G7広島サミットは21日に閉幕しました。
NHKによれば被爆者たちの受け止めは以下の通りです、
日本被団協の田中煕巳代表委員は「結果として核抑止に依存しNPT体制を重視するというこれまでと変わらないもので、残念でならない。参加した核保有国たちが核廃絶に向けてどのような努力をしていくかという姿勢くらいは示してほしかった」と述べ、木戸季市事務局長は「核抑止力に依存した会議になってしまったことに怒りを覚える」と話しました。
また田中代表委員はゼレンスキーを招待したことについて、「一方の当事国だけを参加させることは、今の情勢を踏まえるとマイナスの影響のほうが大きいのではないか」とも述べました。
広島県被団協の箕牧智之理事長は、「被爆者との面会が実現した点はよかったものの、どのような話をしたかやどんな展示を見たのかなどは何も明かされないのは残念で、今は風船がしぼんだような気持ちでいる」と話し、「広島ビジョン」については「核抑止を正当化するような内容であり、核兵器禁止条約について触れられていないことについても落胆している」と話しました。
広島の被爆者サーロー節子さんや広島市佐伯区の森下弘さん・切明千枝子さん達も、ほぼ同様の落胆の言葉を口にしました。
植草一秀氏は第1日目の19日のブログで、G7首脳は19日に原爆資料館を訪問したものの訪問の内容は非公表で、G7は1ヵ国も核兵器禁止条約に署名、批准しておらず、矛盾に満ち溢れていると述べ、発出が予定されている核軍縮に焦点をあてたG7初の独立首脳文書「広島ビジョン」についても、「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」との文言が明記され、核廃絶を誓うのではなく「核兵器は役に立つ兵器」という真逆の主張をするものと酷評しました。
二つの記事を紹介します。
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G7広島サミット閉幕 被爆者たちの受け止めは
NHK NEWS WEB 2023年5月21日
G7広島サミットが閉幕したことを受けて、被爆者たちの受け止めです。
日本被団協「これまでと変わらず残念」
G7広島サミットが閉幕したことを受けて、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会は21日午後、オンラインで会見を開き、田中煕巳代表委員は「被爆者たちは核兵器と人類は共存できず、可能なかぎり速やかに核廃絶を目指してほしいとこれまで訴えており、今回の会議で少しでも前進させてほしかったが、結果として核抑止に依存しNPT体制を重視するというこれまでと変わらないもので、残念でならない。参加した核保有国たちが核廃絶に向けてどのような努力をしていくかという姿勢くらいは示してほしかった」と話していました。
木戸季市事務局長は「核廃絶を正面に据えた議論を求めてきたのに、核抑止力に依存した会議になってしまったことに怒りを覚える」と述べました。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領が広島を訪れたことについて、田中代表委員は「ウクライナはロシアによる侵攻を受けている国ではあるが、一方の当事国だけを参加させることは、今の情勢を踏まえるとマイナスの影響のほうが大きいのではないか」と話していました。
広島県被団協 箕牧理事長「広島サミットよかったと思えるよう」
広島県被団協の箕牧智之理事長(81)は、広島サミットを振り返り、受け止めについて、「被爆者の面会が実現した点はよかったものの、どのような話をしたかやどんな展示を見たのかなどは何も明かされず、隠されていることが残念です。今回のG7サミットにとても期待していた分、今は風船がしぼんだような気持ちでいます」と話しました。
また、核軍縮に焦点をあてた単独の首脳声明「広島ビジョン」については、「核抑止を正当化するような内容に感じました。ロシア以外のどこの国も、核兵器を使ったり持ったりしていいということはありません。また、核兵器禁止条約について触れられていないことについても落胆しています」と話しました。
一方で、「10年後に振り返った時に、広島サミットはよかったと皆が思えるよう、首脳たちにはこのサミットをきっかけに核兵器廃絶に向けて具体的な行動を取ってもらいたいと思います」と話していました。
サーロー節子さん「核軍縮の機運が生まれたと思えない」
カナダ在住の広島の被爆者、サーロー節子さんは広島市内で記者会見し、G7広島サミットで核軍縮に焦点をあてた単独の声明「広島ビジョン」について核兵器禁止条約への言及がなかったことに失望したと述べました。
13歳のとき、広島の爆心地から1.8キロで被爆したサーロー節子さん(91)は半世紀以上にわたって世界各国で核兵器廃絶を訴え続け2017年にICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンがノーベル平和賞を受賞した時には授賞式でスピーチを行いました。
サーローさんは広島ビジョンについて「広島の人たちはG7のリーダーたちに広島で開かれる意味を理解して原爆資料館で見て考えこの街で起きたことを理解してほしいという期待が強かったと思うが声明にはリーダーたちの感じた体温、脈拍が感じられず、リーダーの思いが反映されていないと感じた」と述べました。
