「マイナンバーカード保険証」で、別人の情報がひもづけられていた事例が7312件もあったという重大事実を岸田政権は今年2月に知っていたにもかかわらず、5月12日まで国会に説明しなかっただけでなく、河野デジタル相に至っては、4月14日の衆院本会議で「マイナンバーカードと健康保険証の一体化にはさまざまなメリットがある」と強調しています。
少なくとも河野デジタル相、加藤厚労相、松本剛明・総務相の3人は、2月の段階で誤登録によるトラブルが多数生じていたことを承知していました。そうした事態を把握しながら〝マイナンバーカードと健康保険証の一体化に伴うリスク″を隠していたとすれば、国会を軽視するもので大問題です。
しんぶん赤旗日曜版5月28日号が取り上げました。
併せてしんぶん赤旗の記事「誤交付・誤登録…トラブル続出 欠陥マイナ 法案直撃 拙速審議に批判 それでも固執の自民」を紹介します。
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マイナ保険証 大欠陥 7300件カードに別人情報 2月に把握 5月まで政府ダンマリ
しんぶん赤旗日曜版2023年5月28日号
「マイナンバーカード保険証」で、別人の情報がひもづけられていた事例が7300件あった-。この重大事実を岸田政権は今年2月に知っていたにもかかわらず、5月12日まで国会に説明していなかったことが編集部の取材で分かりました。健康保険証を廃止し、マイナカード保険証を国民に押し付ける「マイナンパー法等改定案」の今国会成立を狙う岸田政権。同法案のリスク(危険性)を意図的に隠していたとすれば国会軽視の大問題です。
取材班
加藤勝信・厚生労働相や厚労省は5月12日、マイナカード保険証に別人の情報がひもづけされた事例が2021年10月~22年11月に計7312件あることを発表。このうち5件で別人の薬剤情報や医療費情報が閲覧されていました。公的医療保険を運営する健康保険組合などが健康保険証とマイナカードをひもづける際、入力を誤ったことなどが原因とみられます。13日付「読売」は1面トップで大きく報じました。
「マイナンバー法等改定案」はすでに衆院を通過。参院で審議中でした。16日の参院厚生労働委員会での日本共産党の倉林明子議員の質問に、加藤氏は「2月の検討会で(計7312件の誤入力が)公表されたが、その事前の段階で報告を受けていた」と答弁しました。
「2月の検討会」とは、デジタル庁の「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」のこと。2月17日に開かれた検討会の資料に〝異なる個人番号が登録された事例が7300件あった″ことの記載がありました。
検討会の構成員は加藤氏のほかに、河野太郎・デジタル相、松本剛明・総務相の3人。厚労省保険局医療介護連携政策課は編集部の取材に「資料の内容は各大臣に説明している」と答えています。
しかし3大臣は、厚労省が事態を発表した今月12日まで国会や記者会見で説明してきませんでした。それどころか、国会では「マイナンバーカードと健康保険証の一体化にはさまざまなメリットがある」(河野氏、4月14日の衆院本会議)と強調していました。
日本共産党の塩川鉄也衆院議員は「政府はメリットばかり強調して、リスクをきちっと説明していない」(4月25日、衆院地域・こども・デジタル特別委員会)と指摘。事態を把握しながら〝リスク″を隠していたとすれば、国会を軽視する大問題です。
リスク語らず強行図る政府 現行の保険証廃止の必要はない
共産党 伊藤岳議員:「別人の情報をもとに医療行為や薬剤の投与が行われることは生死にかかわる問題です。人的ミスが起きることは厚労省も認めており、マイナカード保険証への一体化は中止すべきです。紙の保険証を廃止する必要はありません。法案の採決を強行することは許されません。」
事実偽る答弁
5月12日の参院地方創生デジタル特別委員会。河野氏は、紙の保険証では誤入力が起きているとして「そういうこと(誤入力)を防ぐ意味でもマイナンバ―カードで多くの方に受診していただくことが望ましい」と答弁しました。
河野氏は前出の検討会で議長を務めており、2月時点で7300件もの誤入力について報告を受けていたはずです。それにもかかわらず、国会では〝マイナカード保険証ならご入力を防げると異なる答弁をしていたのです。
加藤原労相は23日、マイナカード保険証の誤登録問題で、健康保険組合などに点検を要請する考えを表明。〝メリット″ばかり強調し事実を隠してきた政府の姿勢は破綻しています。
同委員会で日本共産党の伊藤岳議員参院議員は「(河野)大臣はマイナ保険証の一体化は現行保険証の誤入力を防ぐためだと言ったが、マイナ保険証こそ誤入力によって別人の情報にひもづくことが明らかになった」(19日)と批判。「マイナンバーカードと保険証の一体化の強行は断じてやめるべきだ」(12日)と協調しました。
誤交付・誤登録…トラブル続出 欠陥マイナ 法案直撃
拙速審議に批判 それでも固執の自民
しんぶん赤旗 2023年5月26日
マイナンバーカードを巡って、コンビニでの住民票誤交付、「マイナ保険証」の情報登録の誤りに続き、公金受取口座とのひも付けでも誤登録が判明するなど、個人情報流出につながるトラブルが続出しています。政府は「人為的なミス」などと火消しに躍起ですが、保険証を廃止するマイナンバー法改定案を審議している国会日程への影響は避けられません。
松野博一官房長官は24日の会見で、「個人情報の保護に関する国民の信頼を損なう重大な事案」だと述べ、自治体が管理・運営するシステムの誤りや人為的ミスが原因だと責任を転嫁。一方、平井伸治全国知事会会長(鳥取県知事)は同日の会見で、「いろいろと事情は言われているが、それは正直理由にならない。もっと緊張感のある対策を根本から考えてほしい」と政府に苦言を呈しています。
マイナンバー法改定案を審議している参院では、野党側が拙速審議に対する抵抗を強めています。立憲民主党の安住淳国対委員長は24日の党会合で、マイナンバーカード問題を「国会終盤に向けて本格的に追及する」とし、関係委員会で集中審議を要求していく構え。日本共産党は、法案審議を直ちに中止し、全面的な事実関係解明を最優先させるべきだと主張しています。
国会の動きを受け、河野太郎デジタル相は来週予定の外遊を急きょ中止し、国会対応に当たるとの見通しも浮上。自民党の萩生田光一政調会長は25日の党会合で「今から後戻りする選択肢はない」と述べ、この期に及んでもマイナンバーカードの利用拡大に固執しました。