福島県・市での児童の甲状腺異常が明らかになり、チェルノブイリと比べてもより深刻な状況になることが深く懸念される中で15日、埼玉県浦和市で放射線医学者の崎山比早子氏※による緊急の講演会が行われました。
※福島第1原発事故 国会事故調査委員会委員。元放射線医学総合研究所主任研究官。医学博士。
埼玉新聞によると講演の内容は △福島原発の事故は人災である △放射線1本でDNAは切断され、DNAの突然変異は子孫に伝えられる △そうした危険を顧みずに放射線許容量を上げているのは、そうしないと予算が高騰するからだ △一方東電が心配しているのは、国内の放射能汚染ではなくて原発が停止されること △福島原発事故で全く機能しなかった対被曝の緊急医療体制は今も整っていない中で再稼働が行われている △それを主導している政治家はもう選ばないことにするしかない・・・と要約されています。
講演では、被曝から発ガンに至る経緯、放射線は心筋梗塞や血管障害も引き起こすこと、チェルノブイリにおける放射線の被害などの専門の医学分野に加えて、原発自体がもつ問題、今回の事故調査のなかで判明した東電の体質の問題点なども、詳細に語られました。
日本では政治的な事情から、事故後一貫して放射線の影響を出来るだけ軽視しようとする風潮が目立ちますが、そうしたことに惑わされることなく、先ずは放射線の恐ろしさを正しく認識することが基本です。
講演は約90分間にわたるもので、その詳細は下記の動画で聴くことが出来ます。
以下に埼玉新聞の記事を紹介します。
なお文中の青字の見出しは事務局で付けました。
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国会原発事故調査委員・崎山さん講演 「放射線を過小評価」
埼玉新聞2012年9月16日
昨年3月の東日本大震災に伴って発生した東京電力福島第1原発事故の国会事故調査委員会委員を務めた、医学博士で元放射線医学総合研究所主任研究官の崎山比早子氏を講師に招いた緊急講演会が15日、さいたま市浦和区の浦和コムナーレで行われた。第1部の講演には約150人が来場し、崎山氏が「国会事故調報告が明らかにしたこと これからなすべきこと」をテーマに講演。第2部の昼食懇談会には約50人が参加し、市民らが崎山氏にさまざまな質問や疑問をぶつけるとともに、活発に意見交換した。
◇福島原発の事故は人災
国会原発事故調査委員会は昨年秋、事故原因を究明し、被害軽減などの施策を提言することを目的に、各界の識者らを委員に任命して設置。今年7月に「事故は人災だった」として、東京電力や政府の対応の不備を厳しく指摘する報告書を提出している。
◇放射線1本でDNAは切断
講演で崎山氏は、がん研究の専門家として、被ばくによる危険性を解説した。「体内のDNAは、放射線が1本通っただけでも切断される。その損傷を修復するときにミスが起きると、がんになっていく。しかも、そのようなDNAの突然変異は、子孫に受け継がれる」と警告。「だが、放射線のリスクは過少評価されている」と訴えた。
◇放射線許容量を上げないと予算が高騰
低線量被ばくの危険が正当に評価されなくなった理由について、崎山氏は「許容される放射線量が厳しくなると、対応する政府などの予算が増えてしまうからだろう」と指摘。その上で、昨年秋に文部科学省が発行した放射線副読本に触れ、「原発事故のことや、どれだけの地域が汚染されたかは、ほとんど書かれていない。これでは、子どもたちが自分で考える力がつくはずがない」と批判した。
◇東電の心配ごとは原発の停止
事故調は東京電力の内部資料も提出させて、原因究明などに取り組んだ。崎山氏は「東京電力にとってのリスクとは、放射能汚染ではなく、事故で原子炉が長期間停止することだと考えていたのが明らかになった」と、企業体質を糾弾。「事故当時、ほとんど機能しなかった緊急被ばくの医療体制は現在も変わっていない。それにもかかわらず、原発が再稼働されている」と強い危機感を示した。
◇原発稼働を主張する政治家は選ばない
懇談会では、崎山氏と市民らが約2時間にわたって活発に議論した。県内の住民だけではなく、福島県から東京都内に避難している被災者らも参加。崎山氏は「事故調の報告書を生かすのは市民。原発再開の決断をした政治家を選挙で落選させることが、彼らの最も恐れていることではないか」と、主体的に行動するよう呼び掛けていた。