ウクライナ情勢に関する櫻井ジャーナルの直近の3つの記事を紹介します。
ゼレンスキーに戦争継続などの具体的な指示を出しているのは米政権のネオコングループと言われています。ゼレンスキーは4月26日の習近平との電話会談をバイデン政権に無断で行ったため、米政府の外交政策チーム=ネオコンは憤慨したということです。
ゼレンスキーはこれまでに何度か停戦に傾きましたが、そのつど米英から阻止されて来ました。ウクライナは元々軍資金?や武器弾薬の供給は海外勢に頼っているので、停戦への発想は人命の損失にある筈ですが、ネオコンにとってはそれらは一向に重要ではないのでしょう。
櫻井ジャーナルには米国の〝ネオコン”が頻繁に出てきます。ネオコンは新保守主義と訳されますが、米国のネオコンは反スターリン主義を訴えたトロツキストの流れを汲んでいて、専制主義国家の打倒?に熱意を持っているとされていますが、彼らの行状をそうした言葉で括るのはさすがに無理があります。
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壊滅的な結果が予想されるウクラナ軍の「反転攻勢」を強要するネオコン
櫻井ジャーナル 2023.05.04
西側の有力メディアが宣伝してきたウクライナ軍の「反転攻勢」はまだ実行されていない。ウクライナのバディム・プリスタイコ駐英大使は5月2日にスカイ・ニュースの番組に登場、攻撃開始の遅れは悪天候、つまり気温の上昇で地面がぬかるみ、戦車が動けないからだと語った。部隊の集結が早すぎ、自らロシア軍のトラップにかかってしまったと言えるだろう。同大使はイクスプレス紙に対し、ウクライナ軍の死傷者数は身の毛のよだつ数字だとも語っていた。
泥沼で身動きが取れないウクライナ軍をロシア軍はドローンやミサイルで攻撃、「肉挽き器」状態になっていると言われている。塹壕がウクライナ兵で死体で埋まっているということだ。そうした状態を明らかにする上空から撮影した映像やウクライナ兵の証言も流れている。
ウクライナ軍はNATO軍の命令で動いていると言われているが、その命令が「玉砕戦法」だ。ウクライナ軍が1日に発射する砲弾の数は約7700発、ロシア軍はその3倍だとウクライナ軍当局者が話しているとも伝えられている。
十分な軍事訓練を受けられないままウクライナの兵士は「肉挽き器」へ投げ込まれ、その戦死者は十数万人から30万人、あるいはそれ以上に達し、ロシア軍の戦死者はその1割以下だと推定されている。そのロシア軍はまだ動員した兵士を事実上、投入していない。
アメリカ陸軍大将で欧州連合軍最高司令官(SACEUR)を務めるクリストファー・カボリによると、ウクライナで活動しているロシア軍は昨年2月に特別軍事作戦を開始したときよりも大きく、兵力に余裕があると指摘、また損害は戦艦1隻、戦闘機や戦術爆撃機80機にとどまっているともしている。
現在、戦闘の中心はバフムート(アルチョモフスク)。NSC(国家安全保障会議)のジョン・カービー戦略広報調整官はロシア軍が負けていると主張しているが、当事国以外の分析ではバフムートの80から90%をロシア軍が制圧している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領でさえ戦況は良くないと3月23日に発言、3月29日にはバフムート(アルチョモフスク)で負けたならロシアに「妥協」しなければならないだろうと語った。
アメリカの支配層内でもウクライナでの戦闘継続を疑問視する声が強まっているようだが、ウクライナ系のネオコンがロシア軍と戦争継続を望んでいる。実行すれば壊滅的な結果が予想されている「反転攻勢」に執着している。
中国の有名な兵書『孫子』は戦争を「国の大事」と表現、人びとの死生や国の存亡がかかっているので慎重に考えなければならないとしているが、ネオコンは国民の死生も国の存亡も無視、ひたすらロシアとの戦争へ突き進もうとしている。
孫子はまず「道」を考えろとしている。人びとの意思と支配者を一体化させなければならないとうことだが、ネオコンは個人的な欲望のために戦争を進めてきた。通常なら人びとは戦争に賛成しないだろうが、それを逆転させるために洗脳を行う。その仕組みが「教育」であり、「報道」である。
好戦派に属すビクトリア・ヌランド国務次官やアントニー・ブリンケン国務長官には似た個人的な背景がある。
ヌランドは2014年2月のウクライナにおけるクーデターで中心的な役割を果たした人物で、父方の祖父母がウクライナからの移民。ブリンケンの場合、父方の祖父がウクライナ出身だ。ちなみにポーランド駐在大使を務めているマーク・ブレジンスキーの父親はアメリカの反ロシア戦略で重要な役割を果たしたズビグネフ・ブレジンスキー。この人物はポーランドの生まれだが、一族の出身地ブゼザニは現在、ウクライナに含まれている。
