2023年5月17日水曜日

知られざるウクライナ戦乱の真実(植草一秀氏)

 日本政府はことあるごとに、他国と協調出来るか否かの基準は、「価値観の共有」が出来るか否かであると公言して憚りません。しかしその価値観というのは「西側の価値観」のことでもっと直接的に言うと「米国の価値観」であり覇権国家の価値観です。
 いま米国という覇権国家の地位が揺らぎつつある中で、改めてそれで本当にいいのかを考える「知性」が求められています。
 植草一秀氏の記事「知られざるウクライナ戦乱の真実」を紹介します。
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知られざるウクライナ戦乱の真実
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年5月15日
ウクライナが善でロシアが悪との図式は欧米が創出したもの。
国際社会でロシアを悪とする主張に賛成する国は、国の数として多いが世界の多数派見解ではない。
2022年3月2日の国連総会緊急特別会合における「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議」に賛成した国は193ヵ国中の141ヵ国、賛成に回らなかった国は52ヵ国。しかし、人口比では賛成国が世界人口の42%、非賛成国が58%だった。
G20で対ロシア経済制裁に加わっている国は10ヵ国(EUを1ヵ国として)、経済制裁を実施していない国が10ヵ国。人口比では制裁参加国19%に対して制裁非参加国が81%(EUを人口最多国スペインの人口で計算)

ロシア=悪、ウクライナ=善は米国が流布しているプロパガンダ。
ロシアよりも悪いのはウクライナと米国であるとの判断に賛同する者は多い。
G7は米国を中心とする欧米のサークル。ここでは「ロシア=悪、ウクライナ=善」の図式が共有される。
しかし、これはあくまでも欧米サークル内での話。事実である保証はない。

ウクライナ戦乱に至る経緯を踏まえれば、最大の悪はウクライナと米国であることが判明する。
ロシアがウクライナでの軍事作戦を拡大したのは昨年2月24日。
しかし、それ以前にウクライナ政府と東部親ロシア地域との戦闘は行われていた。ウクライナ内戦である。
ウクライナ東部の2地域は昨年2月に独立を宣言し、ロシアに対して軍事同盟上の行動を要請した。この要請に基づいてロシアが行動した。

ロシアの側には軍事作戦始動の大義名分がある。問題の端緒は2014年のウクライナ政権転覆。ウクライナのヤヌコビッチ政権は暴力革命によって転覆された。この暴力革命を主導したのは米国である。
ヤヌコビッチ大統領が国外に退避するなかで非合法政府が樹立された。憲法の規定に基づかずに新政府が樹立された。この非合法政府を直ちに国家として承認したのが米国である。
しかし、新政府樹立の経緯等を踏まえれば国家承認されたことが不正であると言える。

ロシアはウクライナ東部2地域の独立宣言を踏まえ、2地域を独立国として承認し、その上で同盟関係に基く集団的自衛権行使として軍事作戦を始動させた。
米国によるウクライナ非合法新政府の承認とロシアによる東部2地域の独立国としての承認は同列のものである。
2014年2月21日、ウクライナのヤヌコビッチ政権とEUは最終合意を成立させた。
年内に大統領選を前倒しで実施することが決定された。この合意でウクライナの国内デモは収束するはずだった
しかし、ウクライナ政府とEUの円満解決に強い不満を抱く国家が存在した。言うまでもない。米国である。
ウクライナとの平和解決を指向するEUをヴィクトリア・ヌーランド米国務次官補は“Fuck the EU”EUなどクソ食らえと罵った。

2月21日にウクライナ政府とEUが平和解決で合意を形成すると、その深夜、2月22日未明に破滅行動が実行された。
米国がウクライナ・ネオナチ勢力を動員し、市民デモ隊およびウクライナ警官29名を狙撃して射殺したと見られている。
この殺戮事件によって民衆が暴徒化し、ヤヌコビッチ大統領が国外退避に追い込まれた。
米国主導で創設された非合法暴力革命政府は直ちに「ウクライナ民族社会」の設立を宣言。
その内容は、1.ロシア語を使用するすべての者からウクライナ民族社会の正当な権利を有するメンバーという地位を剥奪すること、2.彼らを市民権及び政治上の権利において差別すること、などであり、東部ロシア系住民支配地域に対して人権侵害のみならず暴虐行為が展開された
この暴虐行為に東部ロシア系住民地域が抵抗し、ウクライナ内戦が勃発した。
昨年2月24日以降に本格化した軍事衝突はこの内戦の延長線上で発生したもの。
その経緯を詳細に追跡すると、ウクライナ政府と米国の責任が鮮明に浮上する。
事実認識を誤ってはならない。

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