2021年4月29日木曜日

29- “批判逃れ”に必死の吉村知事が遂にスリカエの私権制限に言及

 吉村・大阪府知事は23日の会見で、「いまコロナに罹患したら適切な治療を受けられない状況にある」と述べておきながら、記者からの「医療崩壊を招いた責任についてどう思うか」という質問には、「僕自身が『医療崩壊だ』と言うことではないと思っている」と理解不能の抗弁をしました。そして現行の制度では十分に対応できないとし「個人に義務を課す法令が必要だ」と言い出しました。相変わらず絶対に自身の責任を認めようとはしません。

 この吉村知事の発言に対して、兵庫県明石市の泉房穂市長が「(病床)確保に約1年間努力をしてこなかった知事のせいだ」「病床が確保できていないのに、私権制限はやってはいけない。政治家の責任放棄で、失格だ」「吉村知事は有害だ。辞めてほしい」と厳しく批判したということです。まさに泉房穂・明石市長のいうことに尽きています。
 スペイン風邪以降百年ぶりの災難と言われている新型コロナの渦中に、ナント「都構想」の住民投票を企画してそれに力を傾注した挙句、住民投票でそれが否決されると、今度はその結果をないがしろにする府市の事実上の一体化「広域一元化」条例成立を画策し、与党多数の議会で制定させました。
 そのうえちょっと新型コロナが治まりかけると、すかさず公立病院に病床削減を指示しました。すること為すことが呆れる事柄の連続で、そんな人間がどの口で私権制限を主張するのかとても理解できません。ナチスドイツの例を引くまでもなく、国家の緊急事態条項による憲法の無視と私権制限こそは絶対にやってはならないことで、弁護士の資格を持っているにも関わらずなぜ軽々しく口にできるのか ・・・ という話です。
     ⇒(13.8.3)ワイマール憲法下でなぜナチス独裁が実現したのか
 LITERAが取り上げました。
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吉村知事が“批判逃れ”に必死!  明石市長への反論では病床問題をスルーし私権制限にスリカエ、援軍の橋下徹と宮根誠司は“同情作戦”
                             LITERA 2021.04.28
 本日28日の新規感染者数が1260人となり、過去最多を更新した大阪府。重症病床の使用率が141.1%というだけでなく、看護師のみならず呼吸器や麻酔薬も足りないという状況で、深刻さは日に日に増すばかり。さらに本日からはがん治療を専門におこなう大阪国際がんセンターもICUをすべてコロナ専用病床に切り替え、一部手術が延期されるという。
 だが、こんななかにあっても吉村洋文知事はテレビ出演をつづけ、25日に出演した『Mr.サンデー』(フジテレビ)では「誰かが(ウイルスを)家庭に持ち込んだら、だいたいその家庭内感染は一家全滅みたいな状況」などとコメントした。
「家庭に持ち込んだら一家全滅」って、いま大阪では「自宅療養」ならぬ「自宅放置」の状態となっている患者が1万人を突破しており、自宅内で二次感染が起こっているのが現実だ。また、SNS上では大阪府内で家族を相次いで亡くした人の悲痛なツイートも投稿されている。にもかかわらず、吉村知事は「一家全滅」などと口にしたのである。「一家全滅」と言ったあと、すぐに「全滅というのは全員感染(という意味)」だと言い直していたが、こうした無神経な言葉が出てくること自体、神経を疑わざるを得ない。
 さらに、23日におこなわれた会見では、「いまコロナに罹患したら適切な治療を受けられない状況にある」と自ら述べておきながら、記者からの「医療崩壊を招いた責任についてどう思うか」という質問には「僕自身が『医療崩壊だ』と言うことではないと思っている」などと抗弁。「治療を受けられない」という事実こそ医療崩壊している証拠だというのに、相変わらず自身の責任を認めようとはしないのである。
 いや、この23日の会見で吉村知事は、責任逃れをするばかりか、ついに府民や国会に責任転嫁まではじめた。現行の制度では十分に対応できないとし「個人に義務を課す法令が必要だ」と言い出した件だ。
 おい。感染力が高い変異株の存在を無視して前回の緊急事態宣言を前倒し解除の要請をおこない、挙げ句、病院に重症病床を減らす要請まで出していたのは、一体どこのどいつだ。しかも、現行の制度でも首長として医療提供体制や検査体制を強化することは十分にできるのに、それをおろそかにし、この間、力を注いでいたのは「都構想」住民投票の結果を骨抜きにする「広域一元化」条例の制定だ。にもかかわらず、職責を果たすこともせず医療崩壊状態に陥ると、法制度の問題にすり替えて「私権制限」を言い出すとは、出鱈目にも程がある。