クレムリンを攻撃目標に定めたのはアメリカ政府だとロシア政府は主張
櫻井ジャーナル 2023.05.05
クレムリンを2機のドローン(無人機)で攻撃した出来事についてロシアのトリー・ペスコフ大統領報道官は5月4日、攻撃目標を決めたのはアメリカ政府であり、ウクライナ政府は命令を実行しただけだと語っている。ジョー・バイデン政権がウラジーミル・プーチン大統領を殺害しようとしたというわけだ。適切と思われる場所と時期に報復する権利を留保するとペスコフは宣言している。
西側の有力メディアはウクライナ軍が春に「反転攻勢」すると宣伝してきたが、まだ実行されていない。ウクライナのバディム・プリスタイコ駐英大使は5月2日にスカイ・ニュースの番組に登場、攻撃開始の遅れは悪天候、つまり気温の上昇で地面がぬかるみ、戦車が動けないからだと語っている。実際、ぬかるみの中で身動きできなくなっているウクライナ軍をロシア軍はドローンやミサイルなどで攻撃、塹壕がウクライナ兵で死体で埋まっているという。プリスタイコ大使もウクライナ軍の死傷者数は身の毛のよだつ数字だとも語っている。
こうした戦況についてポーランド軍のライモンド・アンジェイチャク参謀長はウクライナ軍の置かれている状況は良くないように見えると発言、アメリカ陸軍大将で欧州連合軍最高司令官(SACEUR)を務めるクリストファー・カボリはウクライナで活動しているロシア軍が昨年2月に特別軍事作戦を開始したときよりも規模が大きいと説明している。動員された兵士をほとんど投入していないロシア軍には兵力に余裕があることをカボリ司令官も認めている。
昨年3月の上旬には停戦でロシア政府と合意していたウクライナ政府に戦争を継続させたのはアメリカとイギリス。ところが米英両国を含むNATO諸国はウクライナへ供給する武器弾薬を底をつき、韓国に助けを求める事態になっている。ウクライナ軍による「春の反転攻勢」は無理だと考えるのが常識的だ。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領も戦況は良くないと3月23日に発言、3月29日にはバフムート(アルチョモフスク)で負けたならロシアに「妥協」しなければならないだろうと語っている。
4月26日にはウクライナでの和平交渉を仲介するとしている中国の習近平国家主席とゼレンスキー大統領は電話で話し合ったというが、電話したのはゼレンスキーで、バイデン政権に無断で行ったという。アメリカ政府の外交政策チーム、つまりネオコンは憤慨した。
その会談で習近平はロシア語の通訳を使ったことも注目されている。ウクライナ語の通訳が中国にいないとは思えない。中国はゼレンスキーにロシア語を使わせたということだ。
日本を含め、西側ではロシアや中国を蔑視することで自分たちが優位に立っていると思いたがっている人が少なくない。アメリカやイギリスのエリートはスラブ人やアジア人を蔑視している。その背景には19世紀に始まった優生学がある。
イギリスから始まり、アメリカへと広がった優生学によると、最も優秀な種はアングロ・サクソン。その優生学を取り入れたドイツでは優れた種をアーリア人と表現した。彼らはスラブ人やアジア人を劣等だと考える。アングロ・サクソンのエリートにとって日本人も劣等種ではあるものの、役に立つ劣等種だ。
こうした信仰は北方神話と結びついているが、その蔑視が西側、つまりアメリカたヨーロッパを窮地に追い込み、米英に従属している日本も破滅への道を歩いている。
停戦合意を壊し、ゼレンスキーを窮地に追い込んだのはバイデン政権のネオコン
櫻井ジャーナル 2023.05.05
クレムリンが2機のドローン(無人機)に攻撃を受けた直後にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はフィンランドを訪問、5月3日にはフィンランドのほかスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドの首相と会談した。記者会見で彼はウクライナがウラジミル・プーチン露大統領やモスクワを攻撃したとするロシア側の主張を否定した。
ロシアのトリー・ペスコフ大統領報道官は5月4日、攻撃目標を決めたのはアメリカ政府であり、ウクライナ政府は命令を実行しただけだと語り、アナトリー・アントノフ駐米露大使は「もしドローン(無人機)がホワイトハウス、議会、あるいは国防総省に突入した場合、アメリカ人はどのように反応するだろうか?」と問いかけ、「罰は厳しく、避けられない。」と語っている。適切と思われる場所と時期に報復する権利を留保するとペスコフは宣言した。
