海外記事を紹介する「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。
「イランはすでに勝った」という現在完了形の表現は著者の確信に基づいています。それは決して著者の「願望」というようなものではなくて、客観的な諸事実がそれを指向していることを、著者は懇切に説明しています。ご一読下さい。
トランプは中間選挙が有利に運ぶことを目指して、国民の輿望を担うのではなくてイスラエルに迫られるまま独善的にイラン攻撃を始めました。しかしいま、その費用32兆円の支出を議会に求めているということです。何とも理解の及ばない話です。
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イランはすでに勝った
耕助のブログNo. 2853 2026年3月28日
Iran has already won
イランがホルムズ海峡を支配し続ける限り、米帝国の「最後の戦争」は「Shock and Awe(衝撃と畏怖)」から「Shocking and Awful(衝撃的に悪い)」になるだろう
Hua Bin
「自由世界」の「リーダー」で、世界で「唯一の」超大国が完全に精神をやられていくのを目撃するのは見ものである。息を呑むようなトランプの勝利宣言からわずか3週間後、彼はいつもの支離滅裂さを超えて完全に頭がおかしくなった。
トランプの脳を蝕んでいるのは戦場の混乱なのかそれとも単に自分が何を話しているのか全く分かっていないのか疑問に思う。
– トランプは1週間前、戦争は「ほぼ完全に終わった」と宣言した。それと同時に地上侵攻のためだとして日本とカリフォルニアから海兵隊遠征部隊を湾岸地域へ派遣している。
-トランプは金曜日、イランに地上部隊を派遣していないと述べたが、こう付け加えた。「もし派遣していたとしても、君たちには教えない」。
– トランプは戦争開始1週間でイランの防空網が「100%壊滅した」と発表した。しかし2日前、米空軍の至宝であるF-35が撃墜された。
– トランプはイラン軍は「終わった」とか「完全に殲滅された」と繰り返し主張したが、ドローンやミサイルは依然としてイスラエルや湾岸地域の標的を攻撃し続けている。
昨日時点で、標的はインド洋のディエゴ・ガルシアにある米英共同基地にまで及んでいる。
– トランプはまた、ホルムズ海峡の開放は「単純なこと」だと言ったが、安全な航行を確保するために米軍艦を派遣することを拒否している。
彼は他国に協力を求めたが、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、日本といった従属国はすべて拒否した。興味深いことに、トランプはイスラエルにはホルムズ海峡を開くための艦船派遣を一度も求めなかった。その関係性において誰がボスなのかトランプは分かっているのだろう。
トランプの要求の中で最も衝撃的で愚かなのは、北京に対し、ホルムズ海峡を開放するために海軍を派遣するよう求めたことだ。
戦争開始当初、イラン侵攻によって中国のエネルギー供給を締め上げるというトランプの「見事なチェスの一手」を称賛していた『Fox“ニュース”』のコメンテーターたちにとって、必死に北京に支援を要請したことは顔面への平手打ちに等しい。そのばかばかしさは笑えるほどだ。
前回のエッセイで私はトランプが戦争を終結させるために習近平国家主席に介入を懇願すると予測した。彼はホルムズ海峡問題での救済を要請することで、その予測を上回る行動に出たのだ。
トランプは現実との接点や理性を完全に失っている。中国船舶はホルムズ海峡を安全に通過できるし、イラン産原油は中国へ流れ続けている。さらにイランは人民元建て取引の安全な通行を許可すると発表した。
そもそも中国はイランの封鎖の影響を受けておらず、この違法な戦争の間接的な標的でもあるのに、なぜわざわざ火中の栗を拾うような形で米国を救う必要があるというのか?
トランプは正気を失ったのか、それとも自分の頭とお尻の区別もつかないのか?
