2012年9月19日水曜日

沖縄への基地集中は人権侵害 オスプレイ安全宣言は「理解不能」


 琉球弧の先住民族会のメンバーが、ジュネーブで開かれる国連人権理事会(17日~28日)で、米軍基地が沖縄にもたらしている人権侵害の実情を訴えることが分かりました。オスプレイ配備と辺野古などの新基地建設問題も報告されます。 

 また19日、日米両政府がオスプレイの「安全宣言」を行い、岩国基地での試験飛行を週内にも開始し、10月から沖縄県の普天間飛行場で本格運用しようとしていることに対して、沖縄県知事は「理解不能だ」とし、名護市長は、オスプレイの安全確保策について市議会で、「これまで米軍機の運用について事前に合意しても、守られたためしがない」と答弁しました。 

 さらに琉球新報は社説で、海兵隊の環境審査書には上向き飛行は「基地内」どころか飛行場から約1・8キロ離れた場所から実施することや、転換モードの飛行も飛行場の約5キロ先から始めることが明記されており、夜間飛行も常態化している。それなりの技術的根拠で書かれてある環境審査書の内容が、短期間の日米協議で簡単に変更できるとは思えないと、やはり安全確保策の実効性に強い疑問を呈しています。 

 以下に関連の記事を紹介します。
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基地集中は人権侵害 国連理事会で訴えへ
琉球新報 2012919 

 琉球弧の先住民族会(AIPR、宮里護佐丸代表)で活動する我如古朋美さん(25)と上間怜奈さん(23)は17日から28日までスイスのジュネーブで開かれる国連人権理事会に参加する。書面で声明を提出し、米軍基地がもたらす事件事故により沖縄が受け続ける人権侵害の実情を訴える。オスプレイ配備に反対する「琉球民族」の自己決定権を尊重するよう日本政府に求め「これだけ多くの米軍基地が集中し続ける状況こそおかしい」というメッセージを国際社会に発信する。

同理事会には各国のNGOや政府関係者が参加。2人は戦後の米軍の凶悪犯罪や航空機墜落事故のほか、オスプレイ配備、辺野古や高江への新基地建設問題を報告する。2人とも理事会への出席は初めてだ。
恵泉女学園大学大学院(東京)で平和学を学ぶ我如古さんは「基地があること自体が差別であり、歴史的には言語や文化も奪われている。これまで多くの先輩たちが研究してきたことを、次の世代に伝えていくのが大事だ」と語った。
上間さんは「多くの事故が起きているオスプレイの配備は、沖縄への新たな人権侵害だと提起したい。」と話し、各国参加者との情報共有に期待を込める。 (石井恭子) 

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オスプレイ、岩国で試験飛行へ 日米合意、「安全宣言」発表
 東京新聞 2012919 

 日米両政府は19日、米軍新型輸送機MV22オスプレイの日本国内運用に関し、外務、防衛当局者による日米合同委員会を外務省で開催、低空飛行訓練時の高度制限などを柱とする安全確保策で正式合意した。森本敏防衛相と玄葉光一郎外相が官邸でそろって記者会見し、政府として「危険と考える根拠は見いだし得ない」とする「安全宣言」を発表した。

 これを受け米軍は、オスプレイを一時駐機している岩国基地(山口県岩国市)での試験飛行を週内にも開始し、10月から沖縄県の普天間飛行場で本格運用したい考え。 (共同)
 
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オスプレイ安全宣言「理解不能」 沖縄県知事
東京新聞 2012919  

 沖縄県の仲井真弘多知事は19日、日米両政府が米軍の新型輸送機MV22オスプレイについて同日発表した「安全宣言」について「われわれは安全だと思ってない。しかもあんな(人口)密集地帯に持って来て。ちょっと理解不能だ」と述べ、県として納得はしていないとの姿勢を強調した。県庁で共同通信の取材に答えた。

 仲井真知事は、MV22が原発上空の飛行を回避するなどとしていることについて「人間の上を飛ばないでほしい」と、人口密集地に位置する米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への配備自体に強い疑問を提示した。  (共同) 

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名護市長「米軍は事前合意守らぬ」
沖縄タイムス 2012919 

 【名護】日米合同委員会で協議を進めるオスプレイの安全確保策について、名護市の稲嶺進市長は18日、市議会(比嘉祐一議長)の一般質問で「運用面で安全性を確保すると言うが、米軍の運用に(日本側は)口を出せないというのがこれまでの事実。事前に合意しても実際に飛ぶと、まったく忘れられたかのように守られたためしがない」と実効性に疑問を示した。仲村善幸議員(ニライクラブ)に答えた。
 一方、アルフレッド・マグルビー在沖米総領事が就任会見で名護市辺野古に普天間飛行場の代替施設があれば「密集地上空を飛ばなくてもいい」と述べたことには「人口が少なければ事故が起きても被害が少ないという見方なのか。命の重さに差をつけていると言わざるを得ない」と不快感を示した。 

 また、1960~70年代のキャンプ・シュワブ内での「枯れ葉剤」使用をめぐり、市は7日付で、事実関係、使用場所、保管方法、量、処理方法、身体への影響などの調査を、外務省沖縄事務所に要請したことを明らかにした。 

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【社説】 安全確保策を了承 命差し出す配備あり得ぬ
琉球新報 2012919 

 沖縄の民意を踏みにじってでも米国の言いなりのまま物事を進めるこの国の為政者の姿に失望感を禁じ得ない。県民が配備反対を訴えている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、野田佳彦首相が国内運用に向けた安全確保策を了承した。国内での飛行にお墨付きを与えたことになる。口先だけの「安全確保」で配備を強行することは理不尽以外の何物でもない。

 安全確保策で挙げている事項をみると、回転翼を上向きにする飛行は基地上空に限定し、飛行が不安定になる転換モードの飛行時間はできる限り短くし、住宅密集地上空の飛行は極力避けると記している。実効性があるとは到底思えない。深夜・早朝飛行は必要最小限にすると書かれた騒音対策もしかりだ。

  海兵隊が普天間飛行場配備に向けた環境審査書には上向き飛行は「基地内」どころか飛行場から約1・8キロ離れた場所から実施することが明記されている。転換モードの飛行も飛行場の約5キロ先から始めることが記されており「時間はできる限り短く」には程遠い。

  航空機の特性を踏まえて念入りに想定して実現可能な飛行形態として示したであろう審査書の記述を短期間の日米協議の議論でこんなにも簡単に変更できるのだろうか。甚だ疑問で、県民を説得するためだけの詭弁(きべん)としか思えない。

  また「深夜・早朝飛行は最小限にする」とあるが、県民からすれば噴飯ものだ。午後10時から翌日午前6時までの飛行を制限するとの日米合意の騒音規制措置があるにもかかわらず、現在でも夜間飛行は常態化しているからだ。

  さらに環境審査書ではオスプレイの夜間早朝飛行を年間280回実施すると表明している。規制措置をこれまでも形骸化させ、さらに審査書では無視すると公言した組織が飛行制限に取り組むと言われて、誰が信用できるだろう。

  「米国は沖縄の負担軽減の義務があり、県民の不安に耳を傾けるべきだ。それは配備先を(沖縄以外の)別の場所にすることから始まる」。首相から聞きたかった言葉だが、残念ながら県民に心を寄せたのはニューヨーク・タイムズの社説だ。首相は絵に描いた餅のような安全確保策で沖縄に配備できると思っているのなら、大間違いだ。県民は決して配備を認めないし、命も差し出さない。