しんぶん赤旗日曜版に掲題の記事が載りました。
衆院選の結果、高市自民党と維新が衆院の3分の2を超える議席を占めるなか、高市首相は改憲に「挑戦」する姿勢を強め、国民投票の実施にまで踏み込んだ発言をしています。
しんぶん赤旗日曜版が高市改憲の何か危険なのか、改憲を止める展望はどこにあるのか、東海大学の永山茂樹教授に聞きました。
永山教授は、自民党の「大勝」には小選挙区制という不平等な選挙制度が有利に働いたなど、いくつかの要因があるものの、政策一つひとつヘの支持ということではない。ましてや選挙中に屋内演説会で一度触れただけの改憲に国民が賛成したということでは全くないと断言します。
自民党は野党時代の12年、「日本国憲法改正草案」をつくりましたが国民の支持を得られなかったので、安倍政権は18年に自衛隊明記、緊急事態条項などの4項目に絞りました。しかしこの4項目の改憲ですら国民の支持を得られませんでした。
自民党は自衛権の中に集団的自衛権が含まれていると主張し、安保法制で集団的自衛権行使は可能としましたが、一定の制約があります。しかし憲法に自衛隊を明記すればその抑制が損なわれることは避けられず、人権や民主主義など憲法に書かれている他のさまざまな価値が軍を理由に制限される危険があります。
「スパイ防止法」などは国民の権利を制約する危険な法律で実質改憲と言えるものなので、明文改憲を絶対に阻止すると同時に実質改憲を止めるたたかいが急務であると述べます。
また、市民による「#ママ戦争止めてくるわ」というSNS投稿が共感を呼んだのも政治を動かす要因になると述べ、国会による条文案の策定や発議をさせないため国民投票になる前に、「国民は9条改憲を望んでいない」という意思を自民党議員も含めて国会議員に伝えていくことが重要で、それが改憲を阻止する力になると指摘します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
高市首相の言う「9条改憲」でどうなる?
米軍と自衛隊が」緒に海外で戦争 武力行使が無制限に
しんぶん赤旗日曜版 2026年3月1日号
総選挙の結果、自民党と日本維新の会が衆院の3分の2を超える議席を占めるなか、高市早苗首相は改憲に「挑戦」する姿勢を強め、国民投票の実施にまで踏み込んだ発言をしています。高市改憲の何か危険なのか? 改憲を止める展望はどこにあるのか? 東海大学の永山茂樹教授に聞きました。 足立裕紀子記者
東海大学教授 永山茂樹さん
ながやま・しげき=1960年、神奈川県生まれ。東海大学法学部教授 (憲法学)
著書に『基礎からつくる立憲主義』(学習の友社、共著)、『改憲問題Q&A
2025』(地平社、共著)など
-総選挙で自民党が「大勝」しましたが?
高市自民党のメディアを使った選挙運動が「成功」し、小選挙区制という不平等な選挙制度が有利に働いたなど、「大勝」にはいくつかの要因があると思います。しかし自民党の政策一つひとつヘの支持ということではない。ましてや選挙中に屋内演説会で一度触れただけの改憲に国民が賛成したということでは全くありません。
-自民党改憲案の柱の一つは憲法に自衛隊を明記するというものです。
自民党は野党時代の2012年、「日本国憲法改正草案」をつくり、国防軍の保持など憲法の全面的な書き換えを狙いました。ところがそれは国民の支持を得られませんでした。そこで安倍政権は18年、自衛隊明記など4項目に絞って改憲を実現しようと考えました。しかしこの4項目の改憲ですら国民の支持を得られませんでした。
4項目とは ▽自衛隊明記によって平和主義を掘り崩す ▽緊急事態条項をつくる ▽選挙制度に合区制度を置かないと決める ▽教育費を無償にするーという四つです。
自衛隊明記は、9条1項、2項の後に「前条の規定は…必要な自衛の措置をとることを妨げず…」という文言を加えた上で自衛隊の保持を書き込むというものです。
自民党は自衛権の中に集団的自衛権が含まれていると主張しています。安保法制で集団的自衛権行使は可能としましたが、一定の制約もあります。自衛隊明記でその抑制が損なわれることは避けられません。自衛隊明記は、米国が世界のどこかで戦争をする時、自衛隊が一緒になって海外で無制限に武力行使することを正当化することになります。
憲法は9条の1項で戦争をしない、2項で戦力を持たないと書いています。つまり軍というのは日本では憲法上の正当性がありません。
ところが自衛隊を明記して憲法上のお墨付きを与えてしまうと、人権や民主主義など憲法に書かれている他のさまざまな価値が軍を理由に制限される危険があります。
-与党の維新の会も改憲案を出しています。
維新の会の改憲案は、平和主義に関しては、9条2項を削除して集団的自衛権を全面容認することや国防軍の明記、軍事裁判所の設置などを主張しています。
高市首相は本来、自民党の「日本国憲法改正草案」の立場ですから、この維新の内容は〝渡りに船″なんですね。ただ自民党はこういう改憲がうまくいかない場合があることもよく知っています。ですから維新案が議論の中に入ってくることは危険なのですが、自民党が「維新の言ったとおりにしよう」というふうにただちに一丸となって9条改憲を進めるとは限らないと思っています。
憲法に反する政治が同時に進行
■増税と社会保障削減で生活破壊
■新たな法律作り国民の権利制限
-改憲について当面の緊急課題は。
改憲には、憲法の文言を変える明文改憲と、憲法の文言は変えないが憲法に反する政治を進める実質改憲があります。明文改憲を絶対に阻止すると同時に実質改憲を止めるたたかいが急務です。
高市政権は、26年度予算案で9兆円超へと膨らませた軍事費を、年内に安保3文書を改定し、国内総生産(GDP)比2%から3・5%などへ引き上げようと狙ってくるでしょう。そのためには増税や社会保障費削減をしないといけなくなる。「スパイ防止法」や「国旗損壊罪」といった国民の権利を制約する危険な法律の制定も予定しています。
こうした実質改憲が私たちの生活を破壊するものだということを多くの市民に訴えていかないといけないですね。
市民の声が改憲止める力
-改憲を止める展望はどこに?
表現の自由の侵害を深刻に考える表現者たちが声を上げ始め、一般市民による「#ママ戦争止めてくるわ」というSNS投稿も話題になりました。思いかえすと、かつて「保育園落ちた日本死ね」というのがありました。生活感覚から発せられた声が政治を動かしたことはこれまでもあります。
今回当選した自民党衆院議員も次の総選挙で再び審判を受けます。「朝日」(2月16日付)の世論調査では、自民党の議席が「多すぎる」と答えた人が自民党支持層でも44%います。先を読むことができる自民党議員にとって脅威ですね。
国民の世論が大きな力を発揮する可能性は常にあるし、そのことは国会議員に対する抑制を促すことになると思います。
参院の存在もあります。法案は参院で否決されても衆院で再議決できますが、改憲案に再議決はありません。
国会で改憲発議をする場合、衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成が必要です。参院の反対が総議員の3分の1以上あれば、どんなに衆院で乱暴な審議をしたとしても、発議はできません。
国民投票になる前に、国会による条文案の策定や発議をさせないため、「国民は9条改憲を望んでいない」という意思を自民党議員も含めて国会議員に伝えていくことが重要です。それが改憲を阻止する力になります。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。