2012年12月21日金曜日

東通原発敷地の活断層はほぼ決定的ですが +


 20日の原子力規制委の専門家会議で、東北電力東通(ひがしどおり)原発の敷地内断層は活断層の可能性があるという結論でまとまりました。最終的な判断は26日に東北電力から話を聞いたのちに行うということですが、これまで「活断層が否定できなければクロ」と言われていましたので、活断層と認定されることはほぼ決定的です。
 加えて東通原発の沖合には、海岸線にほぼ並行して長さ84キロの海底断層=大陸棚外縁断層が走っており、そこではマグニチュード8クラスの地震が起きる可能性があると指摘されています。 

廃炉に向かうのかについては、メディアは今のところそういう論調ではなくて、原子炉などの重要施設は活断層の真上にはないので耐震補強で対応するのではないかと報じられています。
もともと原発の設置指針には、「活断層の真上には重要設備を置かない」という風に書かれているだけで、出来るだけ原発の設置を妨害しないようにするという側面がありました。
東通原発の活断層問題が最終的にどう結着するのか、今後の成り行きが注目されます。 

 以下にNHKニュースを紹介します。  
併せて「科学と倫理の見地から、危ないものは危ない、動かせないものは動かせないと、科学者たちには腰を据えて訴え続けてもらいたい」と訴える東京新聞の社説を紹介します。
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東通原発 最終的な判断の行方は
NHK NEWS web 20121221

青森県の東通原子力発電所の断層について、国の原子力規制委員会の専門家会議は、「断層が活断層の可能性がある」という見解をまとめました。
専門家会議は来週、東北電力から話を聞く予定ですが、見解どおりに最終的な判断をすれば、東通原発は当面、運転が再開できなくなる可能性があります。 

原子力規制委員会の島崎邦彦委員と専門家の合わせて5人は20日の会議で、東通原発で調査した敷地を南北に走る断層や地層のずれを中心に評価しました。
会議では、断層について「活断層の可能性が否定できない」といった意見で一致したほか、地層のずれの原因については「東北電力が主張する、地層の一部が水を吸って膨らむ現象で説明するのは難しい」といった否定的な意見が相次ぎました。
そして島崎委員が、「『活断層でない』という主張は受け入れがたい」と述べて、「断層が活断層の可能性がある」という見解をまとめました。

専門家会議は、今月26日に東北電力から話を聞いて最終的な判断をする予定で、見解どおりに「断層が活断層の可能性がある」と判断されると、今月10日の敦賀原発に次いで2例目となります。
東通原発では、活断層の可能性を指摘された断層はいずれも、真上に原子炉などの重要施設はないとされていますが、敷地に活断層があると、東北電力は耐震対策の見直しを迫られることになり、当面、運転が再開できなくなる可能性があります。

これに対して東北電力の千釜章土木建築部長は、専門家会議の見解について、「活断層という指摘は受け入れられない。敷地内にある断層はいずれも活動性がないと考えている。次回の会議で、会社としての考えを主張して専門家の方々と議論したい」と話しています。 

専門家の発言
20日の会議で、断層の周辺で見つかった地層の“ずれ”について、変動地形学が専門の専修大学の熊木洋太教授は、「断層のようなものが動いた影響を受けたと思われる地形が敷地の中で多数確認できた」と述べました。

また、変動地形学が専門で千葉大学大学院理学研究科の金田平太郎准教授は“ずれ”について「地層の一部が水を吸って膨らむ現象「膨潤」は可能性としてあってもいいが、その現象のみですべてのずれを説明することは難しい」と述べるなど、東北電力の主張を否定する意見が相次ぎました。

一方、東通原発の敷地を走る断層について、地質学が専門の産業技術総合研究所の粟田泰夫主任研究員は、「敷地全体にかなり広い範囲で系統的に続いていて、活断層の可能性を否定するのは、ほぼ不可能だ」と述べたほか、ほかの専門家からも「活断層と判断される」といった意見が相次ぎました。

さらに、地質学が専門の東京大学地震研究所の佐藤比呂志教授は、「特に下北半島周辺は地震を起こす断層が多く、重要な原子力施設があるので敷地外も含めた広域的な評価が必要だ」と述べ、東通原発の沖合にある長さ84キロの海底断層など広い範囲での調査の必要性を指摘しました。

最後に島崎邦彦委員は、「『活断層でない』という東北電力の主張は到底受け入れがたい。その点では、ある程度の共通認識ができたと思う」と述べて5人全員の意見が「活断層の可能性がある」という意見で一致したという見解を示しました。

会議のあと島崎委員は、「東北電力に対しては活断層という目で見てもらい、足りないデータを補ってもらいたい。東北電力の主張についても聞きたいと思う」と述べ、次回の会議で東北電力から話を聞く考えを示しました。
 
 
「東通」も活断層 疑わしきは動かせない
東京新聞 20121221

裁判とは違う。疑わしきは黒なのだ。原子力規制委員会の専門家調査団は、東北電力東通原発敷地内の断層が活断層とみられることで一致した。そんな疑いがある場所で、原発は動かせるだろうか。
またも全員一致である。規制委の調査団は、東通原発敷地内を走る断層が「活断層の可能性が高い」と評価した。
敦賀2号機のように原子炉の真下を走っているわけではないという。しかし、敷地内に地震の恐れがあるとみられるだけで、十分危険なことではないか。通り一遍の耐震補強ぐらいで、安全が守られるのか
東北電力は、粘土を含んだ地層が地下水を吸って膨らむ「膨潤」という状態であって、「活断層ではない」と否定し続けている。原発の立地や稼働が最優先、安全、安心は二の次という電力会社の体質は、相変わらずであるようだ。このようなことでは、安心からもほど遠い。
原発立地の妨げになる活断層は、その規模や影響が過小評価されてきた。無視されたり、故意に隠されたりした恐れもある。

日本は世界有数の地震国である。ところが、その特殊さに目をつむり、安全を後回しにして原発を造り続けてきた。福島第一原発の惨状は、この国で原発が動き始めた四十年前に戻って、安全性を総点検せよとのシグナルだ。
私たちは今月十二日の社説で、国内のすべての原発を対象に、規制委が直接断層調査に乗り出すよう指摘した。東通原発のある下北半島には、原子力関連施設が集中する。極めて危険な使用済み核燃料の再処理工場やウラン濃縮工場などもある。絶対に地震の被害にあってはならない施設が、集中する地域なのである。

半島の東には、全長約百キロの大陸棚外縁断層が並行して走っており、東通原発内の断層などと連動して大地震を引き起こす危険性をはらんでいる。入念な上にも入念な調査が必要だ。
政権が交代し、原発再稼働への追い風が、漂い始めているようだ。しかし政治がどう変わろうと、安全神話の復活は許されない。そのためには、規制委の独立性が不可欠だ。

科学と倫理の見地から、危ないものは危ない、動かせないものは動かせないと、科学者たちには腰を据えて訴え続けてもらいたい。そうしない限り、福島の悪夢はいつかまた、繰り返されるのではないか。