明石市長の批判「病床が確保できていない」という部分をスルーして「私権制限」問題にすり替えた吉村知事
 この吉村知事の発言に対しては、兵庫県明石市の泉房穂市長が「(病床)確保に約1年間努力をしてこなかった知事のせいだ」「病床が確保できていないのに、私権制限はやってはいけない。政治家の責任放棄で、失格だ」「吉村知事は有害だ。辞めてほしい」と厳しく批判をおこなったが、まさにそのとおりとしか言いようがない。
 しかし、泉市長による、このぐうの音も出ない正論に対しても、吉村知事は「私権制限については、僕はやっぱり議論すべきだと思う」と言い、こう噛み付いたのだ。
「(日本では私権制限の議論が)タブー視されているが、諸外国では感染を抑えるためには一定程度、個人の自由は制限する必要はあると。(中略)ここを僕はしっかりと議論すべきだと思う」
「私権制限はしないという前提でいまきているが、本当に感染症対策として、社会の安全を守るために適切なのかということを、きちんとやっぱり逃げずに議論すべきだ」
 泉市長が批判したのは、「病床確保」という知事の仕事もやらずに私権制限を言い出すなどもってのほかだ、ということだったのに、吉村知事は病床確保という自身の責任問題はすっ飛ばして「私権制限の議論がタブー視されている」などと言い、「個人の自由を制限することを逃げずに議論すべき」と私権制限の是非に話をすり替えるのだ。そういうところが「政治家の責任放棄」「有害だ」と指摘されているというのに、である。
 しかも、この吉村知事の醜い話のすり替えに援軍が動き出した。言わずもがな、吉村知事の後ろ盾である橋下徹氏だ。橋下氏は自身のTwitterアカウントにこんな投稿をおこなっている。
〈巨大都市圏における感染抑制は、どこまで国民の自由を制約できるかによる。飛沫感染対策をもっと義務化すべきだった。キャパシティコントロールを義務化すべきだった。医療マネジメントを法整備すべきだった。これら有事対応の法整備の欠如が失敗の最大の原因。〉
 まったくよく言うよ、としか言いようがない。「失敗の最大の原因」は、昨年の第1波で橋下氏らが「PCR検査抑制」論をさんざん喧伝したことにはじまって、この国が「検査と隔離保護」という感染症対策の基本のキの体制づくりをいまだに強化・徹底できていないことだ。しかも、大阪の惨状については、橋下氏が大阪府知事・市長時代におこなった公立病院や保健所、医師・看護師などの病院職員、保健所など衛生行政にかかわる職員を大幅に削減するという「医療・福祉の切り捨て」政策の影響も非常に大きい。
 なのに、そうした自身の責任を振り返ることもなく、問題をすり替えて「私権制限が必要だ!」と叫ぶ。やっていることは吉村知事とまったく同じではないか。

