日本のメディアはなぜか安倍氏への批判めいた評論は一切載せませんが、外国紙は率直にそして的確に安倍氏の路線を論評しています。
サーチナに掲載された、複数の韓国紙の論調を要約した記事と中国網日本語版(チャイナネット)の記事、及びウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記事の要約版を紹介します。
(WSJは著作権を明記してあるので、事務局で作成した要約版にしました)
◇消費増税は「大惨事」とWSJが評価
日本の財務省が主導し野田首相が「政治生命を懸けた」消費増税については、日本のメディアは「新聞だけは5%据え置きに」と政府に懇願する一方で、国民に対しては消費増税賛成の一大キャンペーンを行って来ましたが、WSJは、明快に消費増税は「大惨事」であるとこき下ろしています。
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自民党圧勝で日本の右傾化が懸念「極右の安倍が帰ってきた」=韓国
サーチナ 2012年12月17日
16日に行われた総選挙で自民党が圧勝し、約3年3カ月ぶりに政権を奪還した。これに対し、複数の韓国メディアが17日、日本の右傾化によって、東アジアの外交に緊張が高まる懸念があると報じた。
韓国メディアは日本における選挙結果を受け、「日本の極右、安倍が帰ってきた」、「日本、自民党294議席の圧勝、急激な右傾化懸念」、「誇らしい日本帝国を夢見る右翼、過去の否定」、「日本は自民党が圧勝、北東アジアの安保に深刻な懸念」などの見出しで懸念の意を示した。
自民党は単独過半数を超し、全常任委員会で委員の過半数を占める絶対安定議席である269議席も上回る勝利を収めた。連立政党である公明党が30議席を得ており、2つの政党の議席を合わせれば、衆院単独で法案通過はもちろん、憲法改正が可能な320議席を超えたと説明。
安倍総裁には「従軍慰安婦を否定」、「平和憲法改正など極右公約」などの言動があるとして、「韓国や中国など東アジアの外交関係がさらに閉塞的な状況になる」と主張。さらに、集団的自衛権行使や自衛隊の国防軍への変更などを約束した自民党が、実際にこれらの公約を履行すれば、周辺国から反発を呼び、外交的な葛藤が生まれるだろうとの見方を示した。
また、安倍総裁が予告したように、景気浮揚のために無制限の金融緩和に乗り出せば、国際金融市場に大きな波紋が起こる可能性もあると、経済政策についても懸念を示した。
自民党の勝利について、「民主党の失敗で得ただけであり、日本国民の積極的な支持によるものではない」と分析した韓国メディアもあった。
「選挙直前の世論調査では、積極的な自民党支持層は極めて薄く、民主党の代わりに相対的に支持された」と指摘した上で、自民党は圧倒的な勝利にもかかわらず、今後、安倍次期首相への国民の支持は、あっという間に冷え込む可能性もあると主張。
安倍政権への支持が落ち込めば「日本の急速な強硬保守化を抑制することになる」との見方を示した上で、自国側の対策として「このような日本の流動的な動きに対して、19日に行われる韓国大統領選挙で誕生する韓国の新政府は、高度な対応が要求される」と指摘した。 (編集担当:李信恵・山口幸治)
自民党の勝利 日本はどこに向かうのか=中国報道
サーチナ 2012年12月17日
第46回衆議院議員総選挙で、最大野党の自民党が圧倒的な勝利を収め、与党の民主党が惨敗を喫した。中国網日本語版(チャイナネット)は17日、「自民党の勝利で日本はどこに向かうのか」と題する記事を掲載した。以下は同記事より。
◇安倍氏の政策主張に懸念
衆議院議員総選挙の結果が確定すると、近日中に特別国会が開かれ、新たな首相が誕生する。何事もなければ、自民党の安倍晋三総裁が再び首相に就任する。アナリストは、「安倍氏が6年前の就任当時と同じ主張を繰り返せば、何もできずに終わるだろう」と分析している。
安倍氏は自民党の政権公約で、人びとの懸念を招く政策主張を打ち出した。内政面では平和憲法の改定、自衛隊の国防軍への昇格、集団的自衛権の行使の許可を主張した。しかし法律の規定によると、憲法の条文を改定する場合、国会に対して憲法修正案を提出し、衆参両院の3分の2以上の議員による賛成を獲得し、さらに国民投票で3分の2の賛成を得る必要がある(※)。憲法改正に対する強い反発のなか、これは非常に困難だ。 (※国民投票には3分の2以上という規定はありません。事務局)
