の恐るべき実態が、編集部入手の防衛省内部文書で分かりました。自衛隊元幹部は、必要な情報が米軍頼りとなるため「敵基地攻撃に際限がなくなる」と指摘。米国が戦争に勝つまで自衛隊が緒にたたかうことになりかねません。

 これまで岸田政権は、敵基地攻撃で米軍と自衛隊がどういう協力をするのかについて国会で詳細を明らかにしてきませんでした。その方で、敵基地攻撃能力保有などのために今後5年間で43兆円の大軍拡を狙い、そのための軍拡財源法案の国会成立も急いでいます。
 編集部が入手したのは、昨年12に防衛省が作成した「反撃能力について」と題する内部文書。防衛省は敵基地攻撃能力保有を盛り込む安保3文書の閣議決定(昨年12月16日)に先立ち、内閣法制局に安保3文書について法的に問題ないか照会していました。文書は、そのときに防衛省が検討している具体的内容として内閣法制局に示していたもの。編集部の情報公開請求に内閣法制局が開示しました。

日米で攻撃サイクル
 同文書の「日米共同対処」と記された箇所には、「以下のオペレションのサイクル、特に目標情報の共有、反撃を行う目標の分担、成果についての評価の共有等について、日米で協力を行うことが考えられる」と明記。その連の活動を図示していました。(
  ⇒ 図 オペレーションサイクル
  https://drive.google.com/file/d/1B7I_DbrSj364LaNejiLYxLMTQzQgEj7H/view?usp=sharing
 (URLをクリックするとPDF図が開きます。画面下の+マークをクリックし拡大してご覧ください)
 図には、敵基地攻撃の「計画立案」「目標割当」「指揮統制」「火力発揮」「情報分析」などを列挙。これらの活動を「サイクル」のように繰り返すことを矢印で示しています。攻撃分担や戦果情報共有など敵基地攻撃戦全体で日米が協力することを想定しています。
 安保3文書のつ、国家安全保障戦略は敵基地攻撃について「日米が協力して対処していく」としていますしかし岸田政権は国会で協力内容を追及されると、「日米間で今後議論していくものであり、自衛隊の運用に間わる事柄でもあるため、詳細をお答えできない」(浜田靖防衛相、4月19日)とし、明らかにしてきませんでした。
 自衛隊には、国内は別にして海外のどの敵基地を反撃したらいいか、反撃した結果どういう戦乗が出たのか把握する能力はない」と話すのは元航空自衛隊第7航空団司令の林吉永さん。「そこは米軍に頼ることになる。米軍の判断に引きずられ、反撃に際限がなくなる。作戦が米軍主導に陥って日本の『専守防衛』が『アメリカ流の戦争』にとって代わるという『戦争指揮』に悩ましさ、危惧が生ずるだろと指摘します。
 米国次第で際限なく拡大しかねない敵基地攻撃。その危険を追います。

攻撃始めたら止められない 日本に海外の戦果把握の能力ない 米の判断次第
政府「必要最小限」の説明破たん―武力行使は無制限に
 敵基地攻撃に踏み出せば際限なく拡大しかねない危険はこれまでも指摘されてきました。
 政府は敵基地攻撃について、日本が攻撃されていなくても、米軍が攻撃されれば集団的自衛権の行使として実行可能だと認めています。ただ集団的自衛権の行使は「必要最小限度の実力行使にとどまる」としています。
 しかし国会で日本共産党の山添拓参院議員が「必要最小限度」の定義をただしたのに対し岸田文雄首相は「一概に述べることは困難で、個別具体的な状況に即して客観的、合理的に判断する」としか答弁できませんでした。(3月6日の参院予算委員会)
 この答弁に日本共産党の志位和夫委員長は記者会見で「集団的自衛権の行使のもとでの『必要最小限度』は定義がないということだ。これでは武力行使は無制限になる」と指摘。集団的自衛権の行使として敵基地攻撃に踏み込めば、「アメリカが戦争に勝つまで緒にたたかうことになり、『必要最小限度』の歯止めはなくなる」と批判していました。(同9日)