橋下徹が「しんどさが痛いほど伝わってくる」と同情作戦 しんどいのは治療を受けられない大阪府民だ
 しかも、橋下氏は吉村知事と一体化して自身の責任逃れを正当化しようとしているだけではない。
 たとえば、プレジデントオンラインで配信された自身のメールマガジン記事では、吉村知事が前回の宣言解除を前倒しして要請したことや医療逼迫への批判が強まっていることに対し、〈思いっ切り言い返してやるのも一つの手だ。僕はこれを多用していた(笑)〉などとアドバイス。いまの大阪の医療体制は「(笑)」などと書けるような状況ではなく、橋下氏が事態の深刻さをまるで理解していないことがよくわかるが、さらに、吉村知事にこう同情を寄せるのだ。
〈吉村さんのやつれ気味の表情をテレビで見ていると、そのしんどさが痛いほど伝わってくる。連日連夜、府庁内では協議、会議の繰り返しなんだろう。〉
「しんどさが痛いほど伝わってくる」って、いま本当にしんどい思いをしているのは、入院すべき病状でも治療を受けられない患者やその家族、人手も人工呼吸器も足りないなかで奮闘する医療従事者や救急隊員たちのほうだ。そして、こんな惨状を生んだのは誰なのか、その責任が問われているというのに、橋下氏は“吉村知事はやつれながら頑張っている”と強調し、吉村知事に同情が集まるように誘導しようというのである。
 下劣としか言いようがない、橋下氏が打ち出した「同情」作戦。しかも、これに丸乗りしているのが、メディアだ。
 実際、25日に吉村知事が出演した前述の『Mr.サンデー』では、司会の宮根誠司が “厳しい質問をする”などと吉村知事に宣言していたが、これも「矢面に立たされるやつれ気味の吉村知事」を演出するための茶番だったのはミエミエ。現に番組では、厳しい質問どころか、宮根が「知事はテレビ出るたびに最近叩かれてるんですけど、大阪はお金がないから正直、テレビ出て知事がしゃべるしかないんですよね」と言い出し、テレビに出まくる吉村知事をフォローする始末だった。
 
 責任逃れに必死の吉村知事に、吉村知事と一体化して今度は「同情を誘う」作戦に出た橋下氏とメディア。この歪な共犯関係がまかり通っていることが、反省もないまま、救えたはずの命が救えないという大阪のひどい状況をつくり出しているのである。 (編集部)

2021年4月28日水曜日

コロナ死者数1万人超え 自粛をお願いするだけの政府の無策

 日本における新型コロナの死者が1万人を超えました。新型コロナの感染状況をいち早く世界に発表しているWorldometerが26日に発表した数値を、東アジアを中心とする各国と比較すると下記の通りです(「くろねこの短語」掲載の古賀茂明氏26日ツイッターより)。

 日本の数字はダントツのトップですが、欧米を含めて他国は収束に向かいつつある中で、古賀氏が言う通り、日本については今後更に大拡大するであろう「途中経過の数字」に過ぎません。

 

   100万人当たりの死者数(単位:人)

 

ベトナム

0.4

香  港

28

 

台  湾

0.5

オーストラリア

35

 

タ  イ

2

韓  国

35

 

中  国

3

マレーシア

44

 

シンガポール

5

日  本

79

 

ニュージーランド

5

 

 

 

      Worldometer (4月26日更新)

 第1波の「収束時」には日本を含めて東アジア一帯は欧米に比べて桁外れに少なく(その要因は不明で「ファクターX」と称されています)、当時の安倍首相はWHOから評価されたと大見得を切ったのでした。
 東アジアではその傾向は基本的に維持されている中で、日本だけが突出して悪化している理由は言うまでもなく菅政権の無為無策と間違った政策です。

