櫻井ジャーナルの掲題の記事を紹介します。記事では、関連して米国/ウクライナ側にとって都合の悪い事柄が列挙されています。
併せてマスコミに載らない海外記事「オデッサ虐殺から9年 欧米の恥ずべき沈黙」を紹介します。
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米国の「大本営発表」を否定する事実を伝えてきたジャーナリストが逮捕された
櫻井ジャーナル 2023.05.08
ウクライナ北東部にあるハリコフ州を拠点に取材していたジャーナリストのゴンサロ・リラが5月5日、SBU(ウクライナ保安庁)に逮捕された。ドンバスには西側からもジャーナリストが入り、取材してきたのだが、その内容はアメリカ/NATOにとって都合が悪い。
昨年2月24日にロシア軍が巡航ミサイル「カリブル」などでウクライナの軍事基地や生物兵器の研究開発施設を攻撃を始めるが、その時点でウクライナ軍はドンバスへ軍事侵攻する準備を進めていた。そこでドンバスの周辺に部隊を集中させていたことからロシア軍の攻撃で壊滅的な打撃を受けたとみられている。
アメリカ/NATOは2014年から8年かけてドンバスの周囲に要塞を築いたと言われたが、戦略的に重要なマリウポリもそういう場所だった。そのマリウポリを占領、拠点化していたのはネオ・ナチを主力とするアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊やアゾフ連隊とも言われる)。内務省に所属する親衛隊の中核だ。ロシア軍が攻撃を始めると住民は人質として使われた。
ジョー・バイデン政権はウクライナでロシア軍が「ジェノサイド」を行っていると主張、それを西側の有力メディアは宣伝したが、解放されたマリウポリ市民は異口同音に親衛隊の残虐行為を告発した。
そうした証言を撮影した少なからぬ映像がインターネットで公表されて世界に人が実態を知ることができたが、アメリカ/NATOはインターネットの巨大企業を使ってそうした情報を削除していくが、一部の映像はインターネット上に残った。
親衛隊などが住民を人質にして立てこもっていたアゾフスタル製鉄所からも住民が脱出、そのひとりであるナタリア・ウスマノバの証言をシュピーゲル誌は3分間の映像付きで5月2日に伝えたが、すぐに削除してしまう。彼女は親衛隊の残虐な行為を告発、ロシアへ避難し、戻る場所はドネツクしかないとし、ウクライナを拒否する発言が含まれていたからだ。
シュピーゲルが流したウスマノバの証言映像は西側メディアにとっても都合の悪いものだった。シュピーゲル誌はこの映像をロイターから入手したとしているが、その前にロイター自身も彼女の証言映像を流していた。それは約1分間の映像で、彼女がロシア軍を批判しているような印象を受けるように編集されていた。
西側の有力メディアはアメリカ/NATOのプロパガンダ機関として機能しているが、その仕事を妨害してきたのが事実を伝えるジャーナリストだ。ドンバスにもドイツ人ジャーナリストのアリナ・リップ、フランス人ジャーナリストのアン-ローレ・ボンネル、カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレット、フランスの有力メディアTF1やRFIのスタッフ、またロシアやイタリア人の記者もいた。ゴンサロ・リラもそうしたジャーナリストに含まれる。アメリカ/NATOはドンバスの現実を伝えるジャーナリストに対する弾圧を強め、ドイツ人ジャーナリストのパトリック・バーブは職を失い、アリナ・リップは銀行口座を接収された。
オデッサ虐殺から9年 欧米の恥ずべき沈黙
マスコミに載らない海外記事 2023年5月 8日
Strategic Culture Foundation論説 2023年5月5日
この恥ずべき沈黙はウクライナの致命的混乱における欧米の犯罪的共謀を隠すために必要なのだ。
今週オデッサにおけるウクライナ・ファシストによる民間人42人の衝撃的虐殺9周年だ。そのほんの数週間前ファシスト政治指導者連中はキーウで暴力的クーデターを実行していた。
オデッサでの残虐行為の野蛮さは言葉で言い表せないが、2014年2月に違法に権力を掌握したNATOが支援するファシスト政権の象徴だった。
重要なことに、そして恥ずべきことに、欧米マスコミや政府は、その恐怖についてほとんど言及しないか、言及したとしても連中は事件を歪曲し、典型的には根拠なく偽情報でロシアを非難する傾向がある。