立案、分担、指揮、攻撃、戦果情報共有、攻撃再立案、再攻撃  日米 一体で
 今回判明した防衛省文書は、敵基地攻撃の日米共同作戦を「オペレーションのサイクル」と呼んでいます。攻撃計画の立案から攻撃目標の分担、指揮統制に基づく実際の攻撃、戦果情報の共有、攻撃計画の再立案、再攻撃を日米一体で繰り返すことを想定しています。しかも独自に攻撃目標や戦果を確認できない日本側は米側の判断に引きずられ、攻撃サイクルが際限なく続く-。まさに全面戦争です。
 防衛省文書は、「歯止めなき敵基地攻撃」の危険な姿を具体的に示しています。
 政府は敵基地攻撃能力について、弾道ミサイルなどの攻撃に対し、「やむを得ない必要最小限度の自衛の措置として行使される」から憲法違反ではないと主張しています(防衛省パンフレット)。しかし、米軍次第で無制限に拡大しかねない敵基地攻撃が憲法9条と両立しないことは明らかです。
 防衛省は編集部の取材に、米国の情報だけでなく、全ての情報を総合して運用するもので、「ご指摘はあたらない」と回答しました。
             この企画は、田中一郎、前田康孝記者が担当しました

反撃招き日本は壊滅しかねない 防衛ジャーナリスト 半田滋さん
 安保3文書の一つ「国家防衛戦略」には、敵基地攻撃能力について「情報収集を含め、日米共同でその能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築する」という一文があります。
 防衛省の内部文書は、その内容をより具体的に示したものです。
 サイクル図には、敵基地攻撃後に「BDA(攻撃の成果についての評価)」「ISRT(情報収集、警戒監視、偵察、追尾等)」「情報分析」を行うと書かれています。これらは米軍の情報に頼らざるをえません。日本には米国のような多数の偵察衛星、各種レーダー、世界中に張り巡らせたスパイ網(ヒューミント)といった高い情報収集能力がないからです。
 注目されるのは、サイクル図にある「指揮統制」の4文字です。
 図には、米軍と自衛隊でどちらが指揮統制する側になるかの記載はありません。しかし実態を考えれば、米軍優位は明らかです。「計画立案」「目標割当」は米軍主導で行うことになるでしょう。「相手領土のどの基地にトマホークを撃て」といった米軍の指揮のもと自衛隊が「火力発揮」としてトマホークを撃つことになると読み取るのが自然でしょう。
 政府は敵基地攻撃能力の行使について必要最小限度の実力行使にとどまるから合憲だ″と説明しています。
 
「必要最小限」ですむはずがない
 しかし、米国には日本の憲法9条のような定めがありません。米軍は「必要最小限度の実力行使」どころか、米軍の都合でどこまでも敵基地攻撃を拡大させるでしょう。その米軍の指揮統制を受けた自衛隊が敵基地攻撃を始めれば、「必要最小限度の実力行使」で済むはずがありません。自衛隊が抑制的な攻撃にとどめようと考えたとしても、米軍の都合でエスカレートする恐れがあります。憲法違反になるのは明白です。
 日米が際限なき敵基地攻撃に踏み込めば、相手は反撃し、日本は壊滅的被害を受けるでしょう。米軍や自衛隊が使う民間空港・港湾も攻撃対象です。重要インフラを含め日本の国土が、ことごとく破壊されることにもなりかねません


米要求で軍事費青天井 参院委 井上氏 「有償軍事援助」を告発
                        しんぶん赤旗2023年5月26日
 軍拡財源法案の審議が、25日の参院財政金融委員会で始まりました。日本共産党の井上哲士議員は、米国の武器輸出制度「有償軍事援助(FMS)」について追及しました。
 井上氏は、米国が価格や納期を方的に決定できるFMSによる武器購入について、2020年の参院本会議で、調達・維持費の高騰や未納、未精算など「改善すべき課題が山積している」などとする警告決議が上がったと指摘。日米協議が行われてきましたが、未納・未精算は改善しておらず、「FMSそのものの不公平な枠組みにも手を付けてない」と強調しました。

 井上氏は、FMSによるイジス・アショアについて、14~18年度の武器調達計画である「中期防衛力整備計画」には盛り込まれていなかったが、17年の日米首脳会談直後に導入が決まり、18年度予算案に盛り込まれたと指摘。ずさんな計画が破綻して、イジス・システムの洋上化が進められているが、総経費は、当初より大幅に膨れ上がっていると追及しました。防衛省の茂木陽審議官は「現時点で具体的な金額を示すのは困難だ」と述べるのみでした。
 井上氏は、イジス艦が新造されるたびにFMSによる装備品が拡大していることを示し、「(政府は)必要なものを積み上げて軍事費がGDP(国内総生産)比2%となったというが、実際は米国の要求に応えたもの。FMSによる大量購入で軍事費を青天井にするのは許されない」と批判しました。