2026年3月30日月曜日

イラン攻撃1カ月 国内避難 320万人以上 レバノンも100万人超

 米国とイスラエルがイランに先制攻撃を行ってから28日で1カ月になります。
 トランプは11月に中間選挙を控え、ネタニヤフは10月に総選挙を控えているので、共にイラン攻撃で大戦果を挙げることは容易であり 選挙の追い風になると見込んで(ネタニヤフは総選挙の6月へ前倒しを考えていたとも)イラン攻撃を始めたようですが、現実はベトナム戦争やイラク戦争と同様の泥沼化の様相を深めています。

 しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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イラン攻撃1カ月 国内避難 320万人以上 レバノンも100万人超
                       しんぶん赤旗 2026年3月28日
【カイロ=米沢博史】米国とイスラエルがイランに先制攻撃を行ってから28日で1カ月。国際法違反の侵略戦争に踏み込みながら「出口戦略」もないと批判を受けてきたトランプ米大統領は、「交渉」を口にしながら軍事攻撃を強めており、イラン側の犠牲者は増え続けています。
 トランプ氏は26日、イランのエネルギー施設への攻撃の猶予期限を10日延期すると発表。他方で米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは同日、トランプ氏が最大1万人の地上部隊を中東に追加派遣することを検討していると報じました。歩兵や装甲車などが含まれるといい、戦争の泥沼化の危険も強まっています。
 イランは、昨年6月と今回の2回も協議途中で攻撃を受けており、二度と戦争や要人暗殺を起こさない保証や賠償などを要求。仲介役を通じた対案提示は行いつつも、交渉には応じないとしています。
 米軍は25日、イランで1万以上の目標を攻撃したと発表しました。イラン保健省によると、死者は約2000人、負傷者は約2万5000人に達しています。
 イラン赤新月社は26日、戦争による民間施設の被害が8万8000件に上ると発表しました。うち住宅は6万6261棟です。医療施設(病院・薬局・保健施設)は289施設が攻撃を受けました。
 イスラエルはイランとの開戦に乗じて、レバノン侵攻を拡大し、レバノン保健省によると、死者は1100人以上に上ります。国境から約30キロのリタニ川の橋を破壊して、レバノン南部を孤立させており、極右閣僚のスモトリッチ財務相は、南部の併合にまで言及しました。

 ロイター通信によると、サレハ国連難民高等弁務官は25日、イランで320万人以上、レバノンでは人口の17%にあたる100万人以上が国内避難民となり、「歴史上かつてない規模」と人道危機を訴えました。
 一方、イランの反撃によるイスラエルの死者は19人、負傷者は2200人以上、米軍の死者は13人、負傷者は約200人です。
 イランによる湾岸諸国への攻撃で41人が死亡しました。


米・イスラエル イラン攻撃1カ月 矛盾噴出・泥沼化の兆候
                       しんぶん赤旗 2026年3月28日
 開戦から1カ月のイラン戦争は、トランプ米政権の無法ぶりが強まる中、長期化、泥沼化の兆候が出ています。米国内での矛盾が強まり、国際的にもベトナム戦争やイラク
戦争と比較する論調が現れています。

トランプ氏無法 米で広がる不満
 米国とイスラエルによるイラン攻撃を巡っては、米国世論は当初から不支持が多数になっています。攻撃開始から力月もたたないうちに泥沼化の恐れが指摘され、政権と国民とのの矛盾が鮮明になっています。
「泥沼には変わりない」-。中東問題専門家のイラン・ゴールデンバーグ氏は、政治外交誌『フオーリン・アフェアーズ』(電子版)23日付でこう指摘し、過去のベトナムやイラク、アフガニスタンと同様に、軍事介入失敗の構図に入りつつあると強調しました。トランプ政権が検討しているといわれるペルシャ湾カーグ島の占拠などは大規模な地上戦や長期戦を生じさせる危険があるとし、「全面的な泥沼へと拡大する前に身を引くこと」を提言しました。
 ヘグセス米国防長官は2日、戦争での民間人犠牲者を減らすことなどを目的とした米軍の交戦規定について「ばかげたもの」だと発言。トランプ氏10日、イランがホルムズ海峡の航行を妨害するなら「国家として再建できなくする。死、炎、怒りが彼らの上に降り注ぐだろう」と脅迫しました。国連憲章や国際法、国際人遵法などを一切無視する姿勢を示しています。

膨張続ける戦費
 ニューーヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ニコラス・クリストフ氏は、一連の論評で「トランプはわれわれをならず者国家へと近づけている」と批判。トランプ政権もイスラエルのネタニヤフ政権も「力の傲慢(ごうまん)さ」の病に侵されており、「トランプの新たな戦争は(ベトナム、アフガニスタン、イラクと)同様に、(米兵の)ずたずたにされた遺体と粉々に砕け散った希望のなかで終わるだろう」と指摘しました。
 ロイター通信が24日に発表した世論調査結果によると、イラン攻撃への支持は35%にとどまり、不支持は61%に上りました。トランプ政権の生活費問題への対応の支持は25%という低さです。トランプ政権が2000億ドル/(約32兆円)もの戦費を連邦議会に要求する一方で、国民はイラン攻撃開始後の原油高騰でいっそうのガソリン高・物価高に苦しんでいることが背景にあります。
 前出のクリストフ氏は、国防総省が発表した、攻撃開始から6日間の戦費をもとに次のような試算を示しています。
 ▽2週間分の戦費があれば、年収12万5000ドル/(約2000万円)以下のすべての米世帯に無償の大学教育を゜提供できる ▽約1時間分で貧困ライン以下の米国のすべての子どもに書籍を3冊無料で提供できる ▽3週間分でトランプ氏が昨年失効させた医療保険制度への補助金を回復できる ▽1日分あれば世界で35万人以上をマラリアから救うことができる。
 クリストフ氏は、イラク戦争のときも当時のブッシュ(息子)政権が当初に示した戦費が最終的には75倍に膨れ上がったとし、国民生活を犠牲にしてイラン攻撃の戦費が増えていくことに懸念を示しました。
 政治評論家のエイミー・ウルター氏は23日、米公共放送(PBS)の番祖で、米国民の圧倒的多数が早期終結を望み、トランプ氏が率いる共和党にとって逆風だと指摘。11月の中間選挙を見据える中で、対イラン軍事作戦が長引くほど、共和党の支持離れが広がるだろうと語りました。

