世界に顔向けもできないような原発の大惨事を引き起こしたことを反省し、今後は原子力ムラ(むら)をチェック出来るようにしようということから、原子力規制員会の人事を国会同意事項にした筈でした。それが規制委員会設置法の例外規定を利用して、首相権限でメンバーを任命した上に、次の国会での事後承認も省略することを検討しているということです。
これでは5年の任期があって、その間は裁判官と同様に、どこからの指図も受けずに専権が発揮できる規制委員が、国会を素通りしたままで決められることになり、新たに原子力規制委員会を発足させる意味がなくなります。
もともと政府が提案した規制委員のメンバーは、定員5名中3人までが原子力ムラの出身であったために、国会の内外で批判が沸き起こり、国会への提案が見合わされていたのでした。
支持率が止めどもなく落ち込んでいる政府が、この時期にそうしたことをやるのは許せません。
以下に東京新聞の記事を紹介します。
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原発監視はや「骨抜き」 事後同意も不要論 規制委人事国会素通り
東京新聞 2012年9月6日 07時08分
政府・民主党は五日、原子力規制を一元的に担う新組織「原子力規制員会」の国会同意人事に関し、今国会では採決せず、野田佳彦首相の権限で任命する方針を固めた。次の国会での事後同意を求めないことも検討している。規制委は政府からの独立性が高いにもかかわらず、国会のチェックを受けようとしない姿勢は政権として無責任と言われても仕方ない。(城島建治)
同意人事で採決を経ず、首相が任命権を行使するのは極めて異例だ。政府側は原子力規制委員会設置法付則二条を根拠としている。「国会の閉会または衆院解散のために両議院の同意を得られない時は、首相が任命できる」との例外規定があるためで、二十六日の委員会設置期限を前に、十一日の閣議で決定する方針だ。
政府は七月下旬に委員長に田中俊一・前原子力委員会委員長代理、委員に中村佳代子・日本アイソトープ協会主査ら四人を起用する人事案を提示した。だが、民主党内などから、原発建設を推進してきた「原子力ムラ」に近いとの反対論が噴出。執行部としては新たな「造反・離党議員」を出したくないとして、採決日程がずれ込んだ経緯がある。
首相問責決議の可決を受け、審議拒否を続ける一方、同意人事の採決には応じるとしていた自民、公明両党は先送りに反発。自民党の岸田文雄国対委員長は「今国会でやるべきだ。それをしないのは政府・与党の怠慢だ」と述べた。民主党の生方幸夫衆院環境委員長も本紙の取材に「首相の任命では国会のチェック機能に疑問符が付く」と批判した。
一方、今回の人事をめぐって政府・民主党は、付則に緊急事態の場合は事後同意が必要ないとの趣旨が盛り込まれていることを理由に、次の国会でも同意を求めないことも検討している。東京電力福島第一原発事故後は緊急事態が継続しているとの解釈からだが、国会軽視も甚だしい対応だ。
内閣府原子力委員会新大綱策定会議の委員を務める金子勝・慶応大教授は同意人事に関し「原子力ムラを第三者の立場からチェックする機能だ。政府はそれを骨抜きにしようとしている。国民から信用されない」と指摘した。