現実は、イランはすでに戦争に勝っている。
爆弾は降り注ぎ続けるだろう。双方は互いにミサイルやドローンを撃ち合い続けるだろう。米海兵隊はハルグ島への自殺的な上陸作戦を敢行するかもしれない。
しかし、実質的に米国はすでに戦争に敗北した。
なぜなら、戦争の目的は政治的目標の達成にあるからだ。
米国の戦争目的は政権交代である。トランプの誇張した言い方だとそれは「無条件降伏」であり、「次期指導者は私が指名する」というものだ。
それが実現する可能性はゼロだ。実際、戦争が終わればテヘランはさらに反米的な政府が統治し、家族を抹殺され米国とイスラエルに対する根深い憎悪を抱く最高指導者が率いることになるだろう。
たとえUSrael(造語⇒米国+イスラエル)がさらに多くのイラン指導者を殺害できたとしても、殺戮によって傀儡政権を樹立することはできないだろう。
政権交代が不可能となった今、米国の戦争目的はホルムズ海峡の確保に変った。
この変化だけでも米国はすでに戦争に負けていることがわかる。なぜならホルムズ海峡は戦争前から開かれていたからだ。本質的に米国は、単に戦前の現状に戻すためだけに戦争を続けている。
そして、たとえこの控えめな目標でさえ、地上部隊を派遣するほかないため数千人の米兵の犠牲を払わずに達成することはまずあり得ない。
そしてもし米国が地上侵攻に踏み切れば、イランの計画では紛争を消耗戦へと変え、米軍の兵員と物資を徐々に消耗させ、我々は「ベトナム戦争2.0」を目の当たりにするだろう。
長期の消耗戦が現実になれば、ベトナム戦争の時と同様に中国とロシアが米国に対抗してイランへの支援を強化するだろう。
戦争の成功は誰が最も多く爆弾を投下したか、あるいは最も多く人を殺したかで決まるものではない。もしそうなら米国はベトナム戦争で勝利し、ドイツはソ連との戦争に勝利していただろう。
米国がベトナムに投下した爆弾の量は第二次世界大戦中に投下された全爆弾の量よりも多かった。軍人と民間人を合わせて300万人が死亡した。最終的に、米国は戦争に敗れた。
イラン戦争のリトマス試験紙はホルムズ海峡を誰が支配できるかにかかっている。あらゆる指標が、イランがその海域に対する支配権を維持し続けることを示唆している。
米国防総省は現在、トランプが戦争計画について通知すらしなかった議会に対し、2000億ドル(⇒約32兆円)の緊急戦争資金を要求している。
国防総省がこの2000億ドルをどれほど長く持たせようとしているのかは分からない。
しかし、この数字を文脈に照らし合わせてみると、これはイランの年間国防予算の25倍、ロシアの2025年予算(全面戦争時)の125%、そして中国の年間支出の80%に相当する。
2025年のイランのGDPは3410億ドルである。
CSISによると、戦争開始初週の米国側の戦費は1日あたり約20億ドルだった。
https://www.theguardian.com/world/ng-interactive/2026/mar/19/us-iran-war-cost
しかしいくらお金をつぎ込んでも問題は解決しない。紙幣は印刷できても増強能力や弾薬は印刷できないのだ。予想通りイラン戦争は北バージニア州の防衛関連企業が別荘や豪華ヨットを購入するためのまたしても納税者からの施し物に過ぎない。
それは米ドルと呼ばれる金融ポンジ・スキームの中心にある38.8兆ドルの国家債務にきれいに上乗せされることになるだろう。
米国の有権者が苦痛を耐え忍ぶ能力のデフォルトのバロメーターであるガソリン価格は、1ガロンあたり2.9ドルから3.9ドルに上昇した。
驚くべきことに、海外戦争に関する社会の関心は常にガソリン価格への影響に集中している。残虐行為の合法性や道徳性には決して向けられないし、国家全体へのコストについても同様だ。
究極の皮肉な展開はトランプ政権はガソリン価格を下げるため、イランとロシアの石油に対する制裁を解除しようとしている。
トランプは、イランに対する無謀な戦争の最中にイランの財政を崩壊させるどころか、むしろ支援しているのだ。
悲惨な地上侵攻から遺体が大量に米国へ戻り始めれば国民の戦争への熱意は消えていくだろう。
戦争において痛みに耐える能力は、痛みを負わせる能力よりもさらに重要だ。
米国国民の痛みに耐える能力は極めて限られていることで知られている。したがって、時間はイランの味方である。
次に何が起こるのか?
