2026年3月12日木曜日

サンデーモーニングでイラン攻撃に至る事実経緯を歪めて伝えた小谷哲男の解説

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 同氏は、対イラン戦争ではトランプが期待した展開になっていないとするとともに、あれだけ拙速に国際法違反の攻撃を始めたのは、当面の「エプスタイン文書の醜聞」から世間の関心をそらすためだったと見ていますが、戦争自体はいずれは米国陸軍による地上作戦か、イラン現体制に対する白旗(攻撃中止撤退)かのどちらかを選ばなくてはいけなくなると見ています。既に中間選挙の予備選も始まっているというのにどうするのでしょうか。
 そしてイランの体制を転覆して液状化させたは、ネタニヤフは間髪を入れずにトルコ攻略に動くだろうと予想し、相変わらずネタニヤフにべったりトランプも、イスラエルのトルコ攻略に手を貸すはずだと見ています

 そんな無法のコンビをあたかも是認している日本の学者やコメンテータは情けない存在というしかありません。世に倦む日々は、TVのコメンテーター役を演じている「小谷哲男の説明は〝アメリカ側から″の攻撃開始に至る経緯の説明であり、アメリカの情報戦を含む虚偽を交えた分析と総括である。小谷哲男はそういう役割と立場を持った〝専門家″なので、公平中立が前提的に期待されるサンデーモーニングの方で、小谷哲男の説明に対して何のチェックもなく素通りさせてしまうと、それが客観的真実に化け、イラン攻撃の経緯・内幕の正しい認識として情報提供されてしまう」と批判します。
 それはその通りなのですが、かつて同番組は安倍政権時代に政府の圧力を受けて、強引なメンバーチェンジを行った歴史を持っているので、その責めを司会者(膳場貴子)一人に負わせるのは酷なことに思われます。
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サンデーモーニングでイラン攻撃に至る事実経緯を歪めて伝えた小谷哲男の解説
                       世に倦む日日 2026年3月10日
アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃の開始から10日が経った。一週間後の 3/7 の時点で、イラン側の死者は1332人に上っている。トランプが4-5週間と言っていた作戦は2週目に入り、ホルムズ海峡は事実上封鎖され、NYの原油先物は一時100ドルを突破した。アメリカの最新の世論調査(PBS)では、54%がイラン攻撃に反対、36%が支持の結果になっている。トランプが期待したところの、イラン民衆による体制転覆の蜂起は起きてない。3/9、暗殺されたハメネイの次男のモジタバがイランの新指導者に選出された。戦況は、騙し討ちの攻撃を受けたイランが、さらに一方的・継続的な猛空爆を受け、ミサイルや海空軍の戦力を失い続けていて、表面上はアメリカ・イスラエルの作戦計画が思いどおりに遂行されている。米似⇒似はイスラエルの略称)が目論見どおりの戦果を挙げている。だが戦局を俯瞰して見ると、事態はそうではなく、むしろトランプの方に不利に展開している

3/8、アメリカの国家情報会議がイラン攻撃の一週間前に、米軍の大規模攻撃ではイランの体制を打倒するのは困難だという報告書を纏めていたという報道が出た。無論、報告書は大統領の指示で作成するもので、トランプの目に入ってないはずがない。トランプとネタニヤフの間で斬首作戦の計画が煮詰まっていたため、CIAと軍の方にも分析をさせたのだろう。体制転覆は困難だと報告が上がっていたにもかかわらず、トランプはネタニヤフの要請に応じてイラン攻撃を決定した。トランプにはそうせざるを得ない理由と動機があったからであり、それはエプスタイン文書の醜聞だ。トランプが当時10代前半だった少女を性的暴行した疑惑があり、その資料の公開に迫られていたため、世間の関心を逸らす目的でネタニヤフの誘いに乗ったのである。つまり、トランプは安保上の明確な目標があってイラン攻撃に出たのではなく、主導者のネタニヤフに追随し、尻馬に乗って作戦を決行させたのだ

アメリカが侵略戦争を始めると、通常は国内で大統領の支持率が上がる。トランプはその一石二鳥の効果も狙ったのだろう。イランの体制転覆は求めないと従来から言っていたトランプが、急に開戦を告げる演説で体制転覆が戦争の目的だと言い、イラン民衆に呼応と蜂起を求めたのは意外だったが、その口上はネタニヤフの口移しに他ならない。今回の戦争の参謀本部はイスラエルにあり、米軍(統参本部・国防総省)にはない。CIAは二股をかけていて、この報告書の件をマスコミに出したのも、アメリカ世論に対するエクスキューズ⇒弁明)の意味で、イスラエルに責任転嫁する意図からだろう。戦争継続中の現在も参謀本部はイスラエルにあり、ネタニヤフとモサド・CIAが情報分析と戦略立案の核になっている。トランプはそこから奏上を受けて指令を下しているだけだ。トランプには軍事の知識がまるでなく、イランの内情や政治構造も理解できてない。無知だからネタニヤフが操るままに踊っている