 大阪圏を始め首都圏の1都3県がこれから感染がさらに拡大に向かう中で、日本五輪・パラ委からは「看護師約500人の動員要請」が出されました。しかしそれが無理難題であるのは誰がみても明らかです。
 とはいえ日本五輪・パラ委としては開催する以上は、選手や関係者の感染防止や治療に最善を尽くす義務があります。五輪実行が使命である機関としてはそうするしかない訳で、そうした二律背反に陥っている実態を見て、五輪・パラをどうすべきかを決めるのが政権の役割の筈です。
 しかしここでも無為無策のままで五輪・パラ開催という最悪の事態に向かう雰囲気です。全く何の取り柄もない政権です。
 くろねこの短語のブログを紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国内のコロナ死者数が1万人超え・・・自粛のお願いに縋るだけのコロナ対策の大失敗!!&医療体制逼迫の中、「看護師約500人の動員要請」する五輪組織委の何様のつもり!!
                       くろねこの短語 2021年4月27日 
 新型コロナウイルスによる国内の死者が1万人を超え、なんと中国のほぼ2倍で、アジアではダントツなんだね。コロナに打ち勝つどころか、こてんぱんに叩きのめされちゃってるわけだ。それもこれも、PCR検査をおざなりにして、自粛のお願いに縋るだけのコロナ対策のせいなんだね。
 韓国は早いうちから無症状、軽症、重症などの段階別に隔離政策を取ってきてたんだが、日本はそんな韓国から何も学ぼうとしないどころか、コロナ蔓延という負のイメージばかりを喧伝していたんだから、何をかいわんやなのだ。

(以下はツイッターの引用)
あらかわ@kazu10233147 4月26日
日本のコロナ死者は一万人を超えた。中国の二倍、韓国の五倍以上。人口 10万人あたりの死者数も凄まじい。(報道1930)
一年以上、対策は科学によらず、しかも経済最優先の無作為が生んだ結果だ。検査を妨害し、国民に自粛を強制し、経済、経済の菅。ありえない。(添付画像省略)

古賀茂明@フォーラム4@kogashigeaki 4月26日
死者1万人は通過点 今後の急増は必至 
Worldometer (4月26日更新)の100万人当たりの死者数(単位:人)
ベトナム 0.4 台湾 0.5 タイ 2 中国 3 シンガポール 5 ニュージーランド 5
香港 28 オーストラリア 35 韓国 35 マレーシア 44 日本 79
「先進国」日本の失敗は明白

 こんなんだもの、オリンピックどころではないはずなのに、なんとまあ、東京オリ・パラ組織委員会が「日本看護協会に対して、看護師約500人を大会の医療スタッフとして動員するよう要請」してたってね。しんぶん赤旗がスクープしたんだが、これを組織委員会が認めましたとさ。いつも上から目線の財務省上がりの事務総長・武藤君がこんなコメントしてます。
「約500人の看護師の方々について、検討していただけないかというお願いをいたしました。大前提は地域医療に悪影響を与えないようにすること。そのために、勤務時間やシフトのあり方をよく相談しながら、最も対応可能なやり方を相談していきたいと思っております」

 医療体制逼迫が問題化している中で、よくもまあこんな要請ができたものだ。しかも、動員された医療スタッフには研修があるそうで、そうなったらオリンピック前から拘束されるわけで、コロナどころではなくなっちまいますよ。

・看護師「5日以上を500人」 五輪組織委が看護協会に要請 本紙入手の文書で判明

(以下はツイッターの引用)
Shoko Egawa@amneris84 4月26日
コロナ対応で看護師さん、足りなくて困っているのでは…? →看護師500人の確保依頼 東京五輪パラ期間中に―大会組織委(時事通信)

異邦人@Narodovlastiye 4月26日
東京オリンピック組織委の傲岸不遜ぶりは留まる所を知らない。政治の怠慢が招いた人手不足の中で、日々コロナ禍の猛威と最前線で向き合い消耗し切っている看護師を、今最も必要とされていないオリンピックの為に500人も差し出せと要求している。余りの横暴さに言葉もない。

 ここまでくると、オリンピックって何様のつもり、って思いたくもなってくる。「コロナに打ち勝った証としてのオリンピック」ってんなら、コロナの猛威が治まって、コロナ以前の日常が戻った時に改めて再開すればいいのだ。
 そもそも、ワクチン接種が世界で一番遅れている国に、わざわざ無観客のオリンピックのためにやってくるアスリートがどれだけいるのだろうか・・・てなことを我が家のドラ猫に囁いてみる火曜の朝である。

