2023年5月22日月曜日

「G7広島ビジョン」発表 「核抑止」論を公然と 核兵器は「防衛目的」と

 しんぶん赤旗は、G7広島サミットが19日深夜に発出した「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」について、「ビジョンは、ロシアによるウクライナ侵略に関し、核兵器のいかなる使用も許されないと厳しく批判する一方で、「われわれの安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、戦争と威圧を防止すべきとの理解に基づく」と主張し、自らの核保有といざという時には核兵器使用をためらわないことを正当化したものの、核兵器を全面的に禁止する核兵器禁止条約への言及はなかったと批判しました。

 また19日に行われたG7首脳らによる原爆資料館への訪問も、詳細なやりとりが一切明らかにされず、対話した被爆者も1人だけだったことで、世界中の人を失望させたと述べました。

 20日、「G7広島サミットを考えるヒロシマ市民の会」は、広島市内で市民行進を行いました。被爆者ら250人が参加し「“核抑止力”強化を確認することは許されない」とアピールしました。
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「核抑止」論を公然と 核兵器は「防衛目的」「G7広島ビジョン」発表
                       しんぶん赤旗 2023年5月21日
 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)は19日深夜、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を発表しました。ビジョンはロシアによるウクライナ侵略に関し、「核兵器のいかなる使用も許されない」と厳しく批判する一方、「われわれの安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、戦争と威圧を防止すべきとの理解に基づく」と主張。自らの核保有と、いざという時には核兵器使用をためらわない姿勢を鮮明にしました。
 さらに、「核兵器のない世界」の実現を「究極の目標」に位置付け、核兵器の即時廃絶を否定しました。
 議長を務める岸田文雄首相は「核兵器のない世界」を掲げながら、被爆地・広島から「核抑止」固執を発信し、被爆者や市民の願いを踏みにじる恥ずべき内容となりました。
 G7サミットの外交・安全保障に関する会合(同日夕)で、首相は核軍縮・不拡散に関し、「核不拡散条約(NPT)の維持・強化を図ることこそが、『核兵器のない世界』を実現する唯一の現実的な道」だと表明。一方、核兵器禁止条約については一切言及がありませんでした。
 ビジョンは中国の核軍拡について、「透明性」が欠けていると批判。透明性の促進を求めました。


どこが「核なき世界」なのか 「広島出身の首相」名乗る資格はない
                       しんぶん赤旗 2023年5月21日
 「核兵器のない世界」は「究極の目標」―。多くの市民が原子爆弾に焼き尽くされ人間性を奪われた被爆地広島で、主要7カ国(G7)首脳は核廃絶への意志と責任を事実上放棄しました。議長である岸田文雄首相は18日の日米首脳会談で、いざとなれば核兵器を使用する「核抑止」を正当化するにとどまらず、その一層の強化まで確認。「広島開催」をアピールに利用し、自らの核抑止依存を覆い隠す姿勢は決して許されません。

核の増強を促す
 昨年8月、ロシアを含めたすべての核兵器保有国が賛成した核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書案には、NPT第6条の「核兵器の全廃を達成する明確な約束」の履行が盛り込まれています。この点について、19日に発表された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」は、6条の義務を果たすようロシア・中国に求めましたが、同じ核保有国であるG7メンバーの米英仏については一切言及していません。しかも、「われわれ(G7)」の側の核兵器は「防衛目的のために役割を果たす」として正当化しています。
 こんな姿勢では、ロシアや中国、さらに北朝鮮やイランなどが核兵器の放棄に応じるどころか、さらなる核の増強を促すことは目に見えています。
 核兵器を全面的に禁止する核兵器禁止条約への言及もありませんでした。広島ビジョン発表に先立ち19日に行われた被爆者らの記者会見で、涙を浮かべながら核廃絶の緊急性を訴えた被爆2世の中谷悦子さんは、G7成果文書が核兵器禁止条約に触れないなら国民の理解は得られないと指摘。「(国民の願いが)裏切られたら首脳への批判が巻き上がる」と語りました。

世界中の人失望
 「被爆の実相を伝える」として、19日に行われたG7首脳らによる原爆資料館への訪問も、詳細なやりとりが一切明らかにされず、対話した被爆者も1人だけでした。同日の記者会見で、「今日の雨は涙の雨だ」と表現した広島被爆者団体連絡会議の田中聰司さん。「(G7首脳は)資料館でどんな写真を見て、何を思ったのかも一切明らかにされない。1人ではなく何人かの被爆者と対面し、被爆体験とともに被爆者が今どう考えているかしっかり聞くことを期待していた」と落胆の声をもらしました。
 「核には核を」の体制に固執する岸田首相―。核廃絶を現実のものにと願う世界中の人々の失望は避けられません。もはや「広島出身の首相」を名乗る資格はありません。
                                 (石橋さくら)


“ただちに廃絶こそ” 広島で市民行進 被爆者ら訴え
                       しんぶん赤旗 2023年5月21日
 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)が「核抑止」論にしがみつく「広島ビジョン」を発表した翌日の20日、「G7広島サミットを考えるヒロシマ市民の会」は、広島市内で市民行進を行い、「“核抑止力”強化を確認することは許されない」とアピールしました。被爆者ら250人が参加しました
 広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長は、「核兵器は非人道的兵器であり、ただちに禁止し、廃絶しなければならない」と訴えました。
 原水爆禁止日本協議会の土田弥生事務局次長は、国際平和ビューロー(IPB)などの世界の平和団体のメッセージを紹介。G7サミットが、核抑止力論を展開したことを痛烈に批判しました。
 参加者は核兵器廃絶を求めるさまざまな言語で書かれたプラカードを掲げ「核兵器で平和はつくれない」「被爆者の声を聞け」「核兵器禁止条約に参加を」などとコールしながらアピールしました。
 被爆者の女性(79)は、「岸田首相は、核抑止力から脱却していない。ウクライナの戦争で核抑止では戦争は防げないことは証明されました。広島サミットはパフォーマンスだけでした。核兵器がなくなるまで声をあげます」と語りました。