昨年2月24日にロシア軍がウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設を巡航ミサイルなどで攻撃し始めた直後、イスラエルの首相だったナフタリ・ベネットはアメリカと調整しながら停戦交渉の仲介に乗り出した。
3月5日にベネットはモスクワでプーチンと数時間にわたって会談、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会っている。ウクライナの治安機関SBU(事実上CIAの下部機関)のメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺したのはその3月5日だ。
ベネットによると、恐怖から掩蔽壕に隠れていたゼレンスキーはロシア政府がゼレンスキーを殺害しないと保証したことを確認した2時間後にゼレンスキーはオフィスで「私は恐れない」と宣言したという。
アンドレイ・パルビーと同じようにウクライナのネオ・ナチを率いてきたドミトロ・ヤロシュはウクライナ軍最高司令官の顧問。この人物はドロボビチ教育大学でワシル・イワニシン教授の教えを受けているが、この教授はKUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)の指導者グループに所属していた。
KUNを組織したのはOUN-B(ステパン・バンデラ派)の人脈で、その指導者はバンデラの側近だったヤロスラフ・ステツコ。その妻にあたるスラワがKUNを率いていたが、ヤロスラフが1986年に死亡してからOUN-Bの指導者にもなった。スラワは1991年に西ドイツからウクライナへ帰国している。
スワラは2003年に死亡、イワニシンは2007年に死亡する。イワニシンの後継者に選ばれたのがヤロシュ。そのタイミングで彼はNATOの秘密部隊ネットワークに参加したと言われている。2007年5月にウクライナのテルノポリで開かれた欧州のネオ・ナチや中東の反ロシア・ジハード主義者を統合するための会議で議長を務めた。
ジハード主義者とはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする人びと。「原理主義者」と言われることもあるが、イスラムの思想に傾倒しているとは言えない。
NATOの秘密部隊は第2次世界大戦の終盤にアメリカとイギリスの情報機関が組織したゲリラ戦部隊「ジェドバラ」を源流とする。大戦中、西ヨーロッパでドイツ軍と戦っていたのはレジスタンス。その主力はコミュニスト。ジェドバラはレジスタンス対策で作られたのだ。その人脈は大戦後も生き続け、西側連合秘密委員会(CCWUまたはWUCC)が統括していた。
大戦後、アメリカの情報機関OSSは解散になるが、やはり人脈は生き続けて極秘の破壊工作機関OPCになる。OPCで活動した重要人物のひとり、ジェームズ・バーナムはネオコンが誕生する際に重要な役割を果たした。1952年にはその機関を核にしてCIA内部に「計画局」が設置された。その後、この秘密工作部門は肥大化、CIAを事実上乗っ取る。
その一方、アメリカやイギリスの支配層は1949年4月、ヨーロッパを支配するためにNATO(北大西洋条約機構)を創設した。創設時の参加国はアメリカとカナダの北米2カ国に加え、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルクの欧州10カ国だ。
NATOの初代事務総長に就任したヘイスティング・ライオネル・イスメイはウィンストン・チャーチルの側近で、NATO創設の目的について「ソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつける」ことにあると公言している。ヨーロッパですでに作られていた破壊工作部隊はNATOの秘密部隊として活動し始めた。
秘密部隊は全てのNATO加盟国で設置され、それぞれ固有の名称がつけられている。イタリアのグラディオは有名だ。こうした秘密部隊は活動すべてが米英の情報機関、つまりCIAとMI6がコントロール、各国政府の指揮下にはない。
ウクライナの軍事組織に大きな影響力を持つヤロシュが所属していると言われているNATOの秘密部隊は各国政府の指揮下にはなく、ゼレンスキーが指揮しているわけでもない。米英情報機関の命令で動くということだ。