2021年4月11日日曜日

台湾有事のシナリオ – 対中戦争から最後まで離脱できない日本(世に倦む日々)

 世に倦む日々氏は、4月4日のフジ「日曜報道」に菅首相が生出演し、橋下徹が台湾有事となった場合は安保法制上の存立危機事態に該当するのではないかと質問したのに対して「仮定の問題について答えるのは控える」と応じたのは、台湾有事における自衛隊出動を安保法制で法的に正当化するための地均しであると述べました。それは世論工作の周到なステップであり、政府内ですでに台湾有事で米軍が中国軍と交戦状態になった場合は、それを存立危機事態と判断して自衛隊を戦場に出動させる具体的計画が組まれていることを示唆していると。

 世に倦む日々氏は台湾を巡って米中戦争が起きれば米軍が負けるという見方はしていませんが、対中戦争が長引く状況になれば米軍は本格的な総力戦の選択をすることが難しいと見ています。総力戦になると、国内で反戦運動が起きて政権が不安定になるからです
     *3月28日)尖閣周辺でアメリカと中国が激突すればアメリカが敗れる

 仮に米国が戦争を縮小して台湾を放棄する判断に至ったとき、米軍は日本中国との全面戦争の主役に引き込むので日本は対中戦争から離脱できないと見ていますすぐに自衛隊が最前線正面に向かわされ中国海空軍と激突する役目を請け負うことになるということです。
 それは現行の指揮命令系統から、自衛隊がいつどこで何をするかはすべて米軍司令部が独断で決めることが出来るからで、その後は自衛隊を主力にした対中戦争が継続されこそすれ、米国が対中戦争で白旗を掲げることはありません。
 そうなれば沖縄から始まって国土全域が戦場となるので日本は滅亡します。そのシナリオ以外にはないと考えるべきでしょう。ところでそうなることが安倍前首相や菅首相が目指しているものなのでしょうか。もしも両氏に何か言い分があるのなら聞きたいものです。

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台湾有事のシナリオ – 総力戦の戦争から最後まで離脱できない日本
                          世に倦む日々 2021-04-05
4月4日のフジ「日曜報道」に菅義偉が生出演し、その場で対談相手の橋下徹が、台湾有事となった場合は安保法制上の存立危機事態に該当するのではないかと質問、それに対して菅義偉が、仮定の問題について答えるのは控えると明言を避ける場面があった。存立危機事態。6年前の安保法制の政治のとき、何度もテレビ報道で聞かされた言葉だが、そこからしばらく耳にしない時間が過ぎ、すっかり日常からは縁遠い言葉になっていた。あらためて意味を確認すると、「日本が集団的自衛権を使う際の前提条件で、『日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある』事態。政府がこの事態に認定したうえで、『他に適当な手段がない』『必要最小限度の実力行使』という要件を満たせば、首相は自衛隊に対し、防衛出動を命令することができる」とある。この場合の「密接な関係にある他国」とは、米国のことである。

橋下徹は、この存立危機事態の「密接な関係にある他国」に台湾を含めよと言い、台湾有事に当たって台湾を守るべく自衛隊を出動させよと政府に迫ったわけだが、さすがに法理的に無理があるのか、菅義偉は即答を控えた。が、無論、これは官邸側が事前にシナリオを組んだ上での二人の台詞の朗読と演出であって、台湾有事における自衛隊出動を安保法制で法的に正当化するための地均しであり、世論工作の周到なステップだ。政府内で、どういう手順と口実で自衛隊を出動させるか詰めているという意味であり、すでに具体的に計画が組まれていることを示唆している。いずれ同じ質問が野党議員から国会で発され、国会で論議される進行になるだろう。普通に考えれば、日本と国交のない台湾を日本が防衛する義務などあり得ず、台湾の安全保障のために自衛隊が中国軍と交戦する理由などない。それ以前に、「一つの中国」の原則を認めている日本の立場からすれば、台湾はPRC⇒中華人民共和国の領土の一部であり、台湾問題は中国の国内問題である。本来、橋下徹のような質問は論外で、安保法制の諸事態に台湾は適用されず無関係と答えなければならない。

菅義偉が慎重発言でかわした狙いは、ここから国民的議論を立ち起こし、「政府の弱腰」を右翼に叩かせて弾みをつけようという魂胆だろう。いつもの手口である。落としどころは基本的に決まっていて、台湾有事で米軍が中国軍と交戦状態になった場合は、それを存立危機事態と判断・認定して自衛隊を戦場に出動させるということだろう。それならば、安保法制の法律解釈上は不都合なく収まる理屈になる。実際には、軍事作戦は計画的に行われるのであり、ある日いきなり米軍と中国軍が軍事衝突する事態が発生するわけではない。米軍がプログラムした台湾有事作戦の指揮命令に従って自衛隊諸部隊が動くのであり、諸部隊がどのような位置づけと役割を負わされるか、いつどこで何をするかは米軍司令部が独断で決めることだ。自衛隊の任務と活用に際して日本の国内法制は関係なく、日本政府の判断は関係ない。介在はない。日本政府は辻褄合わせの詭弁工作を後付けでやるだけだ。台湾有事作戦において、米軍にとって、自衛隊はきわめて重要で有用な同盟国軍の戦力だが、あくまで資源であり、手足であり、独立した司令機能を持った軍隊ではないのである。

