原発事故の避難区域外の汚染地域では、同じ地点でも世帯ごとに特定避難勧奨地点か否かを国から指定され、指定世帯には1人月10万円の賠償金が支払われ続け、非指定世帯への賠償は8月で打ち切られました。仮設住宅への移転も該当地点の世帯は優先的に認められます。
南相馬市のある行政区では、全部で87世帯あるうちの36世帯が該当地点に指定され残り51世帯が外れました。仮に該当地点の区分けが真に合理的なものであったとしても、同一地域でそういう区別・差別をすることは容易には納得できませんが、実態はどうなのでしょうか。
特定避難勧奨地点に指定する条件は、なんと年間線量20mSv(実際には毎時3.2マイクロシーベルト=28mSv/年)以上ということで、これまで被曝限度とされてきた値の20倍(28倍)になっています。要するに年間線量が28mSv以下であれば、そのままその地域に居住すべしということです。妊婦や乳幼児のいる世帯でようやく2.0マイクロシーベルト(17.5mSv/年)に軽減されますが、とても軽減のうちに入るようなものではありません。
また河北新報の伝えるところによれば、自宅の一画に年間88ミリシーベルトのホットスポットがあっても該当地点に指定されない例もあります。
これが科学では先進国と自負している筈の日本の現実です。しかもチェルノブイリの悲劇を知った上での話です。(チェルノブイリでは居住可能限度5mSv/年で多大な健康被害を発生させました)
年間被曝限度=20mSvは、規制委員長の田中氏などが主導しました。そんなところにずっと居住していて良いなどとても正気の判断とは思えません。
(註. 青字の数値は事務局で年間線量に換算した値)
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線量も大差ないのに… 避難勧奨指定の有無で格差 南相馬
河北新報2012年12月24日
福島第1原発事故で放射線量が局地的に高い特定避難勧奨地点を抱える福島県南相馬市で、同地点に指定された世帯とそうでない世帯の格差があらためて浮き彫りになっている。同じ行政区にあり、放射線量も大きく変わらないのに指定、非指定と区別され、賠償、避難の両面で差が生じた。非指定世帯の仮設住宅への入居がようやく認められたが、住民の不平等感は消えていない。
「線量が高く、体を考えて仮設住宅に移ることにした」
原町区高倉行政区長の菅野秀一さん(72)は15日、自宅から鹿島区の仮設住宅に移った。自宅には部分的に毎時10マイクロシーベルト(87.6mSv/年、mSv=ミリシーベルト)を超すホットスポットがあり、不安を抱きながら暮らしていた。
行政区は87世帯あり、うち36世帯が特定避難勧奨地点に指定され、菅野さんら残り51世帯が外れた。同じ行政区で線量も著しい違いがない。市は「不平等にならないよう地区ごとに指定すべきだ」と政府に求めたが、通らなかった。
指定世帯は1人月10万円の賠償金の支払いが継続中で、仮設住宅への移転も優先的に認められた。非指定世帯は賠償が8月に打ち切られ、仮設住宅への入居も後回しになり、比較的高線量の自宅での生活を余儀なくされた。
仮設住宅の増設が進み、10月から非指定世帯の入居が認められ、高倉行政区では菅野さんら10世帯が仮設住宅に移った。
市内で特定避難勧奨地点の指定世帯があるのは高倉など7行政区。153世帯が指定を受け、約580世帯が非指定となった。非指定世帯のうち6行政区の32世帯が仮設住宅に移住する。
仮設住宅は線量の低い所に建てられ、住民は安心して暮らせる一方、自宅との二重生活を強いられる。7行政区は最優先で除染が進められるが、計画は8カ月遅れで、高倉行政区は11月に始まった。
「世帯ごとの指定には問題があったが、今更時間を戻せない」と菅野さん。「将来的に住民全員が安心して自宅に戻れるよう除染を徹底してほしい」と話す。
[特定避難勧奨地点]
通称「ホットスポット」。原発事故の避難区域外で局地的に年間線量が20ミリシーベルトを超すと推定される地点で世帯ごとに指定される。目安は一般世帯が毎時3.2マイクロシーベルト(28.0mSv/年)以上、妊婦や乳幼児のいる世帯は2.0マイクロシーベルト(17.5mSv/年)以上。避難した場合は賠償が受けられる。伊達市と福島県川内村の計129世帯も指定され、政府は今月14日に指定解除した。南相馬市は「除染が不十分」と解除に消極的だ。