イスラエルの思惑は、そのままアメリカに地上軍派遣に踏み込ませることであり、イラク戦争と同じパターンで首都に進撃させ、テヘランを陥落させて傀儡政権樹立へ運ぶことだ。イラク戦争を再現させ、米軍を駐留させ、イラクのコピーをイランに作ることだ。親米親欧親似の自由民主体制の新イランなどどうでもよく、イラン辺境部を少数民族が蚕食的に支配し、内部が絶えず内戦で消耗するところの、シリア的なアモルフ⇒流動的な)な液状国家にすることが理想ある。イランから民族的国家的主体性を失わせ、無秩序で無抵抗で極貧の混沌世界に変えることが目標だ。トランプには戦略がなく、ただ中間選挙の体面だけが目的で、それを得るべくずるずると攻撃と挑発を続けているだけだから、一か月後には戦争から抜け出せなくなり、ネタニヤフの計略どおり地上部隊投入を決断せざるを得なくなるだろう。地上作戦か、イラン現体制に対する白旗(攻撃中止撤退)か、トランプはどちらかを選ばなくてはいけなくなる

関連して、テレビに出ずっぱりの田中浩一郎が、イスラエルへの言及で、イランを潰して液状化に成功した後は、次はトルコを標的にして潰しにかかるだろうと指摘した点に注意を向ける必要がある。イスラエルの政権内では公然と論じられているらしい。実際、イスラエル側がそうした野心を隠してない兆候を裏付ける報道も昨年散見されていた。イランが潰されると、中東地域でイスラエルに正論の批判を言う(実力のある)国はトルコ以外になくなる。現在のところ、及び腰ながらもエルドアンが国際社会の秩序の原理原則を言い、イスラエルに対して勇気を出して立ちはだかる砦になっている。NATO加盟国だからそれが可能という条件もあるかもしれない。イスラエルにとっては邪魔で目の上のたん瘤に違いなく、早くイランのように屠って廃墟化したいだろう。イスラエルは中東に自らと対立的な国の生存を許さず、国際社会のルールの遵守を求めて対峙する国の存在を許さないのである。イスラエルのルールは旧約聖書以外にない

おそらく、イランの体制を転覆して液状化に成功した後は、ネタニヤフは間髪を置かずトルコ攻略に動くだろう。エルドアン暗殺を狙い、モサドがCIAと連携してカラー革命の工作を敷き、西側のマスコミでトルコを権威主義国家だと悪罵するプロパガンダを撒くだろう。エルドアンを悪の独裁者に仕立て、ハマス(テロリスト)を庇護したと難癖をつけ、偽旗を仕掛けて軍事攻撃の口実を作るだろう。EU側はそれに反対する姿勢で臨むだろうが、特に強い態度で制止に出るわけでもなく、アメリカ(トランプ)は相変わらずネタニヤフにべったりで、イスラエルのトルコ攻略に手を貸すはずだ。何か新しい理屈を言い立て、米軍をトルコ攻撃に参加させるだろう。おそらく、モサドはトルコのクルド人勢力の調略を進めていて、軍事攻撃と同時にトルコ西部で蜂起騒擾という計画を準備しているに違いない。突拍子もない想像に見えるが、イスラエルにとっては真剣で当然の国家安保戦略であり、必須の将来構想であり、トルコをこのまま放置する図はないのだ

イスラエルがイランの次にトルコを攻撃して潰しにかかる絵は見えている。そして、今の世界情勢と米トランプ政権の実情を見たとき、それがきわめて容易で、可視的な近未来だという懸念も分かる。が、実はこれでは終わらない。誰も未だ言挙げせず、誰も想像に及んでないが、トルコを破壊し蹂躙した後は、次はイスラエルはサウジアラビアを狙うのである。まさかと誰もが仰天するだろうし、アメリカとサウジの結びつきを考えれば、現在は荒唐無稽な空想だろう。だが、イランが潰れて液状化し、トルコが潰れて液状化した中東の地平に残るのは、イスラエル帝国とサウジアラビア王国の二つだけだ。イスラエルには大イスラエルの思想がある。サウジが軍事的に強大化し、ITなど先端技術の経済立国で成長する前途はイスラエルにとって脅威だ。イランやトルコよりも近い場所で、そのようなアラブの大国が出現して大きな影響力を持つ図を容認するはずがない。当然、イランと同様、国際社会から孤立化させる道に導き最後には軍事攻撃で崩壊させる手に出るだろう

