植草一秀氏が掲題の記事を出しました。植草氏ははじめにルース・ベネディクトが『菊と刀』で 日本は「恥の文化」 と看破したことを紹介し、「恥」とは世間から笑われることで、日本人が忌み嫌う「恥」は外からの目=「体面」に関わることで、内面の目を重視する「罪」ではないと述べています。
そして末尾において、岸田内閣が強行しようとしている「入管法」は人権後進国を象徴する法改定で、「日本人が本当に『恥』を重視するなら、この愚行を止めるべきであり、日本人が『恥』以上に『罪』を嫌うなら、なおさらこの法改悪を見過ごすべきでない」と述べています。要するに岸田政権はいまや「体面」重視の『恥』の感覚さえも失っているという指摘です。
その他、かねて植草氏が「無意味」と指摘していた「ワクチンパスポート」の廃止が遅きに失したことや、自民党はLGBTQなど性的少数者の人権を守る?法案を国会に提出する方針であるものの、自民党執行部は結局「性自認」を「性同一性」に、「差別は許されない」を「不当な差別はあってはならない」に修正した法案にした結果、「換骨奪胎」だったものがさらに骨抜きにされたと批判しました。
さらに自民党は憲法改定案で、基本的人権の最高法規性を宣言した第97条を条文ごと完全削除し、「公益及び公の秩序に反しない」範囲内でしか認めないことを明記しているのは、大日本帝国憲法が「法律ノ範囲内」でしか「言論著作印行集会及結社ノ自由」を認めなかったのに酷似していると批判しました。
因みに大日本帝国憲法では、「法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス」「法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ」「安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス」「法律ノ範囲内ニ於テ言論 著作 印行 集会及結社ノ自由ヲ有ス」などと、基本的人権に関する事項については悉く制限をつけていました。
平然と150年以上も前に制定された旧憲法に回帰することを愧じない自民党の感覚は時代錯誤(アナクロニズム)そのものです。(文末に関連資料の抜粋を添付しました)
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人権後進国象徴する入管法改悪(植草一秀氏)
植草一秀の「知られざる真実」 2023年5月10日
サミットを目前に控え「恥ずかしい日本」が鮮明だ。
ルース・ベネディクトは『菊と刀』で日本は「恥の文化」と看破した。
「恥」とは世間から笑われること。日本人が忌み嫌うのは「恥」。「罪」ではない。
外からの目を最重視する。「罪」を重視するのは内面の目を重視する結果。体面を失うことを日本人は嫌う。
ベネディクト氏の指摘が正鵠を射るものかどうか。賛否は分かれるだろう。
だが、「恥」を何よりも嫌うという指摘は現実に適合している面が強いと感じられる。
日本はコロナを2類相当に留めおいた。マスク着用も半強制してきた。
ところが世界の潮流はとうの昔に激変していた。コロナの毒性がインフルエンザ並みであることが判明し、諸外国はコロナの取り扱いを変えた。
ワクチンへの対応も激変した。ワクチンの有効性が実証データによって否定されてきた。
ワクチン接種しても感染するし感染させる。ワクチン接種を受けた人がコロナ感染すると免疫暴走が生じ易くなるとの専門家見解も示されてきた。
それでも日本はこの5月までワクチンパスポート制度に固執した。
世界のなかで米国と日本だけが反知性主義対応を続けた。
サミットでマスク強要の姿を世界に晒すことは「恥」だと岸田首相が考えたのだろう。
サミットに合わせてようやくマスク強制が排除された。ワクチンパスポート制度もやっと廃止を決定した。
サミットが日本開催でなかったならマスクもワクチンパスポートも継続されていたと思うと背筋が寒くなる。
G7のなかでLGBTQへの権利保障の法制を持たないのは日本だけ。
サミット開催までの法整備は実現しない。他方、入管法改悪を強行しようとしている。
サミットで日本の人権後進国ぶりがクローズアップされる。
「恥の文化」なら「恥の文化」らしく、「恥」になることをこの機会に改めてはどうか。
「恥」を晒すことをいとわないほど人権尊重を嫌うのか。
LGBTQなど性的少数者の人権を守る法整備について法案を国会に提出する方針が示されている。しかし、その内容は不十分極まりないもの。
サミットに合わせて国会に提出したというアリバイを作ることが主目的と見られる。
法案は提出される見込みだが、自民党執行部は「性自認」を「性同一性」に、「差別は許されない」を「不当な差別はあってはならない」に修正した法案を提出する方針を示している。
もともと「換骨奪胎」だったが、さらに骨抜きにされる。
岸田首相はサミットに向け、日本の後進性をなんとか糊塗しようと躍起だが、実効性のない見かけだけの法律を制定しても意味はない。
自民党は憲法改定案で、基本的人権について
「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたもの」
と明記した第97条を条文ごと完全削除した。(⇒最高法規性 現行条文は文末に)
基本的人権について自民党改憲案は「公益及び公の秩序に反しない」範囲内でしか認めないことを明記している。
大日本帝国憲法が「法律ノ範囲内」でしか「言論著作印行集会及結社ノ自由」を認めなかったのと酷似する改憲案を示している。(⇒大日本帝国憲法の関連条文は文末に)
大日本帝国憲法の「法律ノ範囲内」にある「法律」が「治安維持法」であり、法律違反に対する刑罰として「死刑」が最高刑として規定された。
治安維持法違反で死刑に処された国民は多数に及んでいる。
岸田内閣がこの国会で制定を強行するのが「入管法」。
移民の人権を担当する国連の特別報告者は入管法改定案に対して懸念を表明する書簡を送付している。人権後進国を象徴する法改定。
日本人が本当に「恥」を重視するなら、この愚行を止めるべきだ。
日本人が「恥」以上に「罪」を嫌うなら、なおさら、この法改悪を見過ごすべきでない。
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【関連資料】
第10章 最高法規
第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
大日本帝国憲法(抜粋)
第22条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第28条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由
ヲ有ス
第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス