2012年12月22日土曜日

20ミリシーベルト/年 で居住可能は論外 と双葉町町長


20日、福島第1原発事故で加須市に役場機能ごと避難している福島県双葉町の町議会で、井戸川克隆町長に対する不信任決議案が可決されました。
同町長が先に政府が招集した中間貯蔵施設受入れの関係市町村長会義に欠席するなど、国との関係が円滑でないことが理由になっているようです。

町長は同日、町のホームページに「町民の皆様へ」と題する声明を出しました。
それによるとチェルノブイリでは居住可能限度を5ミリシーベルト(mSv/年としたのに対して、日本ではその4倍に当たる20mSv/年としていることの不当性を挙げ、国から設置を要求されている中間貯蔵施設についても、同施設を町の中に置けば町の中心部の殆どに家を建てられなくなるのに、国は強引に事実上の着工をしようとしていると非難しています。 

 町長の指摘するチェルノブイリでは、現在子どもたちに深刻な健康障害※1が発生しており、同地の医療関係者は居住限度の5mSv/年が過大であったのがその原因だと指摘しています。他方、子どもの健康障害は食物汚染(実勢値 平均10ベクレル/キロ)による内部被曝に起因するという指摘2もあります。

食物汚染限度についても日本の規制値は100ベクレル/キロと、チェルノブイリの実勢値をはるかに上回るもので、町長が指摘するとおり26年前のチェルノブイリ事故対応と比較しても極めて劣悪なものとなっています。 これでは25年後の日本が今のウクライナになる可能性は大いにあると言えます。
1 102日付「チェルノブイリ原発事故による健康被害の現状」
2 1110日付「ウクライナでの放射線被害は極めて深刻」

以下に関連の記事を紹介します。
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双葉町議会が町長不信任決議 避難区域再編にも影響
東京新聞 20121221

 東京電力福島第一原発事故で加須市に役場機能ごと避難している福島県双葉町の町議会で、井戸川克隆町長に対する不信任決議案が可決された二十日、町民には「町再建が遅れるのでは」と当惑が広がった。近く議会の解散か町長の辞職・失職が決まり、年明けに町議選か町長選が行われることになる。避難指示区域再編の調整など課題が山積しており、影響を懸念する声も上がった。 (石井宏昌) 

 不信任決議案の提出者の岩本久人氏は、可決後に「町長の言動をみると、町民に寄り添った対応がおろそかになっている」と批判。一方で「こうした事態を招いた責任の一端は議会にもある。町民の審判を仰ぐ覚悟はある」とも語った。
井戸川町長は本会議で「仕事を多く抱えた中でこうした決議をされることは残念。町民がいがみ合うことなく、原発事故の原因者に権利を要求するような取り組みをしてほしい」と訴えた。   (中 略)
井戸川町長は、週明けに(辞職するか議会解散に踏み切るかの)判断を明らかにする考えだ。        (中 略)
 不信任の一因になった中間貯蔵施設の調査受け入れも、町は現時点で了解しておらず、協議は選挙後まで進まない可能性がある。

 衆院選を終えたばかりの町選管も困惑。準備期間に年末年始を挟むことになり、担当職員は「ポスター掲示板など業者に発注しても、正月休みで準備が遅れる。間に合うのか…」と頭を抱えた。  (後 略)
 

町民の皆様へ  (双葉町ホームページ掲載)
双葉町長 井戸川 克隆
(アンダーラインは事務局。原文では日付・町長名は末尾に記載)

 町民の皆様、皆様の苦しみは計り知れないものです。毎日、皆様と話し合いができれば良いのですが、なかなか叶えられませんことをお詫び申し上げます。 

 私が一番に取り組んでいますのが、一日も早く安定した生活に戻ることです。双葉町はすぐには住めませんが、どこかに仮に(借りに)住むところを準備しなければなりません。そこで、国と意見が合わないのは避難基準です。国は年間放射線量20mSvを基準にしていますが、チェルノブイリでは悲惨な経験から年間5mSv以上は移住の義務と言う制度を作りました。

 私たちは、この事故で最大の被ばくをさせられました、町民の皆様の健康と家系の継承を守るために、国に基準の見直しを求めています。この基準がすべてです。仮に住む場合は安全でなければなりません。子供たちには、これ以上被ばくはさせられませんし、子どもたちが受ける生涯の放射線量は大きなものになります。事故から25年が経ったウクライナの子供たちには働くことができないブラブラ病が多く発生しているそうです。

 私はこのようなことが一番心配です。町は絶対に事故を起こさないと言われて原発と共生してきました。しかし、今は廃虚にさせられ、町民関係も壊されました。自然も、生活も、生きがい、希望やその他すべてを壊されました。一方どうでしょう。これほど苦しんでいる私たちの思いは、皆さんが納得いくものになっていないのです。これを解決するのが先だと訴えています。 

 私が皆さんに多くの情報を出さないと叱られていることは十分承知しています。出したくても出せないのです。納得のいくような情報を国に求めていますが、出してこないのです。国とは隠し事のない交渉をすることを求め続けてきています。町民の皆様を裏切ることは決していたしません。これから多くの情報を出していきます。 

 放射線の基準に戻りますが、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告を採用していると国では言いますが、国際的に採用している訳ではありません。ヨーロッパには独自の基準があり、アメリカでも自国の基準を作って国民を守っています。最近のICRP勧告では日本を非難しています。もう120mSvを採用しなさいと言っています。これは大変なことで、区域見直しも賠償の基準も変わってきます

 このような中で冷静にと言っても無理かもしれません。このような環境に置かれているのだから、皆さんの要望を常に政府、与党には伝えてきました。政争に振り回されて進んでいません。

 福島県内に避難している町民を県外に移動してもらう努力はしましたが、関係機関の協力は得られずにいます。しかも盛んに県内に戻す政策が進行しています。県に理由を聞いても納得のいく返事は来ません。町民(県民)の希望を国に強く発信して頂きたいと思います。      (中 略)

見えないものは未来です。一番心配なのは健康で、被ばくによる障がいであります。ウクライナでは障がいに要する費用が国家の財政を破綻させるような事態になっています。今のウクライナが25年後の日本であってはならないのです。子供に障がいが出ればとんでもない損害です。この見えない、まだ見えていない損害を十分に伝えきれていないもどかしさがあります。まだ発症していないからとか、発症したとしても被ばくとは関係がないと言われる恐れがあります。水俣病のように長い年月をかけて裁判で決着するような経験を町民の皆さんにはさせたくありません。

 昨年の早い時期から町民の皆さんの被ばく検査を国、東電、福島県にお願いし、被ばく防止も合わせてお願いしてきました。しかし、思うようになっていません、原発事故による放射能の影響下に住むことについて拒むべきです。 

 損について一部しか言いきれていませんが、一番大きなこと、何年で帰れるかについて申し上げます。今は世界一の事故の大きさのレベル7のままだということ。溶けた核燃料の持ち出し終了が見通せないこと。処理水をどうするのか、核物質の最終処分はどのようにいつまで終わるのかなど多くの要因を考慮して、木村獨協大学准教授が最近の会議の席上、個人の見解として双葉町は場所によっては165年帰れないと発言しました。私には可か不可の判断できませんが、大変重要な言葉だと思います。半分としても80年だとしたら、この損害は甚大なものです。

 また、被ばくの影響についても責任者に対して担保をとっておく必要があります。 

 中間貯蔵施設については、議論をしないまま、調査だから認めろと言いますが、この費用の出どころを確かめることが重要です。この施設は30年で県外に出すと国は言っていますが、約束は我々とはまだ出来ていません。この施設の周りには人が住めません。六ヶ所村では2km以内には民家がないようで、双葉町では町の中心部が殆ど入ってしまいます。では、どうするのかの議論が先です。ボーリング調査を行うのは着工です。予算の構成を見ますと、整備事業の下に調査費が付いています。これは行政判断としては着工になります。着工の事実を作らせないために、私は非難覚悟で止めていることをご理解ください。

 十分すぎるほど議論して町民の皆さんの理解の下に進めるべきです。日本初の事業です。双葉町最大の損害で、確かな約束を求める事をしないまま進めてはやがて子供たちに迷惑をかけます。新政権とじっくり話し合いをして、子供たちに理解を貰いながら進めます。このように、私たちには大きな損害があることをご理解ください。 

 寒さが一段と厳しくなりました、風邪や体力の低下に気をつけて予防を心がけてください。これからもお伝えします。