福井県敦賀原発の原子炉建屋直下を通る「D-1破砕帯」が活断層かどうかを判断するため、原子力規制委員会の有識者が1~2日現地調査を行いました。
その結果、D-1破砕帯が浦底断層=活断層と連動して動く可能性を否定できず、さらにD-1破砕帯の上にある地層で新たな変形も見つかりました。
活断層かどうかの判定は10日に開かれる評価会議で行われますが、活断層と判断されて廃炉に至る可能性もかなりあるようです。
以下に毎日新聞の記事を2本紹介します。
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敦賀原発:破砕帯調査 活断層との連動、否定できず
毎日新聞 2012年12月02日00時14分
日本原子力発電敦賀原発(福井県)の原子炉建屋直下を通る断層(破砕帯)が活断層かを判断するため、原子力規制委員会の有識者が1日、現地調査を始めた。敦賀原発の敷地内には全国で唯一、「浦底(うらそこ)断層」と呼ばれる活断層があり、破砕帯が連動して動く可能性を否定できなかった。このため、2日も継続して調査し、10日に活断層かどうかを議論する評価会議を開く。国は活断層の真上に原子炉建屋などの重要施設を建てることを認めておらず、活断層と判断されれば、廃炉を迫られる可能性が高まる。
◇複数の有識者が指摘
「浦底断層は大変、活動的な断層。それが原発の敷地内にあること自体がかなり特殊」。調査団を率いる規制委の島崎邦彦委員長代理は1日の調査後、報道陣に語り、敷地内の活断層が動いて発生する地震が原発に与える危険性があることを認めた。
08年に原電が活断層と認めた浦底断層は、1、2号機の東約200メートルの敷地内を走る。そこから枝分かれする複数の破砕帯の一部が、1、2号機の原子炉建屋の直下を通っており、浦底断層と連動して動く危険性が指摘されている。
この日、島崎氏と外部専門家4人による調査団はまず、原電が浦底断層を活断層と認めるきっかけになった調査溝(図中(1))を視察。その後、傍らに原電が掘った溝(図中(2))に入り、2号機の原子炉建屋直下を通る「D−1破砕帯」を直接見た。このほか、「D−14破砕帯」(図中(3))と「H−3a破砕帯」(図中(4))の溝などで状態をチェックした。
原電は、D−1破砕帯について「上を覆う地層を変形させていない」と主張し、動いた痕跡がないとの立場をとり続けている。これに対し、宮内崇裕・千葉大教授は「変形の可能性があり、2日に再確認したい」と否定的な見解を示し、堤浩之・京都大准教授も「変位(変形)がありそうな構造が見られた。2日に詳しく見たい」と動いた痕跡がある可能性を示唆した。島崎氏は「非常に昔だとは思うが、明らかに活発な活動をしていた。浦底断層が破砕帯と連動するかはこれから検討したい」としている。
ただし、動いた痕跡があったとしても、活断層と認定するには動いた年代の特定が必要になる。このため、調査団は2日の調査で、D−1破砕帯に注目し、精査する考えだ。
国が原発の安全審査で用いる耐震設計審査指針では、調査のしやすさから「12万〜13万年前以降」に動いた断層を今後も動く可能性が高いとして活断層と定義してきた。しかし、規制委は政府の地震調査委員会の見解を参考に「数十万年前以降」に定義を拡大する方針で、島崎氏は「現行の指針にこだわらない」としている。
◇原電のずさん調査露呈
規制委の調査は、事業者の調査の甘さと、それを長年にわたって見過ごしてきた国の安全審査の限界を浮き彫りにした。
調査団は1日、活断層である「浦底断層」の傍らに原電が掘った溝で、2号機直下を通る「D−1破砕帯」を見たが、すぐそばで、想定していなかった別の破砕帯が見つかった。原電は「これまで長さは不明で、最近動いた痕跡はなく、活断層ではない」と主張。また、2号機の西を通る「D−14破砕帯」も、原電は今回の現地調査に合わせ、「新しい掘削データが得られた」として従来より長さを延長した。原電がこれまで破砕帯の実態を正確につかみ切れていなかったことを露呈した格好だ。
規制委が11月2日に現地調査した関西電力大飯原発(福井県)でも、同様の状況があった。焦点の破砕帯が想定の場所で見つからず、違う位置にある可能性が高まり、規制委は、関電に追加調査を指示した。
一方、敦賀原発での浦底断層について、1号機の設置許可時(66年)に存在は知られていなかったが、敷地内に破砕帯があることは分かっていた。原電は「極めて古い時代にできた小規模な死断層」と活動性を否定し、国も許可した。だがその後、1、2号機の東約200メートルの敷地内に浦底断層の存在が判明。敷地内の1、2号機周辺に約160本ある破砕帯のうち、原子炉建屋直下にある破砕帯が浦底断層と連動して動き、地面がずれる危険性が浮上した。
80年代に入ると、複数の専門家が活断層の可能性を指摘するようになり、91年に出版された国内の活断層を網羅した学術書「新編日本の活断層」にも記載された。それでも原電は否定し続け、3、4号機の増設申請時(04年)にも、地層中の火山灰の年代などから「活断層ではない」と主張した。
旧経済産業省原子力安全・保安院は05年に追加調査を指示。専門家の指摘もあり、溝(トレンチ)を掘った結果、浦底断層が4000年前以降に動いた痕跡が確認され、原電は08年3月、ようやく活断層と認めた。
調査団の鈴木教授は「事業者は調査結果について、無理な解釈を繰り返してきた。電力会社は自ら進んで不利になる証拠を出さない。規制委が主導的に調査に関わるべきだ」と訴える。【岡田英、畠山哲郎、柳楽未来】
敦賀原発:2号機直下 地層で新たな変形見つかる
毎日新聞 2012年12月02日 21時39分
日本原子力発電敦賀原発(福井県)の原子炉建屋直下を通る断層(破砕帯)が活断層かどうかを調べていた原子力規制委員会の調査団は2日、2日間の現地調査を終えた。島崎邦彦委員長代理は調査終了後、2号機直下を走る「D−1破砕帯」の上にある地層で新たな変形が見つかったことを明らかにした。D−1破砕帯は敷地内の活断層「浦底(うらそこ)断層」とつながり、連動する可能性が残された。
結果は10日に開く評価会議で議論する。活断層とみなされれば、廃炉に追い込まれる可能性が高い。
同原発は唯一、敷地内に活断層「浦底断層」が走り、そこから枝分かれする破砕帯の一部が原子炉建屋の直下を通っている。調査団は初日に続いてD−1破砕帯に注目。浦底断層と同時に動く可能性があるかどうかを、合流地点付近を調べたところ、一部の地層に変形が見つかった。
この変形がD−1破砕帯が動いてできた痕跡かどうかについては、島崎氏は「直接の証拠はないが、浦底断層を動かしているのと似た力がかかっているのは共通理解だ」と説明。動いた時期について、活断層とみなす目安に掲げた「約40万年前以降」の可能性が高いとの見解を示した。【岡田英】