2021年3月28日日曜日

28- 尖閣周辺でアメリカと中国が激突すればアメリカが敗れる

 安倍前首相は27日、新潟市で開かれた自民党新潟県連会合で講演し、「米国の外交・安保戦略上の重要地域がインド太平洋に移った。日本を含むアジア地域が米中両国対立の最前線になっている日米安全保障条約が本当に重要になってきた」として、対中国政策を巡って「インド太平洋地域がフロントラインになってきたとの認識と覚悟を持ち、外交・安全保障政策に取り組む必要がある」と述べました。

 安倍氏は以前にもオフレコで、「新安保法制(戦争法)の対象は中国」と語っています。
 そういえば第2次安倍内閣の首相に就任した当初、世界中を回って中国脅威論を口しましたが一部の国を除けばそれほど賛同は得られませんでした。彼の中国観は世界の多くの国々とは違っていた筈ですが、そのことに気付いたかどうかは分かりません。
 その後習近平氏の来日が具体化する方向になると中国批判はピタリと止めましたが、新型コロナのせいで来日そのものが不明瞭になって現在に至っています。首相の座も退きました。

 事実インド太平洋地域では何時火を噴くか分かりません、安倍氏は「そこが前線となってきたという認識と覚悟」が必要と主張します。その裏には米国が負ける筈がないという確信がある蓮ですが、果たしてそうでしょうか。
 外交評論家の孫崎享氏が、日刊ゲンダイのコラム「日本外交と政治の正体」のコーナーに「尖閣周辺でアメリカと中国が激突すればアメリカが敗れる」という記事を載せました。
 それは別に孫崎氏の予想ということではなく、第1期クリントン政権の政策担当国防次官補で、ハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長のグレアム・アリソン氏が昨年3月の「フォーリン・アフェアーズ」誌で、米国国防総省が行った18のウォーゲーム(⇒机上作戦)で全てアメリカは敗れていると書いていることや、米国で最も権威ある軍事研究所「ランド研究所」が15年にも「台湾海峡周辺(尖閣もこの範囲に入る)で米中が戦った時、米国が中国に敗れる」と指摘していることを紹介しています。
 インド太平洋域と台湾海峡周辺では事情が違うとは言い切れません。日本は既に集団的自衛権の行使を謳っている以上、日本本土への反撃もあり得るからです。
 安倍政権がつくった戦争法の日本の安全に及ぼす影響は実に甚大です。
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日本外交と政治の正体
尖閣周辺でアメリカと中国が激突すればアメリカが敗れる 
                     孫崎享 日刊ゲンダイ 2021/03/26
                      (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 米国のブリンケン国務長官が中国の海洋進出などに対し、「無責任な行動は容認できない」と明言した。中国海警局の船舶による領海侵入が日常化している尖閣諸島についても、「日本と共にある」と語った。
 日本の多くの国民は、「やはり米国は頼りになる」とほっとしているだろう。しかし、日本国民が気付いていない点がある。それは仮に尖閣周辺で米中両国が戦えば、米国が負ける状況にあることだ。
 第1期クリントン政権の政策担当国防次官補で、ハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長、グレアム・アリソン氏は昨年3月の「フォーリン・アフェアーズ」誌で、<「台湾海峡の軍事シナリオで中国が軍事的に先んじている可能性もある」とし、米国国防総省がウォーゲーム後、「中国と戦争すればコテンパンにやられる」〉という国防総省高官の言葉を引用。<ニューヨーク・タイムズが伝えたように、台湾海峡有事を想定した18のウォーゲームの全てでアメリカは敗れている>と書いていた。
 台湾海峡周辺(尖閣もこの範囲に入る)で米中が戦った時、米国が中国に敗れるという想定は、米国で最も権威ある軍事研究所「ランド研究所」が2015年にも指摘している。
 その論拠の主たるものは、①中国は日本の米軍基地を攻撃しうる1200発のSRBM(短距離弾道ミサイル)と中距離弾道ミサイル、巡航ミサイルを有している ②米軍基地の滑走路が壊されれば戦闘機は飛び立てない――というものだった。
 日本の防衛省は当時、この報告書を読んで驚愕したというが、それはそうだろう。「日本は米国に守られている」という基本認識が根底から崩されてしまうからだ。そのため、国内不安を招きかねないとして防衛省は沈黙を貫いた
 第2次世界大戦時、飛行機が発達し、軍艦は標的にされるだけの存在となった。しかし、日本軍は戦艦大和を出航させ、結局、鹿児島県の坊ノ岬沖で蜂の巣のように爆撃されて撃沈された。
 ミサイルが発達した今日、ロシアや中国の攻撃を防ぐ手段はない。我々は真剣に外交的手段でいかに国を守るかを考える時にきている。それは言い換えれば、米国追随で国は守れないということだ。そして、田中角栄・周恩来会談での尖閣問題棚上げ合意(日本の管轄権を認める)が日本にとって最も現実的で有利なものであることを再認識するべきだ。

孫崎  外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。


米中架け橋に 新外交イニシアティブ“安保戦略”提言の中身
                          日刊ゲンダイ 2021/03/27
 日米首脳会談を2週間後に控えた菅首相にぜひとも耳を傾けてもらいたいものだ。
 シンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND=代表・猿田佐世弁護士)が26日、都内でシンポジウムを開催。「抑止一辺倒を越えて 時代の転換点における日本の安全保障戦略」と題した政策提言を発表した。

 NDはこれまで、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題や原子力エネルギーを主なテーマとしてきたが、初めて全般的な安全保障戦略に議論を拡大。
 ▼米中や地域の架け橋としての役割追求
 ▼米軍の中距離ミサイル配備反対
 ▼自衛隊運用に新たな歯止めを設ける
 ▼核放棄プロセスと並行した拉致問題の優先的解決
 ▼北方領土問題の新たな交渉枠組み追求
 ▼「唯一の戦争被爆国」、憲法9条を持つ「非戦の国」の立場から多国間枠組みの創設
と活性化を目指す
――などを提言した。
 執筆者のひとりで、元内閣官房副長官補の柳澤協二評議員は「3月29日で安保法制施行から5年になる。南スーダンPKOで駆け付け警護や米軍の武器等防護が実施されたが、自衛隊は海外で一発の銃弾も撃っていない。そういう今だからこそ、米中が厳しい対立関係に陥っていくことに伴うリスクを考えるべきではないか」などと訴えた。