学術会議任命拒否の6氏が理由開示を請求 法律家1162人も

 菅首相は就任早々に日本学術会議の会員候補6人の任命を、理由を明かさないまま拒否しました。この6人全員が26日までに、「自己情報開示請求」を内閣府や内閣官房に行いました。本人が請求することで、これまでのプライバシーを開示拒否の理由にした手段を禁じる趣旨です。

 併せて法学者や弁護士ら法律家1162人も同日、行政文書開示請求を行いました。
 6人の任命拒否の原案は、官邸ポリスともいわれ菅氏の懐刀と見られる杉田和博・内閣官房副長官が作成し、内閣府とやり取りした記録が残っているということです。
 この政権による日本学術会議の人事介入は学問の自由そのものへの介入であり、理由不開示のままで済ませることは出来ません。
 もしも理由として了解できないものであれば更に追及しなければなりません。
 当面は政府に理由の全面開示を求めますが、不開示の場合は訴訟も検討するということです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
任命拒否6氏 開示請求 学術会議「政治介入 強い疑い」 法律家1162人も
                       しんぶん赤旗 2021年4月27日
 菅義偉首相が日本学術会議の会員候補6人の任命を理由を明かさないまま拒否している問題で、この6人全員が26日までに、行政機関に自らの情報を開示させる「自己情報開示請求」を内閣府や内閣官房に行いました。任命拒否の経過に関する文書を開示させ、理由や責任の所在を明らかにさせるとしています。(安川崇)
 「なぜ首相が自分を任命しなかったのか」が分かる資料を本人が請求することにより、プライバシーを理由とした開示拒否を防ぐ狙いがあります。
 任命拒否された2人がこの日、請求書を提出。残りの4人も郵送などで提出したといいます。
 併せて法学者や弁護士ら法律家1162人も同日、行政文書開示請求を行いました。
 任命拒否の経緯については加藤勝信官房長官が昨年11月、参院予算委員会で「杉田(和博・内閣官房)副長官と内閣府のやりとりを行った記録について、内閣府で管理している」と答弁し、記録が存在することを認めています。1162人はこれを含め、一連の経過を示す文書の開示を求めています。
 請求人らは提出後に都内で会見。当面は政府に全面開示を求めますが、不開示の場合は訴訟も検討する方針を示しました。
 任命拒否された岡田正則・早稲田大学大学院教授(行政法学)は「(任命拒否は)法律家から見て違法と言わざるを得ない。それについて何の説明もしないことは、議会制民主主義を破壊する」と政府を批判しました。
 やはり拒否された小澤隆一・東京慈恵会医科大学教授(憲法学)は「学術会議は研究・実績に基づいて会員候補を選考した。政府は拒否の特段の理由を明らかにする必要がある。政治の側から介入があったという強い疑いを持たざるを得ない」と語りました。
 任命拒否をされたのは岡田氏、小澤氏のほか芦名定道京都大学名誉教授(キリスト教学)、宇野重規東京大学教授(政治思想史)、加藤陽子東京大学教授(日本近代史)、松宮孝明立命館大学教授(刑事法)の各氏です。

28- マイナンバー事業の業者選定8割が無競争 随契を乱発する機構

 13年に成立したマイナンバー法は、いずれ税や社会保障などの個人情報をひも付けする仕組みを目指したもので、16年にマイナンバーカードの交付が始まりました。過去9年で国費支出は累計約8800億円に上るということで、事業の中核を担うのは「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」です。

