共産党の山下芳生議員は29日の参院特別委で、マイナンバーカードに関するトラブルが多発している背景にはメリットばかりを強調し、急激な普及と用途拡大を押し付けてきた政府の姿勢があり、政府が、健康保険証の廃止というムチと2万円分のポイント付与というアメでカードの普及と用途拡大を急激に推進してきた結果、現場の対応が追い付かなくなり、業務が民間に委託され、十分な研修も受けられないアルバイトによって処理されたことなどが、今回の事態につながっていると批判した上で、原因の究明と再発防止が図られるまで運用を停止するべきだと述べました。
国は自治体や健康保険組合などに「被保険者の情報を再確認」するよう指導したようですが、現場にはそれができるだけの体力がないのが実情です。上滑りの指導ではなく実態に即した対応をするべきです。
しんぶん赤旗の記事(2つ)と田中龍作ジャーナルの記事を紹介します。
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マイナ混乱 背景に強引普及 「保険証」運用中止せよ 山下氏、政府の姿勢追及
しんぶん赤旗 2023年5月30日
参院特別委
日本共産党の山下芳生議員は29日の参院地方創生デジタル特別委員会で、マイナンバーカードに関するトラブルが多発している背景には、メリットばかりを強調し、急激な普及と用途拡大を押し付けてきた政府の姿勢があると追及し、命がかかわる問題となっている以上、「マイナ保険証」の運用は一時中止すべきだと求めました。(医療現場のトラブル 下掲)
「マイナ保険証」への別人の医療情報のひも付けや口座の誤登録など一連のトラブルについて、「憲法が保障する国民の生存権などを脅かす深刻な問題だという認識はあるのか」と山下氏がただすと、河野太郎デジタル相は「間違ったデータをもとに医療が行われ健康に被害が及べば深刻なトラブルだ。個人情報が保護されないことは個人の尊厳にもかかわる重大な事案だ」「口座登録の誤りは財産権にも関係する」と認めました。山下氏は、それならば原因の究明と再発防止が図られるまで運用を停止するのは当たり前だと主張しました。
その上で、山下氏は、政府が、健康保険証の廃止というムチと2万円分のポイント付与というアメでカードの普及と用途拡大を急激に推進してきた結果、自治体や健康保険組合など現場の対応が追い付かなくなったことが各種のトラブルが多発する大きな原因となっていると指摘。自治体の現場からは、申請が殺到するなかで業務が民間に委託され、アルバイトによって、十分な研修も受けられずに担われたことなどが、今回の事態につながっているとの声があがっていると告発しました。
河野氏は「マニュアル通りにすれば誤登録は防げた」などと答弁。山下氏は、リスクを説明せずメリットしか語らない大臣の発信のもとでトラブルが多発していると批判しました。
マイナ保険証トラブル 他人の医療情報37件 窓口で10割負担206人
保団連調査
しんぶん赤旗 2023年5月30日
全国保険医団体連合会(保団連)は29日、マイナンバーカード保険証(マイナ保険証)による医療現場のトラブル調査から、「他人の医療情報がひもづけられていた」ケースが少なくとも37件あると公表しました。20保険医協会・保険医会の会員医療機関から回答を得ました。保団連は重大な医療事故につながりかねないとして「一件たりともあってはならない」と批判。マイナ保険証システムの運用を「中止すべきだ」と訴えました。
この日、保団連は都内で会見し、同日時点でオンライン資格確認を導入した19都府県1432医療機関のうちの約6割(893医療機関)で、トラブルがあったと明らかにしました。
そのうち、一番多いトラブルが「無効・該当なしと表示され被保険者の資格情報が正しく反映されない」(約67%)でした。
オンライン資格確認ができず、「無保険」扱いで窓口負担を10割請求された患者は、同調査の推計で206人いました。保団連によると、新型コロナウイルス感染症疑いで受診した場合、陽性となれば公費負担がある今年9月末までは10割負担で、約1万2千円、10月以降は約6万4千円かかるといいます。
保団連の住江憲勇会長は、マイナ保険証の誤情報問題について、「誤情報の可能性を心配する医療現場に余計なストレスがかかる」などと批判。問題の全容解明・抜本的解消を求めました。また、国会で審議中のマイナンバー制度関連法案の廃案を訴えました。
命綱の保険証なくすな 法案阻止訴え 「反対連絡会」国会前で抗議
しんぶん赤旗 2023年5月30日
(写真)保険証廃止は撤回をと訴える集会参加者=29日、参院議員会館前
労働組合などでつくる「マイナンバー制度反対連絡会」は29日、参院議員会館前で、健康保険証の廃止が盛り込まれたマイナンバー法等改定案の参院での採決を止めようと、抗議の座り込みを行いました。
マイナンバーカード保険証(マイナ保険証)で他人の情報がひも付けされたことに関し、健康保険組合の関係者は、国から被保険者の情報を再確認するよう指導を受けたと述べました。「組合にそれができるだけの体力はない」と強調し、国の対応を批判しました。
国会見学に訪れた児童・生徒を乗せたバスが行きかう中、中央社会保障推進協議会の林信悟事務局長は「修学旅行の時、保険証はコピーで対応できるが、マイナ保険証では、先生は管理できない」と訴えました。
「保険証廃止反対! 機能している命綱を切るな」と大書したプラカードを持参した男性(53)=千葉県松戸市=は「(現行の)システムは機能しているのになぜ廃止するのか」と語りました。
「子どものころに保険証が止まり、医療費を全額払ったことがある」という千葉県鎌ケ谷市の男性(57)は「国民皆保険をなくすかのような動きをなぜやろうとしているのか」と述べました。
参加者らは、スピーチの合間に国会議事堂に向かってコール。「命を守る保険証残せ」「国民皆保険制度残せ」「保険証廃止勝手に決めるな」と訴えました。