安倍氏は経済面で、大胆な金融緩和を主張しており、デフレ脱却と円高防止を主な課題とし、3%以上の国内総生産(GDP)成長率の実現を目標としている。安倍氏は総選挙で、6年前の首相在任中の成績について、「日本経済が持続的に成長し、円相場が安定していた」と語った。
しかし日本経済の専門家は、「当時の世界経済は全体的に良好で、日本の経済成長維持は安倍政権の功労ではなく、世界経済による影響であった」と主張した。日本経済は現在、低迷を続けており、これに欧州債務危機の悪化、米国経済の回復の遅れが加わり、日本政府の金融緩和が予想されている効果を得るとは限らない。
安倍氏は外交面で、日米同盟関係の強化を主張している。沖縄県民の強い反発のなか、普天間基地移設問題の解決は容易でなく、日米同盟関係の強化は困難に直面している。また日本政府による尖閣諸島(中国名:釣魚島)に対する国有化により、日中関係が著しく悪化した。日本が中国の領土主権を損ねる行為を停止せず、実際の行動により過ちを正さなければ、日中関係が改善されることはない。
◇自公連立政権を重視か
衆議院総選挙後にどのような政権が生まれるかは明らかになっていないが、自民党と公明党による連立政権の誕生が確定的であるとの見方があり、連立政権にほかの政党が加わるかについては依然として未知数だ。
野党が参議院の多数の議席を占める「ねじれ国会」の局面打開は、自民党新政権にとって難しい問題だ。民主党は衆議院総選挙で惨敗を喫したが、参議院の最大政党であり、自民党と公明党の参議院議席数は過半数に達していない。ゆえに今後国会に提出される各種法案は、参議院をスムーズに通過できない。
安倍氏は総選挙で、政権奪取後に民主党と連携することはありえないと表明した。自民党と公明党の連立政権を基礎とし、参議院で一部の政策が似通った政党と「部分連合」を行い、「ねじれ国会」の局面を打開するだろう。
アナリストは、「自民党新政権は現実離れした政策主張を調整し、実行性の高い内政・外交を推進し、ねじれ国会の局面打開の良策を講じない限り、安定的な政権基盤を築けず、苦しい執政が強いられるだろう」と警鐘を鳴らした。(編集担当:米原裕子)
【社説】 日本の新首相は昔からのタカ派
(著作権明記のため要旨を記載)
ウォール・ストリート・ジャーナル 2012年 12月 18日
衆議院の全480議席中、自民党は294議席を獲得し、安倍晋三総裁が再び日本の首相となるが、自民党の比例選(定数180)での得票率は27.62%と振るわない。
安倍氏が提案する経済政策は、日本銀行による建設国債の直接引き受けで賄われる財政出動が柱となっているが、日銀はすでに資金供給量を大幅に拡大してきており、デフレに歯止めがかけられないのは信用需要があまりにも低いからである。経済規制緩和や貿易の自由化の方がよっぽど効果がありそうだが、自民党はいまだに企業や農業の既得権を守ろうとしている。
1つ良い面があるとすれば、それは現政権が提案した消費増税が実現しないかもしれないということで、引き上げの実施に、経済状況が上向いていれば、という条件が付いているので、安倍氏がこの条件を利用して大惨事を防ぐことも可能なのだ。
安倍氏の今回の勝利は、いろいろな意味で中国の胡錦濤国家主席、韓国の李明博大統領のおかげとも言える。
安倍氏の勝利と「日本維新の会」の台頭で、学者たちのあいだではすでに日本の右傾化を心配する声が上がっている。新総理となる安倍氏は、これまで1993年の河野洋平官房長官談の取消し、歴史教科書の検定手順の見直し、靖国神社への参拝、憲法9条の改正などを行うつもりだと述べてきた。
仮に安倍氏がこうした多分に象徴的な計画を最後までやり抜くとすると、大半のアジア諸国との関係は悪化するだろうが、こうした言動は、同氏のアピールだった可能性が高い。かつての安倍首相(2006-2007年)は、実際的な路線を歩み、中国訪問後は同国との関係も改善した。日本国民は外国との争いに興味がなく、平和国家という戦後の自己像に深い愛着を持っている。
安倍氏は軍事力強化プログラムで建設的なナショナリズムを擁護することもできるが、防衛費のJDP1%枠が撤廃されないと、新たな防衛支出を企てる能力はさらに制限されるのである。
沖縄の米海兵隊基地移設をめぐる最近の混乱の責任は民主党にあるが、この問題に関しては自民党にも誇れるような実績はない。
今週、韓国では新たな大統領が選出されるが、このことは日韓関係において新たな一歩を踏み出すチャンスとなり得るが、安倍氏が第2次世界大戦の傷口をほじくり返せば、それも台無しになってしまうだろう。
安倍氏が自民党内の過激論者たちに迎合すれば、安倍氏は(国民からの)負託を手放すことになるだろう。