 東京新聞が調査したところによると、上記の機構が発注した事業は、14年~20年度上半期で207件、1300億円を超えますが、その契約の、件数で74%、契約金額で82%分は競争入札以外の随意契約等で決められたということです。
 競争の要因がなくなれば高値の契約になります。
 同機構の担当部長は、「競争入札が原則で随意契約は例外。随意契約の割合が高いままでいいとは思っていない。競争性が発揮されるような発注に取り組んでいく」と述べていますが、果たして実現するのかは大いに疑問です。
 民間企業に依存せざるを得ないのは行政側に「デジタル」に習熟した人材が乏しいためで、政策の遂行には民間の力に頼らざるを得ない上に、大規模な事業ほど大企業に限られ、特定の企業におんぶに抱っこになりやすいということがあります。
 過度な民間依存が事業の質に影響した例として、いまだに円滑に運用できていない新型コロナウイルス対策のアプリ「COCOA」での、一向に改善されない不具合があります。
 東京新聞が取り上げました。2つの記事を紹介します。
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【独自】マイナンバー事業の業者選定8割が競争なし 随意契約を乱発する機構
                          東京新聞 2021年4月27日
 総務省所管でマイナンバー事業の中核を担う「地方公共団体情報システム機構(J―LIS)」が民間企業などに発注したマイナンバー関連事業の74%が、競争を経ずに受注先を選ぶ随意契約(随契)だったことが本紙の集計で分かった。国発注のデジタル事業全体と比べても随契の多さは際立っている。競争入札に一事業者しか参加しない一者入札を含めると、全体の81%の業者選定で競争が働いていなかった。(デジタル政策取材班)

◆契約金額も高騰
 国の事業は会計法で競争入札が原則で、機構にも同様の規定がある。機構には巨額の税金が投じられており、閉鎖的な業者選定の妥当性が問われそうだ。
 機構が本紙に開示した資料によると、機構のマイナンバー関連事業は2014~20年度上半期までで、207件、当初の契約額で総額1300億円を超える。このうち随契は74%の154件で、契約額は計約616億円に上った。随契の受注先はNTTコミュニケーションズやNECなどの大手企業が中心だ。
 一者入札は15件で契約額は計約404億円。随契分と合わせると、契約金額ベースでも73%に上った。
 競争が働いていないと契約金額も高くなりがちで、予定価格に対する落札額の割合を示す落札率は、随契が平均92%、一者入札が75%になった。二者以上の競争入札は60%だった。
 一方、2019年度の国発注のデジタル事業では随契は38%にすぎず、一者入札を合わせた割合は76%だった。

◆マイナンバーに8800億円投入
 マイナンバー制度は、国内の住民にそれぞれ固有の番号を割り振り、税や社会保障などの個人情報をひも付けする仕組み。13年にマイナンバー法が成立、16年にマイナンバーカードの交付が始まった。過去9年で国費支出は累計約8800億円に上る。
 菅政権は今国会でデジタル庁創設を柱とするデジタル改革関連法案の成立を目指す。マイナンバーカードの普及拡大のため法案では国が機構の関与を強めることも定めている。
地方公共団体情報システム機構(J―LIS) 住民基本台帳ネットワークを運用していた総務省の外郭団体などを改編し、地方自治体が共同で運営する法人として2014年4月に設立された。マイナンバーカードの発行や関連システムの運用などマイナンバー事業に関わる実務を国や自治体に代わって担う。事業費の多くは国や自治体からの公金で賄われている。カード発行の場合、市区町村が機構に必要枚数の製造を委任し、その費用は総務省から交付金という形で市区町村を経由して機構に支払われる。

◆民間に頼らざるを得ない構造
 随意契約や一者入札の多さは、J―LIS発注のマイナンバー事業が民間企業に依存している実態を映している。これは菅政権の看板のデジタル政策全般にも共通する構造的な課題だ。
 行政側にデジタル人材が乏しいため、政策の遂行には民間の力に頼らざるを得ない。加えて、巨大事業ほど受注能力で大企業に限られ、特定の企業におんぶに抱っこになりやすい。受注競争が起きなければ契約金額が高止まりして税金の無駄につながりかねない上、一部の企業への接近は官民のなれ合いを生みやすい。
 過度な民間依存は事業の質に影響する恐れもある。新型コロナウイルス対策のアプリ「COCOA」で相次いだ不具合では、事業者任せで国がプロジェクトを管理できていなかったことが原因の一つと指摘された。平井卓也デジタル改革担当相も「発注者(国)の能力が低いことがいちばんの問題だ」と認める。
 1990年代以降、業者選定における競争性の乏しさは会計検査院などから何度も指摘されてきたが、政府は改善できていない。コロナ禍、菅政権がマイナンバーを含め行政のデジタル化を急ぐ中で、民間依存からの脱却は急務といえる。

