2012年12月15日土曜日

官庁の無責任 原発拡散予測は孫請けが1人で入力 


 先に公表され訂正が度重なった 原発重大事故時の放射性物質拡散予測は、たった1人によって全データが入力されたものであることが明らかになりました。
拡散予測計算は、旧保安院から元請けの原子力安全基盤機構(JNES)に丸投げされ、JNESはそれを更に孫請け会社シー・エス・エー・ジャパンに丸投げしました。そして最終の孫請け会社では、たった1人の社員が全データの入力を行いました。 

孫請け会社は2010年にもJNESから同じような拡散予測を受注して作業をしたので、今回もその流れで受注したのですが、前回は内部検討用であったのに対して今回は自治体に配布する正式な予測であったために、精度が求められて入力の作業量は大幅に増えました。加えて納期も短かったのに、シー社は社員1人で作業する体制を変えませんでした。
作業に入ってからも入力条件が度々変更され、データの変更や追加も重なったので、入力作業量は2年前の作業の実に73倍にも達したということです。従って入力ミスが多発したのはまことに当然のことでした。 

たった1人にそのような膨大な作業をさせた孫請け会社の労務管理上の問題は勿論ありますが、その背後には旧保安院がJNESに仕事を丸投げし、そのJNESがまた孫請けのシー社にそっくり丸投げする中で、自分たちはピンはねしながら孫請けにはぎりぎりの費用しか渡さなかったという事情があったことが想像されます。 

こうして国民の死活に係わる重要な基礎データである「拡散予測」は、(旧保安院、)原子力規制庁及び規制委、JNESがそれぞれ全くチェックもしないままで公表されました。
(この作業を丸投げしてチェックもしない無責任体制と、トンネルさせるだけで利潤にありつく寄生体質は、決してこのケースに留まるものではなくて、あらゆるところで常態化しているものと思われます。) 

 以下に東京新聞の記事を紹介します。
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全原発で拡散予測訂正 担当 孫請け社員1人
東京新聞 20121214 

 原子力規制委員会は13日、原発で重大事故が起きた場合の放射性物質の拡散予測の訂正版を公表した。ミスが相次いだ背景には、予測作業を孫請けのコンサルタント会社の社員一人だけで実質的に担当していたことが、規制委の検証で明らかになった。発注した旧経済産業省原子力安全・保安院(廃止)は丸投げ、は内部で仕事を押し付け合い、孫請けは注文内容が変わるたびに大わらわ-。そんな中でミスが広がった。 

 「思い違い」「電卓で手計算」「入力ミス」「何らかの理由で忘れた」。規制委の検証報告には、ほぼ一人で作業した孫請け会社シー・エス・エー・ジャパン(東京都)のミスが多数挙げられた。
 シー社は2010年、同じような拡散予測をJNESから受注。その流れで今年4月、今回の予測を再び受注した。 

 前回の予測はJNESの内部検討資料用だったが、今回の予測は自治体への配布を前提とした正式な予測。当然、精度が求められ、作業量も大幅増。納期も短いのに、シー社の社員一人で作業する体制は、そのままだった。

 JNESでも担当者は実質的に一人だったが、組織改編もあってどの部署が担当なのかあいまいになった。「自分はただの窓口役」などと仕事を押しつけ合うような場面もあったという。
 発注者の旧保安院もミスを拡大させた。七月に予測結果はほぼまとまっていたのに、8月に方位別に予測するよう注文変更、9月には年間の全気象データを反映して予測するよう再び変更。扱うデータは73倍にまで急増し、その過程で変換ミスなどが起きた。

 また旧保安院と規制委は、この間データを自ら検証することは全くなく、規制委はJNESから渡された報告書をそのまま発表しただけだった。 (大村歩)