2014年5月2日、ファシスト・キーウ政権に反対するオデッサの何百人もの抗議行動参加者が政権支持者との激しい衝突に巻き込まれた。ネオナチ右派セクターに属する何千人もの極右準軍組織メンバーがサッカー試合観戦を装って北部から黒海南部の港湾都市オデッサに送られた。
両派間での道路舗装の石や火炎瓶や銃撃が終日続いた。夕方、多数の政権派群衆はオデッサ中心部にあるソ連時代の労働組合会館周囲の反政府抗議行動参加者のテント野営地に焦点を当てた。野営地は女性や子供をもいる平和な集まりだった。キーウのマイダン事件反対の意思を示すため数週間設置されていた。
反政府抗議参加者は、数週間前、いわゆるキーウのユーロマイダン運動で起きたクーデターに反対していた。2月20日、キーウでの狙撃兵による恐ろしい虐殺(後にCIAが支援するファシストに実行されたことが判明)は選出されたヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領政権転覆をもたらした。ヤヌコーヴィチはウクライナ極右が嫌悪するロシアと友好を維持していた。ヤヌコーヴィチ政権は主としてウクライナ南部と東部のロシア系ウクライナ人に強く支持されていた。
2014年2月にキーウで権力を掌握し、今も優勢なファシスト政権は、名目上ユダヤ人のウラジミール・ゼレンスキー大統領にもかかわらず、多くのウクライナ人に最初から反対されていた。彼らは新しい支配者を、選挙されておらず違法と見なしていた。彼らは第二次世界大戦中、自国同胞の大量殺戮でナチスドイツと協力したステパン・バンデラのようなウクライナ人を公然と称賛するネオナチも恐れていた。
クリミア半島の人々が2014年3月の住民投票で、ウクライナから離脱し、ロシア連邦への編入に賛成したのはそのためだ。ウクライナの他の地域では南東ドンバス地域もキーウ政権とその「反ロシア」敵意を拒否した。2014年5月、当時のCIA長官ジョン・ブレナンの支援を受け、ドネツクとルガンスク共和国を称する地域でキーウ政権が、いわゆる対テロ作戦を開始した。当時のアメリカ副大統領は新政権のワシントンの交渉窓口を務めたジョー・バイデンだった。この攻撃は、現在のロシアとの紛争で最高潮に達したウクライナ内戦の始まりと、昨年のドンバスと近隣地域のロシア連邦編入をもたらした。
これが2014年5月のウクライナ状況だった。国は混乱し、民族的、政治的に分裂していた。オデッサなどの都市はロシアと強い歴史的、文化的つながりを持っていた。名高い貿易経済ゆえ黒海の真珠として知られるこの都市は、1795年にロシア皇后のエカチェリーナ大帝に設立された。
キーウで、NATOが支援する暴徒連中が血まみれのクーデターで権力を掌握し、ナチス風松明行列を組織し始めた時、ウクライナの多くのロシア人や他の人々は恐怖を感じた。オデッサはロシア人が多い都市の一つだった。この都市はナチスのSSアインザッツグルッペン(暗殺部隊)や現地の子分による大量殺戮に苦しんでいた。
キーウ政権のファシストが5月2日夜にオデッサの抗議キャンプを標的にした際、約300人の抗議行動参加者が労働組合ビル内に避難した。外の暴徒は焼夷弾で歴史的建造物を攻撃し炎上させた。狙いは内部の人々全員焼き殺すことだった。右派セクターの攻撃者連中が閉じ込められた犠牲者に対して示した憎悪はぞっとするものだった。建物の中の何人かの人々はビルの窓から飛び降りて炎から逃れようとした。彼らの体が地面に激突すると、熱狂的群衆が彼らを殴り殺した。
合計42人が労働組合ビル虐殺で殺害された。攻撃した連中は一人も起訴されていない。キーウ政権は適切な調査の実施を拒否した。
しかし、その日の恐怖は多くのウクライナ人やロシア人にとって転機だった。それは国で権力を掌握した政権の恐ろしい本質と、卑劣なファシストのロシアに対する敵意を明らかにした。
これはワシントンとNATO加盟諸国によって権力の座につけられた政権だ。2014年以来、この政権は武装し、ロシアを侵略し、ロシアとのあらゆる文化的絆を消し去るための戦争機械として構築された。
オデッサでの虐殺は当日の犠牲者のために記憶されるべきだ。しかしそれは今のウクライナにおけるロシアとアメリカ率いるNATOの代理紛争がどのように生じたか説明するのにも役立つので記憶されるべきだ。
その理由から、欧米のニュース・メディアや各国政府はオデッサ虐殺を故意に無視することを選んだのだ。彼らの恥ずべき沈黙は、ウクライナの致命的混乱における欧米の犯罪的共謀を隠すために必要なのだ。
記事原文のurl:https://strategic-culture.org/news/2023/05/05/odessa-massacre-9-years-on-west-shameful-silence/