◆随意契約は例外
J―LISの西川仁管理部担当部長の話 
 機構でも競争入札が原則で随意契約は例外。随意契約の割合が高いままでいいとは思っていない。なるべく案件を切り分けて発注することで企業の参入を促すなど、競争性が発揮されるような発注に取り組んでいく。

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「競争意識は強く」との回答とはかけ離れた実態…マイナンバー事業の閉鎖性
                         東京新聞 2021年4月27日
 巨額の税金が投入されているマイナンバーの中核事業で、入札にかけず特定企業に発注する随意契約が続発している。事業を発注する地方公共団体情報システム機構(JーLIS)に対し、契約状況を監視する有識者も閉鎖的な業者選定に苦言。それでも改善の兆しはうかがえない。(デジタル政策取材班)

◆「囲い込み」がデジタル事業で横行
 「競争入札という意識は強く持っている」「既存業者でずっとやるのは避けたい」。機構の担当者は本紙の取材に、何度も競争の必要性を口にしていた。
 ところが実態は大きく異なる。機構から開示された契約一覧をたどっていくと、「随契は例外」とは名ばかりな状況が浮かぶ。例えば、マイナンバーカードに機能を追加するシステムの事例。機構は2015年度、システムの設計を随契でNTTコミュニケーションズなど4社に発注。翌年度以降も、システム運用や保守など5件に及ぶ一連の業務を巡り随契で同社に受注させていた。
 開発や設計など新規業務を受注した業者がその後の関連する契約も独占する状況は「ベンダー・ロックイン(特定業者による囲い込み)」と呼ばれ、デジタル分野では長年の課題になっている。受注競争を阻害し、特定企業に依存しがちになるためだ。会計検査院は他の業者による途中参入が進むよう、業者間での引き継ぎなど各省庁に発注の工夫を求めてきた。
 機構の発注で見逃せないのは、機構自らがベンダー・ロックインを作り出している点だ。随契全体のうち「他の業者なら業務に著しい支障が生ずる恐れがある」を理由としたケースは7割以上。カードの機能追加で、NTTコミュニケーションズを入札なしに指名したのは同様の理由だった。
 随契を乱発する機構には内部から注文も出ている。18年、契約をチェックする内部の専門家会議が「随意契約の場合、恣意的な判断がされて契約の公正さが損なわれることがあってはならない」などと指摘した。専門家の意見を受け、機構は「随契を減らすため、新規の開発業務では競争入札を行うようにしている」とするが、その後も状況は変わっていない。開発業務でも随契の事例は散見される。

◆特定業者だけだと「トラブル時に重大な影響」
 随契が減らない理由について、機構の西川仁管理部担当部長は「開発業者以外だとトラブルが起こったときに重大な影響を及ぼしかねない」と説明。別の機構関係者は「われわれのシステムは事故を起こしてはいけないものだ」と話す。
 入札制度に詳しい上智大学の楠茂樹教授は「公共契約において業者の選択の余地が小さい状態は効率的な支出の観点から望ましくなく、改善の努力は常に必要である」と指摘している。
 ◇マイナンバーやデジタル事業に関する情報やご意見を、東京新聞経済部までお寄せ下さい。 [E-mail]東京新聞経済部

2021年4月27日火曜日

共同声明は虚構の「日米同盟」をあらためて強調しただけ(孫崎 享氏)