存亡かけた選択
 米女性平和団体「コードピンク」共同設立者のメディア・ベンジャミン氏はネットメディアヘの寄稿(25日付)で、「この無法な暴力の道を進み続けるのか、国際法違反の歴史に終止符を打ち、国連憲章が求める真の外交と平和的共存を受け入れるのか。米国にとって、そして世界にとても存亡をかけた選択だ」と訴えました。   (ワシントン=口昇幸)

ベトナム戦争とイラク戦争想起
 米・イスラエルのイラン攻撃が長期化するなかで、ベトナム戦争やイラク戦争を思い起こさせるとの指摘が出ています。
 2003年に当時のブッシュ米大統領が起こしたイラク戦争に反対したドイツのシュレーダ元首相は25日、南ドイツ新聞のインタビューで、イラン攻撃について「イデオロギーを理由に戦われており、勝利することができない戦争だ。ベトナム戦争を想起させる」と指摘しました。

「欧州はノーを」
 スペインのサンチェス首相は25日の議会演説で、イラク戦争に反対して300万人の国民が立ち上がった「2003年2月15日はこの国が決して忘れられない日だ」と述べました。国民の6%未満の支持しかなかったのに、当時のアスナール首相が米英と共に参戦し「私たちを狂気に引きずり込んだ」、それは「世界にとってベトナム戦争以来の最悪の地政学的惨事だった」と述べました。
 フランスがイラク戦争に反対したときの外相、ドビルパン氏は最近の発言で、イラン戦争はイラク戦争の繰り返しではなく「さらに危険でさらに無謀だ」と厳しく批判しています。
 ドビルパン氏は、イラク戦争に反対したシラク仏大統領がブッシュ大統領にノーと言ったように、今フランスや欧州はトランプ大統領にノーと言うべきだと主張。トランプ氏の始めた戦争は「違法、非合法、無益で危険だ」という欧州の共通のメッセージを出すべきだと述べました。

長期化すると・:
 トランプ政権がイランとの「交渉」を語りつつ大規模な米軍派遣を進めるなどの構図は、ベトナム戦争と似ていると論じるのは英紙ガーデイアンのコラムニスト、ケネス・ロス氏です。
 1969年1月に就任したニクソン米大統領は、「名誉ある終戦」を求めると主張。メンツにこだわり戦争が長期化し、多くの犠牲者を出しました。
 1973年1月のパリ和平協定をはさんで、75年4のサイゴン陥落までの4年間に「ベトナムの人々を爆撃にさらした。この期間に米兵2万人以上が死亡し、ベトナム、カンボジア、ラオスの死者はその何倍にもなった」と振り返りました。   (伊藤寿庸)


「戦争は解放ではなく 私たちを焼き尽くす」米国の無法にイラン市民
                       しんぶん赤旗 2026年3月28日
【カイロ=米沢博史】イラン攻撃から月。戦争を始めた理由をまともに説明できないでいるトランプ政権が、持ち出している口実のつが「体制転換」です。米国とイスラエルは開戦当初から、国際法違反の先制攻撃や指導者暗殺を行いながら、イラン国民に蜂起を呼びかけてきました。
 イスラエルの左翼連合ハダシュのアイーダ・スレイマン国会議員は25日、本紙の取材に対し、「抑圧的な体制からイラン国民を救う」という政府の□実は、国際社会や米国世論のため
の方便と批判しました。
 イランの人権問題を担当する国連特別報告者の佐藤舞氏は16日、「不法な軍事介入を人権問題の解決策と誤認してはならない」と指摘し、即時の武力行使停止を求めました。
 国連憲章2条は国家主権の尊重と武力行使の禁止を定めています。イラン最高指導者ハメネイ師の殺害は、米国やイスラエルも締約国である1973年の 「ニューヨーク条約」が禁じる国家首脳の殺害に当たり、国際犯罪となります。
 それでもトランプ氏は24日、ホワイトハウスで記者団に対し「すでにイランの体制は変化している」と強がってみせましたが、実態はどうか。
 中東メディアのアルジャジーラ25日、テヘラン近郊カラジで1月に発生した政権への抗議デモの参加者の声を伝えました。
 抗議指導者の人は「空爆で市民は分け隔てなくがれきの下に埋まっている。今はどんな抗議にも参加しこない。戦争ですべてが変わった」と語りました。建築学科の女子学生(22)は「1月には『女性、命、自由』と叫んでいたが、今は『空爆に注意』と叫ぶ。戦争は解放ではなく、私たちを焼き尽くしている」と述べました。
 伝統的な反体制派政党のトゥデー党は開戦直後に「専制から国を救う道は戦争の破壊ではなく、国民自身の闘争にある」と表明。7日にはイスラエルや米国の共産党と反戦の共同声明を発表しました。
 どこから見ても無法な戦争は、今も市民に死と苦難をもたらし続けています。