戦略的な観点からはイランがすでに勝利していることは明らかだが、戦争は続き、おそらくエスカレートするだろう。その波及効果を我々はまだ十分に把握できていない。
交戦当事者が次に何をするかについては疑問が残る:
– イラン: 長期戦を継続するために、ミサイルやドローンといった兵器をどれだけ保有しているのか?エネルギーや食糧インフラへの爆撃は、政権の安定に影響を与えるか?イスラエルへの痛手を最大化するため、イスラエルの核兵器や海水淡水化プラントなどの重要インフラをどこまで攻撃するつもりなのか?
– 米国: 防空迎撃ミサイルはいつ枯渇するのか?屈服して撤退するまでにどれだけの犠牲者が出るのか?ガソリン価格、インフレ、株式市場の暴落に対する国内の痛みの閾値はどこにあるのか?「勝利」したかのように見せかけるための体裁を整えつつ、どうやって撤退できるのだろうか?
– イスラエル: いつ防空能力が尽き、イランのミサイルやドローン攻撃をされるままになるのか?死傷者や財産の破壊に対するイスラエル国民の痛みの閾値はどこにあるのか?「サムソン・オプション」の教義に則り、核兵器に訴えることになるのか?
イスラエルの戦争の目的は米国とは異なる。その主な目標はイランを可能な限り破壊し、同国を弱体化させ、理想的には分裂・解体させることだ。イスラエルは統治者が誰であれ強大なイランを望んでいない。
また、ラリジャニのようなイランの潜在的な交渉担当者を次々と排除しており、米国が停戦を実現する権限を持つ話し相手がいなくなるようしている。
イスラエルの代わりに米国にイランと戦わせる最後のチャンスである可能性が高いだけに、イスラエルの利益は戦争を可能な限り長期化させ、米国を戦線に留めておくことだ。
トランプが完全なユダヤ人の家来(シャボス・ゴイ)であることを証明している以上、米国が撤退できるかどうか、そしてその時期を決めるのはイスラエル側となるだろう。
– GCC諸国: 湾岸諸国が戦争に加わることはないと私は予想している。彼らの軍事力は微々たるもので、首長たちはイランを恒久的な敵に回す余裕がないからだ。
GCCは事実上の米国植民地としてイランが与える痛手をそのまま受け入れることになるだろう。冷厳な現実とは、強者は手に入るものを奪い、弱者は耐えなければならない苦痛を背負うということだ。
古いアラブの諺「噛み付くことのできない手には、口づけをせよ」。したがって、戦後、彼らは地域で支配的な立場にあるイランと共存する術を学ぶことになるだろう。
GCC諸国に対する疑問はこうだ。戦争が終わったら彼らは米軍基地を追い出し、他の安全保障パートナーを求めるだろうか?戦前の安全と繁栄というバブルを、彼らは再び取り戻せるのだろうか?
– その他の国々:この戦争は、米国の裏切りと米国力の限界について、彼らに何を教えるだろうか?米国の覇権が衰えゆく中で、彼らはどのような代替的な安全保障体制を追求しなければならないだろうか?代替エネルギー供給をいかに確保し、湾岸産石油・ガスへの依存を断ち切るのか? 避けられない石油ドル体制の終焉は、彼らの金融・経済モデルにとって何を意味するのだろうか?
戦争の終結時、イランが西アジア最強の勢力として台頭するのは確実だろう。ホルムズ海峡の通過を許可するかどうかを決定する立場にあるため、中東のエネルギー供給を事実上支配することになるだろう。
米国は結局、自滅的な結果を招き、世界覇権国としての信頼をすべて失うことになるだろう。世界は皇帝が裸であることを知ることになるのだ。
https://huabinoliver.substack.com/p/iran-has-already-won
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。