暗いニュースが続いた中で、福島で明るい出来ごとがありました。
福島市で12月1日、児童の甲状腺検査をしてくれる「ふくしま共同診療所」が開設され診療を開始しました。院長は国立ガンセンター病院で放射線治療を担当していた医師です。
同診療所は、市民・労組・学生組織などが約4,000万円の募金活動を行って設立したもので、これまでわざわざ福島県外の病院まで行かないと児童の甲状腺の再検査・精密検査を受けることが出来ない、という事態がこれで解消されました。
児童の甲状腺検査の結果は、例えば「小さな結節やのう胞がありますが、2次検査の必要はありません」という風に知らされるだけで、保護者がそれ以上詳しいことを知ろうとすると、情報開示請求の手続きを取らされました。しかしそれによって開示されるものは「甲状腺エコー画像」の不鮮明なカーボンコピーなどで、再検査用のデータにはあまり有効でなかったということです。
そもそも病院に行って再検査・精密検査を受けようとしても、福島県内ではどの医師にも診療を断わられました。
それは県内の甲状腺学会員(医師)に対して、甲状腺学会理事長の肩書を持つ福島医科大山下俊一氏らから「・・・保護者から問い合わせや相談が少なからずあると思うが、自覚症状等が出現しない限り(次回=2年後 の検査を受けるまでの間)、追加検査は必要がないことを理解して、それを保護者に説明されたい(要旨)」という1月16日付の通達が回されていたためでした。
検査結果の開示が不十分であり、別の医師による再診断が福島県内では事実上受けられないことについては、当初から、そして繰り返し市民団体や人権団体から改善を要求されており、来日して調査した国連人権理事会の助言者からも、「対象範囲が不十分であり放射能汚染区域全体で実施すべきこと、健康診断・アンケートの内容が不足していること、検査結果の開示方法に問題があること、子どもの症状について別の医師の見解を聞いたり、検査を受けたりする権利が守られていない」ことなどを指摘されました※。
※ 11月28日付
「福島の健康調査は『不十分』、問題がある と指摘」
追記. かなり以前に市民団体から通達の取り消しの要求が出て、医大との交渉の場で諒解されましたが、実際にはまだ行われていないようです。
また、放射能の影響のない地域での児童の甲状腺の結節やのう胞の保有率を調べる計画も8月以前に公表されましたが、それもいまだに実施されていないようです。
以下に11月24日付の毎日新聞の記事を紹介します。
(事務局がこのニュースを見落としていたため、これまで紹介できませんでした)
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原発事故:福島に募金診療所が開院へ 住民の不安に応え
毎日新聞 2012年11月24日
東京電力福島第1原発事故に伴う被ばくへの健康不安に応えようと、市民らが募金活動をした「ふくしま共同診療所」が12月1日、福島市太田町に開院する。18歳以下を対象にした県の甲状腺検査用機器も備え、セカンドオピニオンを提供して不安解消を目指す。呼び掛け人の一人で「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の佐藤幸子代表は「住民の心のよりどころになる診療所を目指したい」と話している。
3階建てビルの1階部分約40坪を改装し、二つの診察室やレントゲン室を設けた。内科と放射線科があり、甲状腺検査もできる超音波診断装置を導入し、希望すれば尿・血液検査なども受けられる。松江寛人・元国立がんセンター病院医師が院長に就き、県外の医師4人も非常勤で勤務するという。
県の甲状腺検査では、子どもに結節やのう胞が見つかっても大半が2次検査不要と判定され、保護者から「検査結果が分かりにくい」などの声が上がっている。低線量被ばくによる健康不安を抱えている県民も多い。
診療所は県内外の市民や医師14人が呼び掛け人となり建設委を発足、今年1月から約4000万円の寄付金を集め開院にこぎつけた。70年代に相次いで白血病を発症した広島の被爆2世らが開設した広島市の「高陽第一診療所」をモデルにした。
チェルノブイリ原発事故では、4〜5年後に小児の甲状腺がんの増加が確認された。松江医師は「放射線の影響が出るとすればこれから。症状は甲状腺だけとも限らず観察が必要だ」と話す。診療は毎週火、木、金、土曜日。問い合わせは同診療所(024・573・9335)へ。 【蓬田正志】