緊急事態条項は、戦前の「非常時大権」に相当するもので、内閣が「緊急事態」を宣言すれば内閣に立法権が付与されます。行政機関が立法権を持てば「向かうところ敵なし」で、すべてのことが可能になります(かつてドイツのヒトラーはその条項を利用してあの恐るべき独裁体制を敷きました)
⇒(13.8.3)ワイマール憲法下でなぜナチス独裁が実現したのか
自民党や他の改憲勢力があらゆる甘言を弄して緊急事態条項の導入を成功させようとしているのは、そうした絶対的権力を政権に持たせたいという発想に他なりません。
10日と11日、参院憲法審査会で共産党の山添拓議員と赤嶺政賢議員が、緊急事態条項の導入に反対する論陣を張りました。
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緊急事態条項必要ない 参院の緊急集会を討議 山添氏が強調
しんぶん赤旗 2023年5月11日
参院憲法審査会は10日、憲法上、衆院解散中に内閣の求めで開くものとされている参院の緊急集会について討議を行いました。
日本共産党の山添拓議員は、参院の緊急集会が憲法に規定(⇒54条2項)された理由について、「権力分立を維持し、国民の権利保障を全うし、立憲主義を貫こうと考慮したものだ」と指摘。さらに、ドイツ、フランス、イタリアなどが戦時の「緊急対応」で緊急権を定めている一方、「二度と戦争をしない」と宣言した日本国憲法の下では「戦時対応」に名を借りた緊急事態条項は必要ないとし、「権力分立による権利保障を貫くあり方を追求した結果、国際的にもユニークな緊急集会の規定に結実した」と強調しました。
山添氏は、報道各社の世論調査を示し、岸田文雄首相在任中の改憲について「賛成」35%で、「反対」47%が上回り(毎日新聞)、1年で賛否が逆転したと指摘。コロナ危機やロシアのウクライナ侵略に乗じた改憲議論が重ねられてきたが、「こうした危機を経てなお、改憲は政治の優先課題となっていない」と述べ、憲法を徹底的に生かす政治こそ実現すべきだと主張しました。
立憲民主党の杉尾秀哉議員は、「緊急事態」で国会議員の任期延長を可能にする改憲議論について、「権力の持続化につながる。不要であり危険だ」と述べました。
憲法の根本原理を無視 赤嶺氏 緊急事態条項を批判 衆院憲法審
しんぶん赤旗 2023年5月12日
衆院憲法審査会は11日、憲法54条の参院緊急集会について議論しました。
日本共産党の赤嶺政賢議員は、同条は「国民の自由と権利を奪い、侵略戦争への道を突き進んだ歴史への反省を踏まえたものだ」と指摘しました。
明治憲法下では、政府が緊急勅令や緊急財政処分の制度を国民弾圧の手段に使いました。赤嶺氏は、政府が敗戦後、新憲法に同様の制度を復活させようとしたものの、連合軍総司令部(GHQ)との交渉過程で退けられ、代わりに取り入れられたのが参院緊急集会の制度だと指摘しました。
赤嶺氏は、自民党などが創設を主張する緊急事態条項は「戦争などに際して、内閣による緊急政令や緊急財政処分を可能にし、政府に権力を集中させるものだ」と指摘。「憲法の制定経緯と根本原理を無視し、国会の権能を奪い、国民の権利を制限する憲法停止条項に他ならない」と批判しました。
赤嶺氏は、ロシアのウクライナ侵略などを例に国会議員の任期延長を可能にすべきだとする主張について、「有事の認定という重大な決定に際してこそ国民の判断を仰ぐべきだ」「国民の参政権を奪う任期延長は議会制民主主義の否定だ。衆議院の不存在の場合は、国民から選ばれた参議院の緊急集会で対応すべきだ」と強調しました。
審査会は次回、憲法学者の参考人から、緊急集会について意見を聴取することを決めました。