さて、日本のマスコミとそこに出演する親米専門家たちは、事実を不当に捻じ曲げて伝えていて、アメリカがイラン攻撃を正当化する論理をば、恰も正確で中立な認識のように仕立てて言説を撒いている3/8 のサンデーモーニングで解説に出た小谷哲男は、アメリカがなぜ軍事攻撃に踏み切ったかという理由説明の部分で、アメリカとイランの核協議が「事実上イランに全面降伏しろという内容だったので、実際には交渉と呼べるものではなかった」と述べた。両国の核交渉が決裂したように説明し、軍事衝突は必然だったという理解と印象に視聴者を導いた。実際の経過は全く違う軍事攻撃の圧力の下、戦争を回避するべくイランはアメリカの要求に柔軟に応じ、濃縮ウランの備蓄をゼロにする妥協案を返している。これはオバマでさえ獲得できなかった満額回答で、トランプにとって成果として米国世論にアピールできる外交結果だった。その提案が来たから、ウィトコフとクシュナーも交渉を決裂させず(形の上では)、3/2 に次回交渉という日程の合意ができていたのである

普通に考えて、濃縮ウランの備蓄ゼロというイラン側の妥協を決断できるのは、最高指導者のハメネイ以外にいない。ところが小谷哲男は、その続きの説明で「ハメネイ師というイランの核開発放棄における最大の障害を取り除いた」と言い、ハメネイ暗殺作戦の正当性を根拠づけた。日本のマスコミ報道では、イランが濃縮ウランの備蓄ゼロを最終提案したという、オマーン外相が証言している交渉事実が全く紹介されない。日本と西側諸国では、ハメネイはイラン核開発に妄執する黒幕という悪評で固まっている。だが、長くイラン情勢を見てきて観想し確信するのは、ハメネイは一貫して核武装に否定的で、アフマディネジャドなど強硬派を抑える位置に立っていたという指導者像だ。穏健派というより聖職頂点の国家元首としてバランスをとってきたと言うべきだろうか。青年期からの哲学思想がヒロシマ・ナガサキを忌む(その意味では素朴な)反核平和主義だったのだろう。ハメネイはホメイニとは対照的な個性の弱い、押し出しの弱い、神輿に最適なイラン体制の指導者だった

小谷哲男の説明は、アメリカ側からの攻撃開始に至る経緯説明であり、すなわち、アメリカの情報戦(ウソを塗したこじつけ)を含む分析と総括である。小谷哲男はそういう役割と立場を持った”専門家”なので、本人はそのエクスキューズができるし、その意味では、本人の責任は半分は阻却可能だろう。問題は、公平中立が前提的に期待されるサンデーモーニングの方である。TBSの看板として信頼性の高い報道番組の放送で、小谷哲男がかく説明し、それに対して何のチェックもなく素通りさせてしまうと、小谷哲男のナラティブが客観的真実に化け、イラン攻撃の経緯・内幕の正しい認識として情報提供されてしまう。イランとアメリカの核協議が決裂していたという認識になり、ハメネイが核開発に執着する悪魔軍団の頭目だったという認識になる。どちらも誤りだ。誤りだが、番組のブランド力で通念化してしまう。サンデーモーニングでこの問題をどう解説するか、視聴者は関心を持って注目していた。NHK以上に信頼度が高く、この番組での整理と言説が日本の標準になる

最高指導者がハメネイでなければ、イランはとっくに核実験まで進んでいただろう。ミアシャイマーも同意見を言っている。今回の小谷哲男の件はデマゴギーだと批判されて当然だが、責任はサンデーモーニングの番組側にある。率直に責任者を指さすなら、膳場貴子が最初からこの小谷哲男のストーリーで頷いて経緯概要を纏め、差配がされ、スタッフの手で構成と編集がされたのだろうと推測する。膳場貴子の頭の中に、ハメネイはイラン核武装を主導した悪の巨魁であり、核に固執したから暗殺と攻撃という因果応報を受けたのだと短絡する思考回路の基礎があるのではないか。アメリカと対立するイランは、自由と民主主義を否定する悪しき権威主義国家だと決めつけるナイーブな固定観念があり、国際社会から排斥されてもやむを得ないとつき離す視線があるように窺われる。長い時間かけてCIAの工作で醸成されてきたイランとハメネイの悪性表象を、膳場貴子も鵜呑みにしており、アメリカを絶対視するリベラリズムの正義に依り、価値判断自由なジャーナリズムの立地を得られないのだろう

そこにはまた、ジェンダー主義の問題が介在しているに違いないが、紙幅もないのでその考察は次回以降にしたい。誰もその急所に触れないのは、公共空間に禁忌と思想拘束の掟があり、迂闊に言論の自由を行使して糾弾の目に遭うのが恐怖だからだろう