そのうえで「国際社会には核兵器禁止条約があるが、声明ではひと言も触れておらず驚いた。広島に来て被爆者と会って、資料館に行って考える機会もあったのにこれまで議論されてきたようなことだけしか書けないのかと思うと失望した」と述べました。
さらに、サーローさんは「市民と政府が一緒になって、核軍縮を前進させようという機運が生まれたようには思えない。サミットをお祭り騒ぎで終わらせず核廃絶に向けた機運を続けるようにしてほしい」と訴えました。
森下弘さん「平和や核軍縮に向けた動きに注目したい」
14歳のときに被爆した広島市佐伯区の森下弘さん(92)は、21日午後、自宅のテレビでG7広島サミットの閉幕にあたって行われた岸田総理大臣の記者会見を視聴しました。
森下さんは3日間のサミットについて、「広島でサミットが行われたことは歓迎したいが、G7の首脳らが原爆資料館を訪れて具体的に何を見て、どう感じたのかが伝わってこないのが残念だ」と振り返りました。
そして、核軍縮に焦点をあてた単独の首脳声明「広島ビジョン」については、「ロシアが核で脅しをかけていることを踏まえて核軍縮を目指すことを広島の地で発表したこと自体は望ましいことだが、そのビジョンを核兵器の廃絶に向けた具体的な動きにつなげてほしい。現在の核保有国については保有を認める状態にとどまっているので、もう一歩前に進めてもらいたかった」と話していました。
そのうえで、「ウクライナ情勢から目が離せない中、広島で話し合われた平和や核軍縮に向けた動きについて、各国でどこまで具体的な政策が実行されるのか注目したい」と今後に期待していました。
切明千枝子さん「核廃絶の気配なく残念」
15歳のときに被爆した広島市安佐南区の切明千枝子さん(93)は、3日間のサミットを振り返り「核保有国を含めたG7の首脳が原爆資料館を訪れて核兵器の悲惨さを目の当たりにすることで、核廃絶の糸口になることを願っていたが、その気配がないので残念だ。広島訪問で何か心に響いてこれから核廃絶に向けて一歩でも二歩でも踏み込んでほしい」と話していました。
切明さんは、広島を訪れる修学旅行生などに被爆体験を証言していて、「『まだ言っているのか』とか『聞き飽きた』と言われても諦めずに繰り返し証言しないといけない。G7広島サミットで被爆地、広島に世界の注目が集まったと思う。核を廃絶してほしいというメッセージをこれからも世界中に伝え続けたい」と決意を示していました。
核兵器有用性訴える広島サミット
植草一秀の「知られざる真実」 2023年5月19日
戦争を推進するサミットを岸田首相が主導している。5月19日に広島サミットが開幕した。G7首脳は5月19日に広島の原爆資料館を訪問。しかし、訪問の内容は非公表。矛盾に満ち溢れている。
1945年8月6日。米国は広島に世界で初めて原爆を投下した。たった1発の原爆はこの年の年末までに14万人の広島市民の命を奪った。米軍による大規模民間人虐殺である。
明らかな戦争犯罪。しかし、米国は日本に対して謝罪していない。
原爆資料館を訪問した米国のバイデン大統領が何を語ったのかも明らかにされていない。
世界で広がるムーブメントは核兵器廃絶。核兵器禁止条約は2017年7月7日に国際連合総会で採択され、2021年1月22日に発効した。
核兵器禁止条約は核兵器を包括的に法的禁止とする初めての国際条約。現時点での署名国は92、締約国は68である。G7は1ヵ国もこの条約に署名、批准していない。
各国首脳は広島で原爆資料館を閲覧し、原爆ドームを前に献花したが、どのような見解で閲覧、献花したかが明らかにされていない。
岸田首相が広島でのサミット開催を主張した理由は何だったのか。出身地に錦を飾ることが目的だったのだろう。サミット開催で内閣支持率を上昇させ、衆院解散・総選挙に挑むことが目論まれていると見られる。
広島でのサミット開催を単に政治利用することだけが目的であるように思われる。
核軍縮に焦点をあてたG7初の独立首脳文書「広島ビジョン」発出が予定されている。
その文章に
「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている。」
との文言が明記される。「核兵器は役に立つ兵器」という主張だ。
広島でサミットを開き、核廃絶を各国首脳が誓うなら意味がある。しかし、現実は真逆。
「核兵器は役立つ兵器」とアピールする。
米国が日本で原爆を投下したのは広島だけでない。1945年8月9日には長崎にも原爆を投下した。長崎でも、この年の年末までに7万4千人の命が消し去られた。
2017年8月9日に長崎市の平和公園で開かれた平和祈念式典で田上富久長崎市長は平和宣言を読み上げた。
田上市長は2017年7月の国連での核兵器禁止条約採択を
「被爆者が長年積み重ねてきた努力がようやく形になった瞬間だった」
と讃えたが、条約に対する日本政府の対応について、
「条約の交渉会議にさえ参加しない姿勢を、被爆地は到底理解できない」と批判した。
G7では米国、英国、フランスが核保有国。ドイツとイタリアは核共有国。
核廃絶を訴えるのが日本の責務。ところが、日本政府は核兵器禁止条約に背を向けている。
「核兵器は役に立つ兵器」として核兵器保有を高く評価している。
米国はいまなお日本での2発の原爆投下を正当化している。
そして、このサミットにウクライナのゼレンスキー大統領が参加することが公表された。
ゼレンスキーを会議に参加させ、戦争推進を宣言する。
核兵器推進、戦争推進のG7は開催する意味がない。G7廃絶運動を展開する必要が生じている。
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