 孫崎享氏が日刊ゲンダイ連載の「日本外交と政治の正体」のコーナーに、「共同声明は虚構の『日米同盟』をあらためて強調しただけ」とする記事を出しました。
 その中で、先の日米首脳会談共同声明の「米国は日米安保条約5条が尖閣諸島に適用されると再確認」などの件について、安保条約5条は、米議会がそれを承認しかつ「戦争宣言」を行うことが条件なので、その関門を潜り抜けられないと米軍は対中国の防衛に参加できないのであるから、日本側の声明の解釈は錯覚であると述べました。
 そして「台湾海峡を舞台で中国を対象とする18のウォーゲーム(対中国戦 机上演習)の全てのケースで米国が敗れた」ことから、それを承知で米軍が日本のために中国と戦うことはないと述べました(米国のウォーゲームの結果については3月26日の同コーナーでも触れています。⇒(3月28日)尖閣周辺でアメリカと中国が激突すればアメリカが敗れる)
 従って日本政府は自分たちに都合がいいからと誤った幻想をふりまくべきではありません。

 ところで高野孟氏は、現在中国・台湾間の経済的連携は強固なので双方にとって「敢えて軍事的紛争を起こす必要性は全くない」と述べています。
   ⇒(4月26日)日米が結束し“中国の脅威”との軍事的な対決路線を煽る不毛
 そうであるのに米軍がなぜ「6年以内に台湾有事が発生する」などと煽るのかですが、それについては上記の記事でも紹介した通り、世に倦む日々氏の考察が最も納得できるものです。
   関連記事
   (4月11日)台湾有事のシナリオ – 対中戦争から最後まで離脱できない日本
    (4月14日)台湾有事・米中戦争・第三次世界大戦は三位一体(世に倦む日々)
    (4月20日)72年の日中共同声明の否定 –「二つの中国」に舵を切った日本
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日本外交と政治の正体
共同声明は虚構の「日米同盟」をあらためて強調しただけ
                     孫崎 享 日刊ゲンダイ 2021/04/23
                                                   (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 菅首相とバイデン大統領による日米首脳会談が行われた。共同声明では、①米国は日米安保条約5条が尖閣諸島に適用されると再確認 ②米国は核を含むあらゆる種類の能力を用い、日本の防衛を揺るぎなく支持する――と盛り込まれた。
 これは錯覚を誘導する巧妙な表現である。
「安保条約5条が尖閣諸島に適用される」ことは、尖閣諸島に米軍が出ることを約束していない。安保条約第5条は、攻撃があった時「自国の憲法上の規定及び手続に従って行動する」とある。
 米国の憲法第8条「連邦議会の立法権限」では、「戦争を宣言し」とある。つまり、戦争の宣言権限は大統領、行政府にあるのではない。安保条約の約束は、「議会が承認した時には軍事行動をとる」以上のものではなく、条約によって米軍がすぐに出撃することではない。
 加えて、こうした法律論を超え、今や、尖閣諸島周辺で米中が戦った時には米国は中国に勝てない状況にある。
 中国は在日米軍を攻撃できる1200発以上のミサイルを保有し、これが米軍滑走路を破壊すれば戦闘機は飛び立てない。
 この問題を指摘したのは、米国で最高の軍事研究所「ランド研究所」である。そして、一般の人の共通認識になったのは、2019年9月のNY紙に掲載されたクリストフ論文で、「台湾海峡を舞台で中国を対象とする18のウォーゲーム中、18で米国が敗れた」と報じられた。
 要するに尖閣諸島周辺で米軍が中国軍と戦えば、米国は負ける。それを承知で米軍が日本のために中国と戦うことはない。
「核の傘」も虚偽である。というのも、想定されているシナリオは机上の空論に過ぎないからだ。
 例えば、中国が日本に核兵器を発射すると脅したとする。日本は同盟国の米国に助けてほしいというだろう。そして、米国は中国に対して、「日本に核兵器を撃つなら米国は中国の都市に核兵器を撃つ」と伝え、その抑止効果によって中国は日本への核兵器発射をやめる――というものである。
 ところが、この筋書きには誤りがある。中国は、「中国の都市を核攻撃するのであれば、我々は米国の都市に核攻撃する」と反論するからだ。
 これを容認できる米国の政治家はいない。つまり論理的に「核の傘」は存在していないに等しいのである。
「日米同盟」は米国が日本を軍事的に守るという虚構の上にある。今回の日米共同声明は、その虚構をあらためて強調しているだけである。

孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。