自民党の安倍氏が30日、河野談話の見直しに言及しました。
いわゆる河野談話(※末尾に添付)は1993(平成5)年8月4日に出されたもので、①慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送には旧日本軍が関与した
②慰安婦の募集は軍の要請を受けた業者が行ったが、官憲等が直接加担したこともあった ③慰安婦の募集、移送、管理は本人たちの意思に反して行われた ことを認め、「従軍慰安婦として苦痛を経験され、心身に癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」としたものです。
河野談話は閣議決定の形式はとりませんでしたが、「内閣の意思」であることは公式に確認されており、以後歴代の内閣で「踏襲」されてきました。
安倍氏(や橋下氏)は、「慰安婦の強制連行を指示した書類は見つかっていない」ことを強調したいようなのですが、そういうような問題ではないことはこれまで多くの識者や人権団体が指摘して来たところです。
(本ブログの9月7日付「『アジア女性資料センター』が橋下市長の慰安婦問題発言を批判」等を参照願います)
以下に日経新聞の記事と「河野談話」を紹介します。
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河野談話見直し発言、安倍氏が軌道修正
日経新聞 2012年11月30日
「有識者の知恵も借りながら」
自民党の安倍晋三総裁は30日、従軍慰安婦問題をめぐって宮沢政権時代の河野洋平官房長官が旧日本軍の強制連行を事実上認めた河野談話の見直しに関し「有識者の知恵も借りながら考える」と述べた。安倍氏はこれまで河野談話を見直すべきだとして、自身が首相になれば新たな談話を発表する意向を示していた。
日本記者クラブ主催の党首討論会で語った。安倍氏は討論会で「人さらいのように連れていった事実があったかどうか証明されていないことは閣議決定している。それが内外に伝わっていない」と指摘した。
※河野談話
「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」
平成5年8月4日
いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。