実はこのポイントが重大で、米日軍(台湾軍+クアッド軍)にとってある種の統帥上の弱点になるのではないかと私は予感する。戦争をする陣営は指揮系統に乱れや隙間があってはいけない。戦争目的や戦略目標が陣営で一致していなくてはならず、内部で齟齬や同床異夢があってはいけない。完全に意思統一できてなくてはならず、すべての部隊が一つの機械になって動かなくてはいけない。内側で相互に疑心暗鬼になる要因を持ってはいけない。まず、今回の戦争目的と戦略目標は何かというと、これは簡単で、最終的にCPC⇒中華民国・PRCの体制を崩壊させることである。中国海軍を瞬時に壊滅させ、沿岸の基地を破壊し、司令部を攻撃し、海洋域で活動する中国軍を無力化させ、さらに中国沿岸を海上封鎖し、台湾をめぐっての戦闘継続意思を奪うことである。習近平政権に台湾独立を承認させる講和に持ち込むことだ。当然、南シナ海の中国支配も一気に白紙化する。そこから次に、中国内部での反乱を起こさせ、周辺自治区の分離独立を波状的に仕掛け、共産党支配体制を瓦解と転覆に持って行くことだ。中国に「自由と民主主義」を奉じる親米新政権を樹立することである。

これが米国の描く台湾有事のグランドデザインであり、米国の戦争目的と軍事目標である。これを達成することで覇権国の地位を守る。CPCの崩壊とPRCの解体が目論まれている。米インド太平洋司令官によって台湾有事は「6年以内」という年限が宣告され、バイデン政権はそのオブジェクティブ⇒目的に向けて全力集中している。トランプ政権からバイデン政権に変わって、18年秋のペンス・ドクトリンは修正されるかもという期待があったが、むしろ国家戦略として強化され具体化されて推進されている。「6年以内」のうち、この1-2年は台湾工作に注力する時期で、中国を国際社会から排除し孤立化させ、「二つの中国」を既成事実化するフェーズだ。その具体的中身は前回の記事で少し書いたが、来年22年にドイツで開かれるG7サミットでは、台湾とウィグルの代表が招待されるだろう。沖縄への中距離核配備も本決まりになって進捗していると思われる。そこまで至れば、いつ戦端が開かれてもおかしくない開戦前夜の情勢になり、双方が自軍に有利な戦略日程を計算する緊迫した局面となるだろう。軍事力で優勢な米軍側にとっては、作戦開始は早いほど有利となり、遅れるほど不利となる。

上に書いた米国側勝利のシナリオは、作戦が迅速に進んで中国軍を一気に無力化するパーフェクトな想定である。これが実現する可能性は高い。米国は戦略に長けた国だ。が、もし、どこかで中国軍側の反撃が成功し、戦線が膠着するとか長引く状況になり、米国が方針転換して戦争の縮小に出た場合は、かなり様子が違ってくる。米国は、戦争が泥沼で長期化するとか、兵士の流血犠牲が拡大するとか、米本土が核攻撃されて戦場になるとか、そのような本格的な総力戦の選択をすることが難しい。米国にとっては、軍事作戦はどこまでも地球の裏側の局所的な出来事でなくてはならず、第3次世界大戦であっても、米国民が高みの見物ができる「勝つゲーム」でなくてはならない。その前提を超えた破滅のリスクのある総力戦になると、国内で反戦運動が起きて政権が不安定になる。つまり、これは米国が逃げ腰になる進行の想定だが、こうなる可能性もゼロではない。台湾有事は米国民にとって純粋な防衛戦争ではなく、イデオロギーの戦争に他ならない。自由と民主主義の大義を守る戦争であり、邪悪な共産主義中国を打倒する戦争である。十字軍の遠征戦争だ。国民の士気の面で、中国と米国ではおのずから差が出るだろう。

問題は戦争が長引く趨勢になったときで、仮に米国が戦争を縮小して台湾を放棄する判断に至ったとき、日本はどうなるかということである。おそらくこのとき、台湾有事として始まった米中戦争は日中戦争に転化することになる。米国は講和はしない。台湾戦線で挫折しても、負けを認めるような講和はせず、日本と中国との全面戦争に引き込み、日本を防衛する態勢をとりつつ、日本を拠点にした攻勢で中国を消耗させる戦略を組み直すはずだ。日本は、沖縄から始まって国土全域が戦場となるが、この戦争から離脱できない。日本が単独に中国と講和することはできず、日米同盟なる国体に準じて最後まで戦う羽目になる。もともと、ナイレポートの第1弾はそういう内容だった。勃興する東アジアの両雄である日本と中国を戦わせ、両方を疲弊させて、両方が台頭する芽を摘み、漁夫の利で米国の繁栄と安定を維持するという戦略だった。豆殻をもって豆を煮る趣旨だった。当時、1990年代半ばの日本は現在とは異なる経済強国で、米国の脅威の存在だったのである。実際に台湾有事の戦争が始まれば、尖閣は全く問題にならないというか、戦場にはならずにスルーされるに違いない。尖閣に戦線が拡大することはない。

台湾海峡での戦闘が即決着して大陸沿岸部が戦場になるか、それとも米軍(クアッド軍)側に挫折が生じて膠着するかだ。膠着して米国が逃げ腰になり、講和もなければ、中国軍は沖縄に作戦を進めて行くだろう。無論、その時点で双方に大量の死傷者が出ていて、第三次世界大戦の様相になっている。最初、自衛隊は台湾島北側の東シナ海に布陣して沖縄米軍基地を守備し、次に、台湾海峡で台湾海軍が劣勢に陥った場合はすぐに正面最前線に向かわされ、中国海空軍と激突する役目を請け負うだろう。最初から最後まで米軍の盾になり、死傷率の高い任務を引き受けさせられるだろう。